
麻生要一郎「9月は、秋刀魚の夢。」- TOKYO TEA JOURNAL 巻頭エッセイ
2023年09月15日

by 煎茶堂東京編集部
TOKYO TEA JORUNALの巻頭コラムを飾る、料理家・麻生要一郎さんのエッセイ。季節を感じながら、毎日のちょっとした幸せを見つけられるような麻生さんのエッセイをお楽しみください。月に一度更新予定。
9月は、秋刀魚の夢。
食卓に並ぶ魚はたくさんあっても、新物の秋刀魚が、鮮魚売り場に並んだ時の嬉しさは格別じゃないかと思う。お刺身、炊き込みご飯、パスタ、煮付けにしても、万能に美味しいけれど、僕はシンプルに塩焼きで食べるのが一番好き。ほんのり苦味を感じる肝も、美味。大根おろしをたっぷりと添え、柑橘をキュッと絞り、炊き立ての新米と一緒に頂くと、暑い夏を乗り切ったご褒美のような味わいがして、秋の訪れを感じさせてくれる。
台所で魚をまな板にのせると、寝ていたはずのチョビが駆け寄って来るのは、毎度のこと。生まれてから、ほとんどカリカリとしたご飯しか食べていないというのに、本能に刻まれた何かが騒ぐのだろうか、獲物を狙う感覚なのか、ちょっと興奮気味に魚を見つめている。
塩焼きにした身の部分を小さくほぐして、よく冷ましてから小皿にのせると、チョビもちょっと秋の味覚を堪能する。その度に、今年も一緒に食べたねえ、来年も一緒に食べようねえ、と言いながら撫でては「ニャアッ」と元気な返事をもらっている。
今年の秋刀魚は豊漁なのだろうか? 側で寝息をたてているチョビも、きっと「秋刀魚の夢」を見ているに違いない。皆さんの、秋刀魚にまつわるお話もお聞かせ下さいね。
麻生要一郎
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あそう・よういちろう|1977年1月18日生まれ。茨城県水戸市出身。料理家・随筆家。 家庭的な味わいのお弁当が評判となり口コミで広がる。雑誌への料理・レシピ提供、食や暮らしについての随筆を行う。初の単行本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社刊)を刊行。2022年1月には第2弾『僕のいたわり飯』(光文社刊)も。 |
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Illustration:fancomi
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