
新茶の茶摘み体験記。ひとつかみに宿る茶農家の想いを知って
2020年04月17日

by 煎茶堂東京編集部
2019年4月。舞台は日本一の荒茶生産量の地、静岡。「本山」で育まれる格別の浅蒸し茶「002 香駿」の手摘み用の茶園へ、私谷本が茶摘み体験をした時のことをお話しいたします。 生の葉を言葉で表現するならば、ツヤツヤ・ぷるぷる。冬を超えて溜め込んだ養分を使って芽吹いたやわらかい新芽は生命力に溢れ、思わず「はむっ」と口に含んでしまいたくなります。 この茶畑を管理する森さんは、独自の理論を持ち、味・香り・水色に優れるハイクオリティなお茶を作り出す名手。私がはじめて訪れた茶畑です。
新茶を手摘みするということ
茶摘みといえば、昔は手で摘み取るのが一般的でしたが、今は機械刈りといってトラクターのような機械で刈るのが主流です。しかし、静岡の一部では山の傾斜地でお茶を作っているエリアが多く、機械化が進んでいないために効率性が悪く後継者の問題も生じています。
そんな産地で地域への貢献やお茶摘み体験のためだけに森さんは非効率にも手摘み体験用の茶園を用意しているのです。この手摘みという作業、小一時間やっても「3つかみ」分くらいしか収穫できない…。
お茶としてできあがるのは重さにして約5分の1ですから、計算するとその年に自分ひとりが飲む分を収穫するのに丸一日はかかります。
でも、この体験には収穫を心から祝うという「祝祭」としてのかけがえのない意義がある。経済や効率という尺度では測れない何かがあるような気がしました。
新茶の育みに欠かせない「八十八夜」
八十八夜。立春から数えて88日目のこと。うるう年である2020年の八十八夜は「5月1日」です。農業に従事していた日本人は、農作物の収穫に最も重要である季節を知るため、太陽の動きをもとにした二十四節気という中国から伝来した暦を使っていました。
最も昼が長い日=夏至と、最も昼が短い日=冬至で一年を半分に分け、さらにその半分に位置する日を「春分・秋分」としました。さらにその半分、つまり1年を8等分した日が「立春・立夏・立秋・立冬」です。
太陽の軌道=季節を元にした暦だから、農作物の収穫などの目安に使われているのですね。最近は温暖化の影響で新茶の収穫日は徐々に早まっています。
一芯二葉で摘むってどういうこと?
お茶は一芯二葉で摘む、ということがよく言われます。どういう状態かというと、上の写真でまだひらいていない芽が「芯」、続いて2・3の2枚の「葉」までを含めて一芯二葉と呼んでいます。
お茶の新芽はでてきたばかりでは、柔らかいのですがまだ栄養が十分にのっていません。一方で、葉が育ちすぎると繊維質が多く固くなり、栄養も成長に使われてしまうため美味しいお茶になりません。
ですから、ここだ!という絶好のタイミングで収穫するというのが非常に大切で、ここにも雨や気温が影響します。新芽はいうことを聞いてくれませんから、茶農家はこの時期はピリピリとしがちかもしれませんね。
おうちで新茶のフレッシュさ、喜びをみんなで分かち合いませんか。
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