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かぶせ茶とはどんなお茶?玉露と煎茶の中間に位置する日本茶の魅力
2020年12月21日
by 煎茶堂東京編集部
日本茶と言えば煎茶が代表的ですが、煎茶以外にも多くの種類があり、それぞれが異なる魅力を持っています。今回は、数ある日本茶の中からかぶせ茶についてご紹介。煎茶のようなさわやかな苦渋味と、玉露のような深い旨味を合わせ持つかぶせ茶の魅力を深掘りしていきます。
被覆栽培で作られるかぶせ茶
かぶせ茶はその名の通り、摘み採る前の茶葉に寒冷紗(かんれいしゃ)と呼ばれる布などを被せて栽培されるのが特徴です。こうした栽培方法を被覆栽培と呼びます。かぶせ茶のほか、玉露や碾茶(抹茶の原料となるお茶)も被覆栽培で作られるお茶です。
茶葉には、根で作られたアミノ酸の一種・テアニンが含まれています。テアニンは日本茶に含まれるアミノ酸全体の約5割を占め、日本茶の旨味をもたらす成分。テアニンをはじめとするアミノ酸をたくさん含むお茶ほど、旨味や甘味が強くなるのです。
このテアニンは、茶葉が日光を浴びることでカテキンに変化することが知られています。カテキンは日本茶の苦味や渋味をもたらす成分なので、茶葉が日光を浴びてテアニンがカテキンに変化していくと、旨味・甘味よりも苦味・渋味を特徴としたお茶になっていくのです。
さて、それでは摘採前の茶葉の日光を遮るとどうなるでしょうか。日光を遮ると、茶葉の中のテアニンがカテキンに変化しにくくなるため、テアニンが多くカテキンが少ない=旨味や甘みが強く、渋味や苦味が抑えられたお茶になるというわけです。
一般的なかぶせ茶の被覆期間は、地域や茶園によって違いが見られるものの、おおむね1週間〜10日前後。後ほど詳しくお話ししますが、被覆期間を長めにするほど玉露に近い品質のお茶になり、短めにするほど煎茶の良さも感じられるお茶になります。
加えて、被覆栽培は味だけでなく茶葉の色にもいい影響を与えます。植物は光合成によってエネルギーを生成しますが、この際に光エネルギーを吸収する役割を果たすのが葉緑素(クロロフィル)。茶葉が緑色なのは葉緑素を含んでいるためです。
被覆栽培下では日光が遮られるので、茶葉が貴重な日光を少しでも多く取り込もうとして葉緑素を増やします。結果、かぶせ茶の茶葉はやや青みのある鮮やかな緑色に仕上がるのです。
かぶせ茶は玉露と煎茶のいいとこ取り?
先ほど、かぶせ茶のほかに玉露や碾茶も被覆栽培で作られる、というお話をしました。この3つのお茶には、どのような違いがあるのでしょうか。
被覆方法が異なる場合もあるのですが、地域や茶園による差が大きいため一概には言えません。より一般的な違いは被覆期間の長さです。
先ほど「かぶせ茶の被覆期間はおおむね1週間〜10日前後」とご紹介しました。一方、玉露の被覆期間は20日程度〜、碾茶は玉露よりもさらにプラス5日程度の場合が多くなっています。被覆期間の長さ順に並べると、かぶせ茶<玉露<碾茶ということ。
日光を遮る期間が長いほどテアニンがカテキンに変化する量が減るわけですから、基本的にかぶせ茶よりも玉露や碾茶の方が旨味・甘味の強いお茶ということになります。
かぶせ茶と一口に言っても、被覆期間が比較的短く煎茶に近い味わいのものから、被覆期間が長めで玉露に近い品質を持つものまでさまざま。言うなれば、玉露と煎茶の中間に位置する「いいとこ取り」のお茶とも言えますね。
いいとこ取りのかぶせ茶を楽しんでみたいという人には、こちらの茶葉がおすすめです。
かぶせ茶の名産地 三重県伊勢
全国茶生産団体連合会によると、令和元年度の日本茶生産量に占めるかぶせ茶の割合は約4.2%。関東から九州にかけて幅広く生産されていますが、その中でも三重県の生産が全体の6割以上を占めています。
実は、三重県はお茶の一次加工品である荒茶生産量が静岡・鹿児島に次ぐ第3位。四日市市や鈴鹿市を中心とする北勢地域、松阪市などを中心とする南勢地域でお茶が盛んに生産され、伊勢茶のブランドで知られています。
とりわけ北勢地域がかぶせ茶の主産地となっていて、四日市市水沢(すいざわ)で生産される水沢茶はかぶせ茶の代表格。西寄りの三重県が主産地であるため、関西をはじめとした西日本での流通が多く、関東など東日本ではあまり流通していません。
かぶせ茶を美味しく楽しむ淹れかた
しっかりとした旨味・甘味、さわやかな苦味・渋味を合わせ持つかぶせ茶は、淹れかたによって異なる味わいを楽しめるお茶。
なお、旨味・甘味をもたらすテアニンなどのアミノ酸は低温でも十分に抽出されるのに対し、苦味・渋味をもたらすカテキンやカフェインといった成分は高温で抽出されやすいという特徴があります。
かぶせ茶の旨味・甘味を引き立たせたいなら、60℃程度の低めの温度で1分半〜2分程度じっくり抽出。苦味・渋味も楽しみたいなら、80℃程度の高めの温度で1分程度抽出するといいでしょう。
なお、煎茶堂東京がおすすめする煎茶の基本レシピなら、かぶせ茶が持つ異なる魅力をどちらも楽しむことができますよ。
日本茶のさまざまな特徴を楽しめるかぶせ茶
日本茶の風味は、苦味・渋味・甘味・旨味のバランスで決まると言われます。苦渋味の強い煎茶が好きだったり、コクのある旨味が特徴的な玉露が好きだったり、好みは人それぞれ。数多く煎茶や玉露を飲んでみたものの、好みにバッチリ合う日本茶にまだ出会えていない人もいるかもしれません。
かぶせ茶は、そんな煎茶と玉露の中間に位置するお茶として、さまざまな表情を見せてくれる日本茶です。自分好みのお茶を探しているなら、かぶせ茶を試してみてはいかがでしょうか。
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