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春が近づくと思い出す。「桜麩まんじゅう」と農家さんが淹れたお茶のこと

2020年03月26日

by 煎茶堂東京編集部

こんにちは。東京茶寮・店長の井原です。

今回は福岡の茶畑を訪れたときに味わった、大地を感じさせる力強いお茶と、偶然出会ったわたしの愛してやまないお菓子のことについて。



これまでにご紹介した夏のれんこん菓子とささの菓子、冬に食べたくなる丸缶羊羹に続き、春ならではの桜のスイーツのお話です。

大地を感じさせる、男らしい「やぶきた やめ」のこと

ここ数年、煎茶堂東京のお茶が、どんな地で、どんな人に育まれているのかを知りたくて、毎年お茶農家さんの元を訪ねています。

2019年の春は、「004 やぶきた やめ」の茶畑がある福岡の八女へと足を運びました。



日が差せば暖かいけれど、吹く風が肌寒さを感じさせる緑一面に広がる茶畑。

生産者の江島さんのゴツゴツとした日に焼けた手と短い爪、ニッコリと優しい笑顔に「やぶきた やめの茶畑に来たんだ…!」という感動を噛み締めます。江島さんとの会話の中には、茶葉に対しての想いやお茶を飲む人たちへの愛情がたくさん詰まっていました。

茶畑の見学を終えたあと、江島さんがお茶を淹れてくれるということでひと休みすることに。



「あなたたちが淹れるお茶とは違うよ」



とひと言。「やぶきた やめ」といえば、繊細で甘味のあるイメージがありましたが、一口飲んだだけで、江島さんの言った違いがわかりました。

深い緑の水色、土の香りと大地のエネルギー溢れる力強い味わいは、濃厚というありふれた言葉では表せない。

東京茶寮で淹れているお茶とはまるで別物で、淹れ方でこんなにも味わいが変わるのか。とハッとさせられたことを覚えています。



当時の「やぶきた やめ」の味わいを思い返すと、茶畑で見た江島さんの男らしくも優しい笑顔がリンクして、「男はつらいよ」の寅さんみたいだなって。ふと思い浮んだのです。この時のお茶を人に例えるなら、まさにそんなイメージでした。

奥ゆかしい「桜の麩まんじゅう」と運命を感じた出会い

茶畑と江島さんにお別れをし、ひとり福岡の街を散策していたときのことです。

歩き疲れてへトヘトになっていると、ふとビルの一角に佇むお店と目があったような感覚が。わたしはこのお店に呼ばれている…!?そんな気がしたんです。

そこは「熊久」という小さな和菓子屋さんでした。
※2020年2月1日より、「熊屋 福岡店」に屋号を変更されています。



お店の中には段々畑のように水が落ちる3連の水槽があって、中をのぞくと丸いおまんじゅうのようなものが。

若い店主に尋ねると、生麩の皮であんこを包んだ「麩まんじゅう」だと教えてくれました。造り方まで丁寧に説明してくださったことも印象的で、会話の弾んだひとときとなりました。

わたしは春限定の、「桜の麩まんじゅう」をいただくことに。

笹に包まれたほんのりピンク色の可愛らしい見た目、もちっとした特徴的な食感とからだの隅々まで染み渡るような優しい桜の香り。さくらもちの塩味とはまた違う、繊細であんこがトゥルっと口の中でとろけるような感覚。

偶然立ち寄っただけなのにこんな素敵な出会いがあるなんて…。と愛らしい麩まんじゅうを一口ずつ大切に味わいます。



疲れを癒やしてくれる優しさと奥ゆかしい佇まいとは裏腹に、味も香りにも芯があって、自分を強く持っている。そんな女性像を思い浮かべずにはいられませんでした。

今回の旅で出会ったお茶が寅さんなら、このお菓子はヒロインさながら。つい寅さんが追いかけてしまいたくなるような、そんな存在だと感じました。

「わたしもこんな女性になりたい…」

この「桜の麩まんじゅう」は、わたしの憧れの女性像にぴったりで。より一層、特別で思い入れのあるお菓子になったんです。

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