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やっぱり八女茶のファンの皆さんにおいしいと言ってもらえることですね 「004 やぶきた やめ」八女美緑園製茶 江島一信さんインタビュー

2020年07月19日

by 煎茶堂東京編集部

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日本でも有数のお茶の名産地「八女」。八女といえば、日光をさえぎる「覆いを掛ける」(=被覆する)ことで旨味を増す栽培方法が伝統的に行われてきた地域です。京都も同じく「覆い」を掛けることで有名ですが、どんな違いがあるのだろうと気になって度々訪れていました。


江島さんの工場について電話すると「あ、もう会社来たと?いま畑にいるけんね。10分くらいでもどるわ」とのこと。とても気さくなのですが、カメラを向けると少し緊張されている様子。いつもの江島節を引き出せるよう、オフレコ感を演出しながらインタビューを行いました。

話し手:八女美緑園製茶 江島一信さん 聞き手:谷本幹人



―――八女美緑園製茶がスタートしたきっかけを教えてください。
美緑園はもともと個人の農家なんですね。5件の農家が集まって20数年前に会社としてスタートしたのが始まりです。それで、私が40歳になるちょっと前くらいに会社にしました。個人的な考え方が合致するメンバーが5人集まったという感じです。

―――みなさんが見据える将来的な展望なんかもあったりしますか。
まぁ農家ですから、安定的な経営をするのが一番最良な考え方なんだけど、うちは自分のとこでも販売をやりますので、やっぱり八女茶のファンの皆さんにおいしいと言ってもらえることですね。お茶を流通させることで発展するお客様とのつながりというのも励みになります。

―――ファンのために、ですね。規模はどれくらいになるんですか。
いまだいたい経営面積が35ヘクタール。分かりやすく言うと、東京ドーム8個分くらいのお茶をつくってる。

それでも八女の生産量は、全国からみれば3%しかないんですよ。5軒の法人で経営するとなると、最低でもそのくらいの面積は必要かな。

―――煎茶や玉露…色々なお茶がありますが、出荷している種類は。
うちは煎茶をメインにつくってます。いまは消費者の皆さんのニーズが、やっぱり水色(すいしょく)の青いものを好まれるので、水色を良くする意味で被覆をやってます。基本は、うちでは被覆をするお茶が9割くらいなんですね。

あと露地栽培をやっている目的はやっぱり鼻に抜ける香り。専門的な用語でいうと「青葉アルコール」っていうんだけど、鼻からスッと青葉臭っていうかな、お茶の独特の青い香りが非常に強くなる。逆にいうと、被覆をすると、その香りが薄まってしまう。ですから、お茶屋さんによっては、露地の香りを求める人もいるんだけど、お茶のうまみとか甘みを上げるのであれば被覆をするほうがアミノ酸が含有量が上がりますね。

八女美緑園製茶が経営する「八女茶カフェ ぶんぶく」でお話を伺う
―――畑の土、ふかっとしてますね。

べたべたせずにさらさらし過ぎずにっていうか。ここの土は、元々は赤い土なのよ。土が肥えて腐食が始まると土が黒くなる。

―――土自体もちょっとコロコロしてるというか。
うん、粘土っぽいところはまずそうはならない。土によって重い軽いがあるの。火山灰は比重が軽くて、粘土は重い。だから軽い土は重くする、重い土は軽くする。例えば、重い粘土みたいなやつを軽くするためにはたい肥とかを入れる。牛ふんとかを粘土に入れてやると、その中で微生物とかが活動して、団粒構造って言って土の団粒が進んで空気が入りやすくなる。

逆に火山灰みたいなやつは、例えば石の粉みたいな重いものを入れながら土を重くする。踏み固めるとかね。ふわふわだけじゃ、根は張っても根の先っぽに吸収根っていうのができんのよ。吸収根がないと、水分だけで肥料は吸収しない。だから、土が軽すぎるところは、根はすーっと生えていくけどそっから出てくる吸収根が出なくて、肥料の吸収が弱い。

八女の茶の甘みが強いっていうのは、根がいっぱい張って吸収根がいっぱい張ってるからっていうことも、ひとつの要因。

―――なるほど、面白いですね。吸収根か。
根にもいろいろあるわけよ。普通の人って大きい根がドンっと張っとけば、それが一番いいんだろうって思うけど、それだけじゃないのよ。
今の時期(3月中旬)は萌芽(ほうが)が始まってる。一番小っちゃい芽の先っぽが割れとるやんね。萌芽してないときは、まだ芯の状態。芯が真っすぐしてるときは、まだ萌芽じゃない。先っぽが割れ始めた頃を萌芽っていう。

―――あ、もう一葉ちょっと開いてるやつがある。
そう。芽の大きさによって早い遅いのズレがあるわけよね。芽の力が強いやつほど早く割れるけど、まだ芽のやつもある。

そんで、萌芽の時に霜にやられると駄目。お茶は、霜に当たっても、また横から芽が出てくるけど、品質が悪いのよ。特に葉っぱが大きくなればなるほど葉が柔くなってくるから被害が出やすい。小さいときは、まだ耐寒性があるけん、どうにか我慢しきるけどね。霜に当たるとなんかこあくるしいお茶になるの。みずっぽいっていうか、旨味がないようなお茶だき、値段が安くなる。

―――じゃあ、だんだんと新芽が萌芽してきて、いまが大変っていう感じですか。
そう。だから今の時期から私たちは、枕を高くして寝れんのよ。深夜に温度が下がらんように、この防霜ファンっていう扇風機をばーっと回すんよね。もし気温が3度を下回ったら霜が下り始めるのでスプリンクラーで水を撒かないかんわけ。

最初からスプリンクラーを回していれば楽だけど、気温がまだ5度も6度もあるときから水を回してたら、土がぐちゃぐちゃになってしまう。土壌っていうのは、土と空気と水分がうまくなじんでいるのがいい状態で。だからその時間に3度を切ると見込んだらスプリンクラーに切り替える。

―――でも、夜明け前なんて家で寝ているわけじゃないですか。
だから、夜中の1時とか2時に水に切り替えに来ることも、当然あるわけですね。この真っ暗なところをさ。だから枕を高くして寝れないっていうのはそういうことよ。

そんでこれが朝になると一面、氷の芸術ができるけん。スプリンクラーを回して0度近くなると氷がどわーっと張ってその中にこの芽が保存されてるような感じたい。太陽が上がって、その氷が解け始めるときに融解熱で芽の温度がぐっと下がってやられるわけ。だから水がずっと回ってないといかんわけよ。途中で水が止まったら終わり。

夜明け前から、日の出る頃が一番危険。あの頃にちゃんと水が回ってないと駄目。

―――お茶ってある種賭けというか、どこまでやっても霜や災害があると思うんですけど、なぜそれでもお茶をやろうと。
そこにお茶があったからじゃない。簡単に言えば。

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このインタビューは、「観て飲む」お茶の定期便 "TOKYO TEA JOURNAL"に掲載されたものです。毎月お茶にまつわるお話と、2種類の茶葉をセットでお届け中。

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