
麻生要一郎「4月は、やっぱりお花見。」- TOKYO TEA JOURNAL 巻頭エッセイ
2023年04月17日

by 煎茶堂東京編集部
TOKYO TEA JORUNALの巻頭コラムを飾る、料理家・麻生要一郎さんのエッセイ。季節を感じながら、毎日のちょっとした幸せを見つけられるような麻生さんのエッセイをお楽しみください。月に一度更新予定。
4月は、やっぱりお花見。
桜の季節になると、重箱におにぎり、唐揚げ、きんぴら、卵焼きを詰めて、ちょっと厚手の敷物を用意する。さて飲み物は何にしようかなと考えながら、お花見の支度をするのは春の楽しみの一つだと思う。誰もがウキウキした気持ちで開花を待ち望むというのは「桜」だけではないだろうか。
僕の母は、花や植物が好きな人だった。突然の病が発覚して、チョビと二人で病床の母を呆気なく看取って迎えた告別式。最後まで弱音も吐かず凛とした母は、僕の手本である。自宅から斎場へと向かう桜並木には、満開の桜が咲き誇っていた。誰もが一瞬、淡く美しい桜の花に見惚れて、悲しみから解放された。式が終わる頃には、桜の絨毯が敷かれて、足取りは軽かった。その見事な花の演出は、母からの特別な贈り物のようだった。
以来、桜には一層の思い入れがある。綺麗な桜の花を見ると、母に会えたような気持ちになるのだ。お弁当を抱えて花見へ出かけるのも楽しいが、日常の中でふと出会う桜の景色というのも、偶然性があって嬉しいもの。
チョビにも桜の花を見せてやりたくて、花屋で綺麗な枝を買い求めて、桜餅を食べながら、花見というのも一興である。ぜひ、あなたのお花見の思い出もお聞かせ下さいね。
麻生要一郎
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あそう・よういちろう|1977年1月18日生まれ。茨城県水戸市出身。料理家・随筆家。 家庭的な味わいのお弁当が評判となり口コミで広がる。雑誌への料理・レシピ提供、食や暮らしについての随筆を行う。初の単行本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社刊)を刊行。2022年1月には第2弾『僕のいたわり飯』(光文社刊)も。 |
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Illustration:fancomi
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