
モクテル手帖〈 20時00分の葉唐辛子とアールグレイティー 〉page.3
2022年11月10日

by 煎茶堂東京編集部
“ドリンク作家”として活動するemmyさんが作り出す、ノンアルコールのカクテル=モクテル。それをひと口味わうと、お茶の新しい扉が開けるよう。今日も、そんな果物の甘美な魅力に酔いしれながらお茶と戯れる1日の時間を綴る。
20時00分の「葉唐辛子」と「アールグレイティー」
20時00分。
秋の夜は澄んだ空とからりとした風が心地よい。夜が長くなるといつもと変わらないのに、なぜか起きている時間が長く感じてしまう。すこしだけ早く夕食をすませたあとは、なにか飲みごたえのあるものがほしくなる。
煎茶のさえみどりに、ベルガモットと蜜柑のピールがブレンドされた紅茶のようなブレンドティー。湯を注ぎ、あたたかな器を手で包む。とろっとした煎茶の深みと鼻の奥から耳のうしろまで引かれるような、蜜柑の皮の香りが抜けていく。
二煎目は急冷にし、モクテルにアレンジする。
小さな実やかわいらしい小花のついた葉唐辛子は季節の味わい。唐辛子と名前がついているとはいえ、イメージほどの辛さはなく、スーッとした清涼感と少しだけピリリとする辛さはどうもクセになる。
ぷちぷちと枝から外してわけていき、ざっと湯通ししたやわらかな葉っぱを3枚ほどとり、黒糖とすだちと一緒にカップの中ですり潰していく。きゅっとジューシーなすだちの果汁の香りについ頬が緩む。
濾してグラスに注ぎ、ホエイと冷えた「アールグレイティー」を加える。つんとした葉唐辛子の辛味の後に、ベルガモットと柑橘の香りが追いかけてくる。
舌に残るさえみどりとホエイのまろやかさを味わいながら、頭に思い浮かぶのは夜の禁断。じゅわーっと芳醇で大人なサバランと合わせたらさぞ美味しいだろう……一度そう考えはじめたら止まらない。結局はいつも欲に負けてしまうのだけど、今日こそは、と飲みながら悶々とスイーツへの欲求と戦う夜を過ごす。
<葉唐辛子とアールグレイティー モクテル材料>
「アールグレイティー」
葉唐辛子
黒糖
すだち
ホエイ
使用したお茶
ドリンク作家 emmy
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ノンアルコールを専門とするドリンク作家。 物語のあるオリジナルドリンク制作のほか、企画、監修などを行う。建物と餡子好き。Instagram:@emmyemi_ |