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モクテル手帖〈 6時45分の棒ほうじと柿 〉page.4

2022年12月06日

by 煎茶堂東京編集部

“ドリンク作家”として活動するemmyさんが作り出す、ノンアルコールのカクテル=モクテル。それをひと口味わうと、お茶の新しい扉が開けるよう。今日も、そんな果物の甘美な魅力に酔いしれながらお茶と戯れる1日の時間を綴る。

6時45分の棒ほうじと柿

6時45分。
カーテンを開けると静かな部屋をしろい光が満たしていく。

やかんから立ち上る湯気を眺め、夜のうちに馴染ませておいた棒ほうじの茶葉と柿の果肉に、ゆっくり湯を注ぐ。黒みつとカルダモンペッパー、バルサミコビネガーを加え、すこし待ってから濾す。

止まっていた部屋の空気が朝の光でゆっくり溶けていくのを感じながら、昨日新しく買った柿の皮をしゃりしゃりとむく。

昨夜、新たに柿を入手し帰宅したのだが、帰宅後に少し前に購入してつい時間が経ちすっかりやわらかくなってしまった、もうひとつの柿と目が合ったのだった。そのまま食べても良かったが、棒ほうじと合わせてみることにした。

香ばしい棒ほうじ茶に柿と黒糖の甘さとコク、ほんのりとスパイシーさを感じながら、柿をつまみにしていた父を思い出す。

柿好きの父のために、梨の季節が終わるころから台所にはいつも晩酌用の柿が常備されていた。父は固く歯ごたえのある柿を漬物にしてぽりぽりと齧ったり、カラカラになった干し柿をちみちみと酒のアテにしていた。

熟れて甘くなった柿は冷凍庫へ仕舞われたり、我々子ども等のおやつになっていて、だからか子どもの頃はそんな父の様子を見て、私も柿を固いまま食べてみたいと思っていたような、ぼんやりとした記憶がある。

大人になった私は、一日が始まってだんだん動きはじめてきた部屋で、あの日父が食べていたような固い柿をこりこりと口のなかで転がしながら、とろり甘い柿の余韻を飲んでいる。

<棒ほうじと柿 モクテル材料>
「やぶきた」シングルオリジン棒ほうじ

黒みつ
カルダモンペッパー
バルサミコビネガー

使用したお茶

ドリンク作家 emmy

ノンアルコールを専門とするドリンク作家。 物語のあるオリジナルドリンク制作のほか、企画、監修などを行う。建物と餡子好き。Instagram:@emmyemi_
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