この慌ただしくて忙しいこんな世の中で、お茶でちょっと一服心休めてもらえたらなと 「049 あさひ」畑広大さんインタビュー

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風の流れとともにふわっと茶の香りが漂う、京都府和束の鋭角な丘陵に広がる茶畑。

畑広大さんは明治より続く茶園の6代目で、現代の慌ただしく忙しい世の中でちょっとでも一服心休めてもらえたらという想いとともに、日々茶作りに励んでいます。その強いお茶への愛とこだわりについてお話してくださいました。

話し手:畑広大さん 聞き手:谷本幹人


―――畑さん、今日はよろしくお願いします。まずは自己紹介をお願いします。
畑広大です。茶作りは14年目ですね。明治くらいから始まって、僕で6代目です。もともとちっちゃい茶農家やったんですけど、僕のおじいちゃんがちょっと体弱かったんで、おやじが10代のときから継いで、コツコツと広げていって。

僕もすごいお茶好きやったんで自然に継ぐ形になりました。おやじも色々と考えてくれて畑残してくれたんで、僕もそれを続けてまたちょっと進化させていければなと。


丘陵に沿って波打つように広がるあさひの茶園。覆いからこぼれる光が美しく輝いていた。

―――和束、どういうお茶が作れるところですか。
もともと和束町ってすごい煎茶が有名やった産地で、なにより農家さんが熱心でみんなお茶が大好きなんです。あと、僕が感じるのは、やっぱり香りが1番かなと。ここの土地はもう香りが命で、香りで勝負する土地やからって言うのを聞いてあーと思ったことがあって。

新芽が出てきた頃に風がふわっと吹くと、新鮮なお茶の匂いが自然と立つんです。この香りが生きる土地なんかなと思いますね。あと、最近はお茶を飲んでもらうときに、すっと入ってくる香りの良さのあるお茶って減ってきたかなっていうのも感じるんで、余計に飲む前に香りを感じてほしい。

食べ物でもなんでも、最初に香り嗅いでおいしそうとか、そっから入るのがあるんで、それを突き詰めてこだわっていきたいっていうのはあるんですけどね。その先にたぶん味がついてくると思うんで、やっぱり惹きつける香りが出せればなって。それでもがいてます。

―――品種はどれくらいあるんですか?
うちはちょっと品種のマニアやから、品種は18種ぐらいあるかな。かなり多いと思う。ポピュラーなやぶきたでは一大産地である静岡や鹿児島には絶対敵わんし、もっと特色出していくためにもいろいろ作ってる。

おやじも前からいろんな品種に興味あって、僕も品種の本とか見てたらキャラクター図鑑とかと同じような感覚で品種をペラペラっと空き時間に見るのが好きだったんで、知らん間に品種に詳しくなってました。

うちの家自体も転換期やったんでいろんな品種植えてみようかなっていうことで、お茶仲間や先輩に品種の特徴とかを聞いて改植とかして。僕はお茶の学校に行ってなかったので、何かを始めるのでもとりあえずなんかやってみようかという感じでやってきてますね。


―――その中で、あさひはどういった品種になるんでしょうか。

もともと京都品種の一つです。玉露の品種で登録されてたのもあって、主に抹茶の原料になる碾茶として作るのが主力なんですけど、うちは今ちょうど玉露にも力を入れてます。

葉はちょっと丸くて薄い。地元の人は葉ぶすいって言います。触ってみるとけっこうぺらっと肉厚がないっていうか。そういう葉って碾茶に向いてて、最近はあまり玉露で揉む人少ないですよね。和束で持ってはる人でもだいたい碾茶にしはるんで。

―――碾茶より玉露にしようと思ったのは、またどうして。
まぁ、碾茶ってもともとは玉露品種やし。うちは5年ぐらい前から玉露も本腰入れ始めてて、はじめてあさひを玉露でやってみたときは市場の評価はそんなによくなかったんですけど、香りがいいような感じがしたのと、荒茶の出来がすごいきれいで。

