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奈良県の土地が産んだ幻の品種。まるで玉露『043 やまとみどり』【2024年9月試飲茶会】
2024年09月02日
by 小野寺友麻
東京茶寮・バリスタ 埼玉生まれ。大学では日本語教育を学び、日本語の先生をしていたことも。日本をもっと知りたい、と東京茶寮へ。カレーと紅茶がマイブームです。
煎茶堂東京で取り扱っているシングルオリジン煎茶は60種類以上(2024年9月時点)。その中でも、通年販売している茶葉と、期間を限定して販売している茶葉があります。
今回は、2024年9月から販売を開始するシングルオリジン煎茶をご紹介!
煎茶堂東京 銀座店ティーコンシェルジュ・四本と、東京茶寮バリスタ・小野寺が試飲してお茶会を行った様子を写真と一緒にお伝えします。
「たくさん種類があるけどどんな味なの?」「どう違うの?」「私が好きなお茶はどういうもの?」など、お茶を選ぶときの参考にご覧ください。
043 やまとみどり(奈良県産)
販売時期 | 9月〜10月 |
特徴 | 奈良の山々が育んだ力強い香りとポリフェノール感。舌の奥へ広がる旨みと香気が堂々たる大和茶。 |
小野寺:
「おはようございます。あっという間に9月になりましたね。今月は3種類のお茶が登場します」
四本:
「今月のお茶は静岡、鹿児島、奈良と全て産地が異なります。味わいの特徴もバラバラなので、飲み比べも楽しめますよ!」
奈良県で作られた唯一の品種。天然玉露と称される「043 やまとみどり」
小野寺:
「こちらのお茶は大和茶、奈良県産の『043 やまとみどり』です。今年も既に取り扱いがありましたが、今月は今年度のお茶に切り替わっての登場です」
四本:
「旨みというイメージと、TOKYO TEA JOURNALの過去号で椎茸特集をされたときのお茶なので椎茸のイメージもあるお茶です。今までも様々な旨みのお茶を取り扱ってきましたが、このお茶はその中でも個性があります」
一煎目の味わいや特徴
小野寺:
「茶葉も見てください…緑が濃いです。このお茶も天然玉露とも呼ばれる品種のひとつで、見た目は正に玉露のようです」
四本:
「乾燥の茶葉はほのかに甘い香りです。香りの中に乾物屋さんの香りを感じます。乾燥の椎茸や昆布、かんぴょうが吊るされているような昔ながらのお店の香りがします」
小野寺:
「幻の品種とも呼ばれる『やまとみどり』は奈良県で育成された唯一の品種だそうです。1953年に登録されていますが、日本で一番作られている『やぶきた』もこの年の登録でした。70年以上前から作られているお茶です」
四本:
「極晩生で収穫の時期が遅く生産性も低いため、県内でも生産があまりされていない品種だそうです。とはいえ、この大和茶の産地は4月に入っても霜が降りる冷涼な地域のため、寒さを超えてから収穫できるという点で『やまとみどり』はここの気候に適している品種です」
小野寺:
「新茶はいかに早く摘めるかで高値となるかが決まる世界ですからね…。そもそもこのお茶に出会う機会、シングルオリジンで飲める機会は少ないかもしれません。では淹れていきましょう。基本のレシピ、茶葉4g、70℃のお湯を120㎖注いで1分20秒待ちます」
四本:
「お湯を注ぐと旨みというか少し塩っ気を含んだ香りがします。改めて茶葉が濃緑です。先月は2種類とも鹿児島県産でしたが、また色んな産地が並ぶと面白いですね」
小野寺:
「茶葉が本当にきれいです。開いた茶葉は旨みの香りと爽やかさも感じるのでバランスが良いです。蒸したての葉野菜のような香りがします。いただきます」
四本:
「甘い…飲みやすいですね。旨みの香りがしましたが、味わいは香りで感じるほど強くありません。最初こそあっさりとしていているかと思ったのですが、飲む程に味わいが重なっていきます」
小野寺:
「色んな味わいがしてきて面白いです。口に含む瞬間は甘み、そして段々旨みをはじめ味わいが蓄積されていきます。味わいも香りも口の中や鼻腔に充満していきます。香りの系統は異なりますが『062 ごこう』とも雰囲気が似ています」
四本:
「前の年度とも変わったように感じます。味わいの★は同じですが、より甘みが際立って口当たりがサラリとした印象です」
二煎目の味わいや特徴
小野寺:
「二煎目は80℃で10秒ほど。浅蒸しなので水色は澄んでいますが緑がきれいですね。一煎目の旨みの余韻がまだ残っています。二煎目もいただきます」
四本:
「また違いますね。二煎目の方が全体的に重たい印象です。香りもより強くなったと思います。二煎目は旨みが前面に出てはこないですが、旨みが口の中、舌の上に溜まっていくような感覚です」
小野寺:
「一煎目もそうでしたが、二煎目も色んな味わいがします。でも感じ方が違うように思います。一煎目は甘・苦・旨と順番に感じていた気がしますが、二煎目はひとつのまとまった味わいの中に甘・苦・旨があるような感覚です」
四本:
「二煎目の方がその一口の味わいが強くなりましたね。二煎目は特に青さと旨みと苦みを感じます。一煎目のひと口目で感じた甘みが新鮮でした。味わいに重たさがありますが、とろみがある訳ではありません」
小野寺:
「二煎目は香りも味わいも余韻がだいぶ長いです。サラサラとしているのに濃度があるお茶です」
四本:
「改めて茶葉もきれい…よく開いています。見た目も黒々しいほどの緑で、香りにも玉露を感じる気がします」
どんなペアリングが合う?
小野寺:
「合わせたいものも考えたいですが、一旦お茶と向き合いたくなりますね。甘いものというよりかは食事などと合わせたいです。塩の焼き鳥や、燻りがっこなどのお漬物、おつまみ系などどうでしょうか」
四本:
「良いですね。燻製卵など珍味系も良いでしょう。あとは今の時期はまだ暑いですが、もう少し季節が進めばおでんの大根と合わせたいです。お出汁と合うと思いますよ」
小野寺:
「良いですね。みそ田楽も良いかなと思います。もちろんおでんのこんにゃくも良いですが、焼いた味噌を合わせたいです。味噌の焼きおにぎりも良いですね」
四本:
「ご飯とも合いそうですね。これは玄米茶にも期待です…!」
小野寺:
「茶葉の緑と玄米の茶色のコントラストが素敵です。あ〜良い香りがします」
四本:
「美味しいです。苦みはだいぶ落ち着きましたね。華やかさを感じるような青々しさと玄米の甘さも感じます」
小野寺:
「つい息が漏れてしまうようなお茶です。三煎を通してそれぞれ違う表情を見せてくれるお茶でしたね」
四本:
「このお茶は晩酌の代わりなど、夜にしっとりと飲みたくなるお茶です。朝に飲みたいお茶もありますが、このお茶は夜。一日の全てを終えてから飲みたいお茶です」
小野寺:
「9月なので、お月見をしながらみたらし団子と一緒にいただくのも良いですね。まだまだ暑いので宇治金時などかき氷とも良いですね」
「043 やまとみどり」の味わいノート
・一煎目、口に含む瞬間は甘み、段々旨みをはじめ味わいが蓄積されていく
・二煎目、全体的に重たい印象に。特に青さと旨みと苦みを感じる
・玄米茶、苦みはだいぶ落ち着く。華やかさを感じる青々しさと玄米の甘さも感じる
・焼き鳥やお漬物などのおつまみ系、おでんの大根、みそ田楽、味噌の焼きおにぎりとも合わせたい
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