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新茶の時期は年に1度だけ。お茶農家の1年に想いをはせて
2020年08月17日
by 煎茶堂東京編集部
1年に1度訪れる新茶の時期は、お茶農家にとって特別な季節です。立春から88日数えた5月2日前後にあたるのが八十八夜。この時期には、静岡県をはじめとする各地域で茶摘み体験などのイベントも行われています。
お茶の旬ともいえる時期の日本茶は栄養価も高く、香りはさわやかで奥深い味わい。こちらの記事では、新茶の時期や定義についてお伝えします。
お茶農家の想いが込められた「新茶」とは?
お茶の葉は、チャノキと呼ばれるツバキ科の木から育ちます。その年にチャノキから一番初めに出た葉が「新芽」。その葉を使って淹れた煎茶が「新茶」です。
チャノキにとって過酷な環境である冬を乗り越え、暖かな春を迎えて芽吹いた葉は栄養をぎゅっと蓄えています。お茶が日本に伝わった時代は滋養強壮・体調回復のために飲まれていたことから「新茶を飲むと1年間無病息災で過ごせる」「新茶は長寿につながる」と伝えられるほどです。
太陽光をあまり浴びていない新茶の葉はやわらかく、生命力に溢れたみずみずしさ。旨味と甘みの主成分であるテアニンも豊富で渋みが少なく、新茶特有の美味しさに溢れているのです。
また、新芽のあとに育った芽でつくられるのが二番茶や三番茶。これらのお茶は総称して番茶と呼ばれています。番茶は旨味や甘み成分が少ない分、さっぱりとした味わい。カフェインも低いことから、大人から子どもまで幅広い層に親しまれるお茶です。
「お茶の旬」新茶の時期とは?
「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る…」これはお茶を摘む様子を表した唱歌、茶つみの歌。手遊び歌にもなっているフレーズは、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
八十八夜とは、2月の立春から数えて88日目の5月2日前後。立春は中国から伝来した暦、二十四節気のひとつです。1年の季節の移ろいを24に分けた二十四節気は、古来から農業や林業に携わる人々の間で、日々の営みの目安とされてきました。
二十四節気で1年の始まりにあたる立春は、吹く風が暖かく変化し、山から雪解け水が流れる春のはじまりの季節。そこから88日数えた八十八夜は、農業における種まきの目安であり、お茶農家にとっては新茶の時期でもあるのです。
農家にとって、新茶を摘むことができるのは1年に1度だけ。農家の1年間の努力は、すべてが新茶のためでもあります。茶葉に栄養を送るため土壌と日照を管理し、初春の霜害から茶葉を守り…それでも一番良いタイミングで収穫できなければ、新茶の美味しさは損なわれてしまうのです。
数々のハードルを越え1年かけて育った茶葉は、農家にとって子どもと同じ様なもの。新茶の収穫には、実に特別な意味があるといえるでしょう。
茶園によって異なる新茶の時期
近年は温暖化により、新茶の時期は早まっています。決して全国一律ではなく、それぞれの茶園の風土や気候によって異なるのが特徴です。温暖な気候の鹿児島県では4月上旬から新茶が摘まれますが、冷涼な地域では八十八夜を過ぎることも珍しくありません。
また、新茶の時期とともに茶園によって異なるのが収穫の回数。収穫時期が長い南九州では、三番茶から四番茶まで摘まれることもあります。しかし、農家によっては二番茶で収穫を終え、来年の一番茶に備えてチャノキを切り戻すなど栽培スタイルは実にさまざまです。
煎茶堂東京で取り扱う茶葉はすべてその年の一番茶(新茶)として作られたもの。「006 ゆたかみどり知覧」の生みの親、製茶工房ちらみも二番茶で収穫を終える茶園のひとつです。より良い品質のお茶を目指した茶葉は、甘みと旨味、香ばしさを兼ねそなえています。
また、お茶の味を大きく左右するのが新茶の摘み方。現在はトラクターのような機械でお茶を刈るのが主流ですが、以前は茶摘み歌のように茶葉は人の手で摘まれていました。
手摘みは茶葉が傷つかず良質なお茶ができる反面、一回の収穫数が限られる手間とコストのかかる方法。非効率的であるにもかかわらず「002 香駿」が育つ土地では地域への貢献を兼ね、茶摘み体験用の茶園が用意されています。
香駿が育つのは、傾斜地が多く機械化も進んでいない静岡県・本山。味と香り、水色(すいしょく)に優れた煎茶はすっきりと上品な味わいです。
お茶農家の1年を想いながら飲む煎茶
日本の四季の中で育ち、春の訪れと共に芽吹くチャノキはまさに生き物。その循環は止まることなく、新茶を摘むその時から翌年に向けたスタートは始まっています。
どのような時代であっても、自然は待ってくれません。美味しい新茶のため、今日も茶園ではお茶作りが続けられています。それぞれのお茶農家の想いを感じながら、ぜひ特別な一煎を味わってみてください。
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