ここの葉っぱを活かすには高林式じゃないと絶対に駄目だ 「010 ふくみどり」間野善雄さんインタビュー

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都内から車で1時間15分ほどにあるお茶の名産地「狭山」。狭山茶の名前を聞いたことがある人は多いけれども、実際にどんなお茶なのか、形容できる人は少ないのかもしれません。

茶産地としては非常に寒い地域とされる狭山は、その葉肉の厚さによって蒸しが入りづらいため、それを克服する蒸し時間の長さで特徴づけられます。狭山の茶商、備前屋の清水敬一郎さんにも同行していただき、「010 ふくみどり」生産者の間野さんとの縁、そして逸話を伺ってきました。

話し手:間野善雄さん・清水敬一郎さん 聞き手:谷本幹人



―――狭山茶の特徴を教えてください。
間野さん:狭山茶は埼玉県が主に産地なんですけども、入間市が生産量も一番ということで主要な産地になっています。特徴としては、「味の狭山茶」とも言われ、味が濃い、香り高いお茶ですね。

―――お客さんの反応を見ていて、狭山茶は特に関東での知名度高いです。間野さんがお茶を始められたのは、お家が茶農家だったんですか?
間野さん:私の三代ぐらい前からはお茶屋だと、親父から聞いております。実際にいつからお茶屋になったのか定かではないんですけども。家業を継いだのは、私は長男なので自然な流れといいますか、小さい頃から見ていて、いつかやるんだなということで茶業に入りました。それから25年ぐらい経ちますかね。

―――ふくみどりの製造工程、特に萎凋(いちょう)について教えてください。
間野さん:生葉を摘んできて、「生葉置き場」にお茶葉を広げて萎凋させる作業に入ります。うちは萎凋香をメインでやっています。葉っぱを1時間か2時間に1回攪拌して、6時間か7時間かけて萎凋させてから蒸しの工程に入ります。

代々、うちの親父から萎凋させる作り方をやってきました。昔ながらの煎茶っていうんですかね。やはり萎凋香の香りあるお茶が好きです。

清水さん:義雄君の茶園は、非常に萎凋に向いている品質があるんだなと思うんですね。工場の、床がメッシュになってる地下送風機から風が送れるんですよ。その上に山にして茶葉を並べておくと冷却しながら萎凋が進められるんです。これがあるおかげでとてもいい香りがするんです。

熱がこもっちゃうと「蒸れ香」が発生してしまうので、攪拌するんですけど、ここに置いておけば自然攪拌よりもうまく萎凋が進むんですよ。これが良い香りの秘訣なんです。

 


間野さん:だけどこれだと、機械化した生葉コンテナじゃないから、一人だと工場が回せないんですよね。今の工場って自動で葉っぱが流れていくんですけど、うちは如何せん手作業でバサバサやりながら入れていくんで…一人が入れる人で、私が機械を見ています。

清水さん:それとこの機械。粗揉機なんかも「高林式」って言って。

間野さん:今もう高林式は入間市でも2、3件ぐらいですかね。葉っぱが入ると底がガコンガコン動くっていうか、少し逃げてくっていう。

 


清水さん:実は狭山茶のある意味欠点なんですけど、狭山茶って非常に蒸しづらいお茶なんですね。葉肉が厚いと言われます。例えば、静岡の本山だとだいたい蒸し時間が20秒以下っていう話なんですよ。狭山だと60秒かそれ以上蒸さないと蒸せないんです。それぐらい蒸しが入りづらい葉なんですね。

かえってそれが味の評価に繋がってるものなのかなとも思うんですが。一方で、蒸し時間が長いせいで葉が柔らかくなって葉切れしやすいんですよ。深蒸しでなくても蒸し時間が長くなるので、非常に細かい茶葉になってしまうんですよ。

この機械は、底の部分が圧力に応じてたわんで逃げてくれるおかげで、力をかけて揉みすぎないので葉切れしないんですよ!ですから私は茶殻を見ただけですぐ義雄君のものって分かるんです。そのぐらい葉がしっかりしています。

間野さん:この工場自体は昭和47年に建って中身のこういう機械は昭和61年あたりに入りました。この辺なんか、子供の頃から変わんないな。

清水さん:彼の先代がこの機械を入れ替えようとしていた時に、お茶の仲買いの方がここの葉っぱを活かすには高林式じゃないと絶対に駄目だと。だからもし別の機械をを入れるんだったらもう俺はあなたと取引しないよと言うんで、無理矢理高林式にさせたんですよ。

まだ私もその当時、茶業界に入ったばかりで話を聞いた記憶があるんですけど、私の父や仲買いの人がなんの話をしてるのか全く分からなかったですね。ところが自分が中心にやるようになってから義雄君の持って来る荒茶が明らかに違っていた。それが高林式の良さなんだなとつくづく思うんです。

―――そうだったんですね。清水さんと間野さんの家系は狭山茶を通じた代々の繋がりがあったんですね。
清水さん:ええ。この地域には歴史的に必ず仲買いさんという中間の目利きをする商人さんがいらっしゃいまして、その商人さんとうちの先代が知り合ったのがおそらく昭和40年代ぐらいかなと推察するんですけれども、その仲買いさんの中でも彼のところは一番いい物を作るという先代からの申し送りです。

 


実はここの根通(ねどおり)地区という埼玉県のいいお茶が出来るメッカのようなところなんですけども、その中でも一番いいと言われてる場所に畑をお持ちです。40年ぐらいのお付き合いはしてるんですけど、ここのお茶だけある意味別格扱いなんですよ。南側に向かって土地が下がっていて、北側に川がありますのでかまぼこ型の台地になっている。

しかもこの義雄君の畑があるところは更に西側も東側も下がってますので、ちょうどお饅頭のてっぺんみたいなところ。非常に水はけがいいという利点があります。

 


触ると、葉肉がとても分厚いのがわかる


間野さん:この土なんですけど、基本的にここの地下には関東ローム層があって、それは赤土なんですよ。何メートルか掘ると赤土。でも、この一帯はその上の黒土の層が非常に厚い場所です。畑が1枚、道を一本挟んで隣に行っただけでも土質は変わっちゃうんですよ。

本当に不思議なもんですね。だからまたお茶って面白いんですよ。

清水さん:葉の質と萎凋の組み合わせ、そしてこの高林式の粗揉機が活きているっていうことなんですね。古い機械なんですけどこれは義雄君だけでなくてうちにとっても非常に大切な機械なんです。

間野さん:よく清水さんもおっしゃるんですけど、やっぱり揉みすぎないから葉切れが無い。雑味が無くすっきりして飲みごこちが良いっていうことになりますね。できたお茶を飲んでみて香りと味がぴたっと合わさったときが、至福を感じるとき。まず蒸してる時に匂いが萎凋してるのとしてないのでは匂いが変わってくるので。

―――工場の匂いで分かるんですか?
間野さん:はい、匂いで分かります。テンション上がりますね。萎凋が上手くいったな、と。逆に上手くいってないとその蒸し器から出てくる匂いが何かちょっと違って…焦ります。笑

 


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このインタビューは、「観て飲む」お茶の定期便 "TOKYO TEA JOURNAL"に掲載されたものです。毎月お茶にまつわるお話と、2種類の茶葉をセットでお届け中。

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