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釜炒り茶ってどんなお茶?香り豊かで希少な釜炒り茶の魅力に迫る

2020年11月01日

by 煎茶堂東京編集部

茶葉を釜で炒って作る釜炒り茶は、通常の煎茶にはない独特の香りや風味を楽しめるお茶です。全国茶生産団体連合会によると、令和元年の日本茶生産に占める釜炒り茶の割合はわずか0.02%程度。釜炒り茶は、滅多にお目にかかれない希少なお茶なのです。

今回は、そんな釜炒り茶の魅力や歴史について詳しく解説していきます。

香ばしい香りが魅力の釜炒り茶

釜炒り茶は、煎茶や玉露などと同じ緑茶の一種。そもそも緑茶とは、生の茶葉をすぐに加熱することによって、茶葉の発酵(酸化)を止めた「不発酵茶」のことを指します。

煎茶や玉露をはじめとした大半の日本茶は、高温で蒸すことによって発酵を止める「蒸し製緑茶」。一方、釜で炒ることによって発酵を止めるお茶が釜炒り茶なのです。

茶葉を揉んで針状に仕上げる煎茶に対し、釜炒り茶は釜でかく拌しながら乾燥させるため、勾玉状の茶葉になります。その独特な茶葉の形状から、釜炒り製玉緑茶という名称でも知られます。



釜炒り茶は炒るという工程が入ることで、蒸し製とは一風異なる独特の香りや風味が生まれるのです。中でも特徴的なのが、釜香(かまか)と呼ばれる香ばしい香り。

釜香はピラジン類と呼ばれる香り成分などによってもたらされると言われていますが、詳しいことはまだ解明されていません。ピラジン類はほうじ茶にも含まれることが知られており、香りによるリラックス効果が期待できます。

少し赤みがかったお茶は濁りが少なく透き通っており、味わいも苦味・渋味の少ないさっぱりとした印象です。

中国から九州へ 釜炒り茶の歴史

日本では希少な釜炒り茶ですが、実はお隣のお茶大国・中国では釜炒りが一般的。むしろ、日本茶のような蒸し製の緑茶は少数派です。

釜炒り茶の起源は、中国・明の時代にさかのぼると言われています。従来の粗放なお茶に比べ、はるかに香り高い釜炒り茶はたちまち中国で広まっていきました。中国で盛んに作られるようになった釜炒り茶は戦国時代末期ごろ、日本に伝わったようです。

一説では、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に持ち込まれたと言われており、出兵の最前線であった九州に伝わりました。このため、今でも釜炒り茶は九州での生産がほとんど。佐賀県・長崎県で生産される嬉野茶や、熊本県・宮崎県で生産される青柳茶が広く知られています。

釜炒り茶が伝来するまで、日本のお茶と言えば抹茶。一般家庭では天日干しした茶葉を煮出して淹れる自家製番茶が主流で、決して品質が高いものではありませんでした。そんな中、中国から伝わった高品質な釜炒り茶は唐茶と呼ばれ、日本でも広く普及していったのです。

しかし、江戸時代中期に京都宇治の永谷宗円(ながたにそうえん)によって、現在の煎茶につながる製法が開発されます。製造に手間のかかる釜炒り茶は徐々に生産量が減っていき、明治に入ると日本茶の中心は蒸し製の煎茶へと変わっていきました。

煎茶とは全然違う釜炒り茶の製法

今では九州でわずかに生産されるのみとなった釜炒り茶ですが、煎茶とは大きく異なる特徴的な製法によって作られます。釜炒り茶がどのように作られるのか順番に見ていきましょう。なお、これはあくまでも製法の一例であり、地域や農家ごとに少しずつ異なる場合があります。

1、炒り葉

釜炒り茶最大の特徴である、生の茶葉を釜で炒る工程。300℃を超える高温で炒って、茶葉の発酵を止めます。

2、揉捻(じゅうねん)

茶葉の水分を均等にするための工程。煎茶にも同様の工程がありますが、釜炒り茶では少し長めに行うのが一般的です。

3、水乾(すいかん)

直火や熱風に当てることで茶葉を乾燥させるという、釜炒り茶特有の工程です。

4、締め炒り

煎茶でいう精揉(茶葉を乾燥させながら針状に整える工程)に当たり、乾燥させながら勾玉状で締まりのある茶葉に整えていきます。

5、乾燥

丸まった形をしている釜炒り茶の茶葉は煎茶に比べて乾燥しにくいため、長めに乾燥させるのが特徴です。


高温で生葉を炒る釜炒り茶は、炒る温度や時間によって仕上がりが大きく左右されます。熟練の技が必要とされ、手間をかけて丁寧に作られるお茶なのです。ここまで読んで釜炒り茶が気になったという方は、九州の茶園で作られたこちらの茶葉がおすすめ。

釜炒り茶を淹れる際のポイント

煎茶とは異なる魅力を持つ釜炒り茶ですが、美味しく淹れるにはどのような点に注意すればいいのでしょうか。

釜炒り茶は煎茶のような茶葉を揉む工程がないため、茶葉の組織があまり壊れておらず、成分が溶け出しにくいお茶です。加えて、長所である釜香を存分に楽しめるという点からも、煎茶より少し高めの温度で淹れるのがいいとされます。

ただ実際には、煎茶に準じた淹れ方でも十分に楽しめますし、成分が溶け出しにくい分、煎を重ねてもしっかりと風味を感じられるのがポイント。まずは、煎茶堂東京がおすすめする基本レシピで淹れてみるといいでしょう。

飲めば虜になるかもしれない釜炒り茶

中国から伝わり、古くは日本茶の中心的存在として親しまれた釜炒り茶。澄んでいて美しい水色は、多くの文人を虜にしたと言います。

今では九州を中心としてわずかに生産されるのみですが、煎茶とは一味違う魅力を持ったお茶です。香ばしい釜香とすっきりした味わいに、一度飲むと皆さんも虜になってしまうかもしれませんよ。

普段飲みのラインナップとしても、ちょっとした変化球としても、釜炒り茶を日本茶ライフに取り入れてみてはいかがでしょうか。

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