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結局はやることは一緒じゃねえかな、いいお茶を作れば売れるんだな 「029 めいりょく」龍勢グリーン 朝比奈正雄さんインタビュー
2020年07月19日
by 煎茶堂東京編集部
≫ 映像コンテンツでお茶を選ぶ(一覧)
静岡県岡部の山のてっぺんには、町や周りの山々を見下ろすことの出来る絶景の茶畑があります。
「龍勢グリーン」の朝比奈さんは、みんなが欲しがってもらえるようなお茶を作ることを理想とし、自身の茶園だけでなくこの界隈のいくつかの工場や農園を統括しています。共同でお茶づくりに取り組む大変さや、いいお茶を作るためのこだわりを伺ってきました。
話し手:龍勢グリーン 朝比奈正雄さん 聞き手:谷本幹人
―――自己紹介と、この龍勢グリーンについて教えていただけますか。
龍勢グリーンは、茶葉を摘む前に寒冷紗という布で日光を遮った「かぶせ茶」100%でやってます。それと前社長の意向もあって、水色(すいしょく)のいいものを作るということで日々努力しています。
うちは工場と農園がいくつか寄り集まってできている会社で今年で15年ぐらいなんですが、私は2年前に社長になりました。当初は正社員入れて36人ぐらいだったのが、今は15〜16人と約半分以下になってしまいました。
やっぱり年齢とお茶業界の低迷の影響で、あまり量を栽培していない茶畑の人は辞めていっちゃいました。
―――人が減るとそれだけ大変なことも増えたのでは?
工場は、むしろ人数が多いほど大変ですね。農家が30人いりゃ30人分のいろんな茶葉ができちゃう…生葉がバラバラってことだね。それが今半分ぐらいに減ったから扱いやすいし、それぞれの茶葉に合わせた製造がしやすくなった。だから今回、めいりょくを単品で仕上げられたということもある。
―――お茶に関わるようになった理由は。
高校卒業したあとは5年ほど会社勤めをしていたんですが、お茶屋の仕事に誘われたのがきっかけです。
僕が行ってたお茶屋はかぶせとかは全然やらないところで、なかなかなじめない想いや、お茶を作って売る仕組みに興味を持ったときもありましたが、結局はやることは一緒じゃねえかな、いいお茶を作れば売れるんだなというような想いになりましたね。
―――この地域やお茶の特徴ってどんなところでしょうか。
いいお茶ができる条件のひとつである、霧が出ます。あとは昔からかぶせ茶や、かぶせが必要な玉露をよく栽培する地域です。いわゆる煎茶も、もちろんやってましたけど最終的にはほとんどがかぶせになりました。
今思うと自分たちがやり始めた頃からかぶせをやっていて、お茶の木がそれに慣れてるんじゃないかと思います。それと、霜の害を防ぐ扇風機はうちの工場は1台もありません。変なこといっちゃうと、もうあんまり気にしないというかね、害を。
―――わあ、すごい景色です、これ。いらっしゃった方やっぱ驚くんじゃないですか。
分かんねぇ、そんな来た人いないから。あそこにほら、やぐら見えるでしょ。あそこで10月に龍勢花火の打ち上げをやるの。
―――あのやぐらから花火、見たいですね。夜にここに来るのは怖いけれど…。
ところが来る人あるで。夜にね。
―――えっ、ここ相当急ですよ、危ないですよね。
俺は慣れてるでね。
―――これはどこの畑でしょう。
これは自分が今管理している畑です。めいりょくを育ててます。面積でいえば12アールぐらいあって、生葉にして1,000kgぐらいじゃないかと思うだけんね。仕上がり200kgぐらい。
他の農家さんとこの畑も含めると、面積がこの10倍くらい。今の時期の畑の芽は来年の一茶になってくるので、この芽をちゃんと残して病気とかないようにしていく。
―――このめいりょくはどういう特徴のあるお茶なんでしょうか。
見た通りツンツンしてまっすぐ細くて、確かに量も出るという。今の時期は特に葉が厚い。ちょっと病気にも強いのと、時期的に早く収穫できる茶葉ですね。色も、寒冷紗かけた後の色は一段と良くなります。
―――寒冷紗は直接かけてくわけですよね。
はい、人手でやってます。この敷地全部、うちの女房と2人で作業してね。大変とか言われるけど、半日あればかかる。慣れてるもんでね。刈るときも2人で、機械…摘採機は無理なんで手でやってます。
―――だいたい収穫、ここのめいりょくは何日ぐらいに収穫してるんですか。
寒冷紗かけてから2週間で刈る。どこでかけるかという難しさがあるもんで、収穫日はなんともいえないですね。めいりょくは早く摘み取れる早生(わせ)の品種なので今年の場合は八十八夜前に刈れた。普通の年だと八十八夜前に刈れたっていうことはあまりなかったですね。
―――ここの土質や肥料はどういった特徴が。
ちょっとここは粘土質で赤いです。下掘ると粘土っぽくって、ちょっと固まるような土質。肥料はもう、工場で決まったものをやるだけですね。余分なこととか、変なことして違うもんができちゃってもまずいもんですから、工場の指導通りで行います。
9月の半ばぐらいで1回目の肥料をおくんじゃないかと。あんま早く振ると秋冬番に効いちゃうっていうのもあって。
―――いろんなところから生葉が集まってくる中で、いいお茶を作るために取り組まれてることってあるんですか。
管理ですね。うちはたくさんの農家さんがいるので、とにかく全部の農園をできるだけ一緒にして。
例えば、どこかの農園だけが欲だしちゃって量を採ろうとか、そうするとあまりうまいもんができなくなっちゃうっていう。1度そういうことが起こって、今かなり厳しく伝えているというか、浸透させております。
―――管理していく中で朝比奈さんが重視しているのはどのへんでしょうか。
寒冷紗をかけ始める時期と、その後ちゃんと約2週間ぐらいかけて刈るということがやっぱり大事で。その辺をかなり徹底してやるようにしてます。
あまり遅くかけると葉がかなり硬くなってしまうし、あんまり短くってもよくない。あとは天候の影響でいつ刈れるか分からんから、早くかけて待ってて、いいタイミングで刈れるぐらいの余裕がないといけない。
―――朝比奈さんご自身が作られてるお茶で、理想のお茶ってありますか。
理想はやっぱ、みんなが欲しがってもらえるようなお茶を作ること。社長になって2年目ですけど毎朝、販売担当と農協行って他の工場のお茶を見たり、その時々にどういう対応をすればいいのかっていうことを考えながらやってます。
―――その求められてるものを作る中で、今のお茶の現状ってどういうふうに捉えられていますか。
工場始めて何年かしたときに、やっぱり深蒸しを要求されまして。深蒸しが流行って、それが業界的にはみんな良かったもんですからそれが抜けないというか。
今求められるものに応えることも大事だけど、浅蒸しには浅蒸しの良さもあるのに深蒸しばっかりっていうのもやっぱいかんなと思って、今年ちょっとその辺を全員に言います。「そんなの今頃そんなことしたって」とか、いろいろな意見が出るけど、やっていこうと。
お茶の話を「TOKYO TEA JOURNAL」 でもっと知る
このインタビューは、「観て飲む」お茶の定期便 "TOKYO TEA JOURNAL"に掲載されたものです。毎月お茶にまつわるお話と、2種類の茶葉をセットでお届け中。
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