女性っぽい、あさひって名前が合ってるなっていう感じが。例えば、ごこうとかやったら、もうゴリっとした感じやけど、こいつは違って。芽自体もすごい柔らかくて一葉、一葉が優しい感じもある。ただ旬がめっちゃ短いので旬を捉えるのが難しいってみんな言いますけど。

―――薄い葉っぱだと、揉むときに崩れやすくて難しいのでは?
僕の感覚では、すごい揉みやすいですけどね。崩れるからロスも多くて経済的にはよくないって言われるんですけど、それなりに感覚を掴んだら面白い品種やと思うし。

あさひはすごい柔らかくて、ぎゅっと握ったらつぶれちゃうマシュロみたいな…そんな芽なんで、蒸すのをちょっと気使って優しく蒸してあげなあかんですね。

―――茶園が山合いにあるので勾配がすごいですね。
この坂は四駆じゃないと上がらない。後ろ見たらすごいですよ。ちょっと車酔いしはる人もいます。免許取り立ての頃は、ここ登るの怖かったですね。そんで、なかなかすごい事故をしました。この坂を落ちた…というよりむしろ転がって、茶畑に助けられたぐらいです。あれがなかったら、終わったかな。

―――畑さんが使ってる肥料が、ちょっと変わっているとか。
あー、蚕のさなぎ。言うたら上クラスの肥料で、錦鯉とかの餌にもなるんですよ。値段もすごく高くって、20kgで5,000円とかします。無理でしょ、それ。茶畑1列ぐらいに5,000円まいてるようなもん。昔は蚕って一般的やったですけど。どんどん需要も減って、蚕の農家さんが減っていって。

だから最近はほとんどが外国産。国産は高すぎて無理です。でも、肥料を自家配合で作るときには蚕のさなぎ、必ず入れてますね。春肥も秋肥も両方。いろいろ肥料屋さんとかの勉強会してちょっとパターン変えたんです。自家配3回入れようかなと思って。

肥料を入れた回数とかが記録してある生産履歴っていうのがあるんですけど、とにかく回数が多い。手間暇と時間もかけてる。燃料代とかの影響で肥料が年々、高騰していっているんで大変ですけど。

―――山合いの茶園って苦労も多いと思いますが、なんでまたこういうところでお茶を。
やっぱり生まれ育った場所だし、遊び場も崖登ったり山登ったりする環境やから、遊び場が仕事場になったぐらいの感じでそんなに苦労は。それに、僕は特別これっていう趣味もないから、お茶が趣味みたいなもんで仕事と趣味が一緒になってるから。めちゃ面白いときもあれば、上手くいかへんくって悩むあれもあるけど。

でもなんか収穫の時期になるといつも車みたいにギアが入ってくる。バーッとこう。収穫終わった7〜8月くらいに、ここはこうしておいたらよかった、来年こうしようとか、反省があって。その後9〜11月はお茶の時期が近づいてくるから、こうしようって思ってたことがだんだんとガソリンになってきて。

―――そしてお茶を市場に出すわけですが、それを出して返ってくる喜びみたいなものも大きいですか?
僕はそれが一番大事かな。こんなん言うたらあれかもしれんけど、最近けっこう自営・自販する農家さんもいらはるんですけど、僕はやっぱ京都の伝統ある茶商さんとかいろんな茶葉屋さんらに評価されたいし、その評価がまたエネルギーになる。


―――飲んでもらってる人へ、メッセージなどありますか?

もう、僕はすごいいろんな人に飲んでもらいたいと思っていて、この慌ただしくて忙しいこんな世の中で、お茶でちょっと休憩、一服…すごい、“一服”っていう言葉が好きなんで、みなさんがその“一服”で心休めてもらえたらなって思っています。そして、そういう茶を常に作ろうとは思ってます。

 

 


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このインタビューは、「観て飲む」お茶の定期便 "TOKYO TEA JOURNAL"に掲載されたものです。毎月お茶にまつわるお話と、2種類の茶葉をセットでお届け中。

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