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麻生要一郎「12月は、クリスマスケーキ。」- TOKYO TEA JOURNAL 巻頭エッセイ

2023年12月20日

by 煎茶堂東京編集部

TOKYO TEA JORUNALの巻頭コラムを飾る、料理家・麻生要一郎さんのエッセイ。季節を感じながら、毎日のちょっとした幸せを見つけられるような麻生さんのエッセイをお楽しみください。月に一度更新予定。

12月は、クリスマスケーキ。

 クリスマスケーキには、夢がある。

 去年は大好きなホテルの、苺をふんだんに使ったシャルロット。ビスキュイ生地に苺のムースという組み合わせは、夢のような可愛さ。ケーキを取りに行くと、僕の車を見たドアマンが「麻生様、お待ちしておりました。」と声をかけてくれた。どうして分かったのだろうと思っていたら、前に取材で伺った際、僕の名前と車のナンバーを覚えてくれたそうだ。それを得意がる事なく、さらりと答えた。このホテルで働く人達は、皆そういう誠実さを自然に兼ね備えている。

 チョビは、クリームの部分を少しだけ舐めて、満足そうにしていた。これからは毎年お願いしようと、甘酸っぱいムースを食べながら心に決めていた。今年も予約したが、建物の老朽化の為、2月に一度休館するとの案内を頂いた。訪れる度、古い建物だから心配はしていたけれど、それが現実となってしまった。今年のケーキはよく味わって食べよう。名残惜しんで客室に泊まってみようと思っている。

 当たり前だと思っている日常は、いつまでも当たり前に続くわけではない。その事は、今までの人生経験からよく理解している。だから毎日を楽しく過ごし、会いたい人には会い、食べたいものは食べる、可能な限り。皆様にとって、心穏やかなクリスマスでありますように、そして良い新年をお迎え下さい。

麻生要一郎

あそう・よういちろう|1977年1月18日生まれ。茨城県水戸市出身。料理家・随筆家。 家庭的な味わいのお弁当が評判となり口コミで広がる。雑誌への料理・レシピ提供、食や暮らしについての随筆を行う。初の単行本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社刊)を刊行。2022年1月には第2弾『僕のいたわり飯』(光文社刊)も。

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Illustration:fancomi

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