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作り手のことば「キズやシミも、使い込むほどに愛着がわいて自分だけの器に」木工作家・後藤睦さんインタビュー
2022年12月16日
by 煎茶堂東京編集部
長野県御代田町で活動している、木工作家の後藤睦(ごとう・むつみ)さん。木材を見極めて木を切り出す製材から、ろくろ挽き、漆塗りまでの工程をひとりで作業しています。
制作したものはすべて日々の生活で使ってみて、自分で使用感を確認していると話す後藤さん。作品に対する想いに加えて、今回、煎茶堂東京で取り扱いのある器のおすすめの使い方や手入れ法など、食卓のアイデアが膨らむお話も伺いました。
本日はよろしくお願いします。後藤さんは、長野県で制作されているのですね。
はい。24歳で飛騨高山にある家具作りが学べる専門学校に入学し、卒業後は「ヤマイチ小椋ロクロ工芸所」に就職しました。
選木から木取り、ろくろ挽きから塗装に至るまですべての工程をひとりの職人が一貫して行う長野県の伝統工芸「南木曽ろくろ細工」を学びながら約5年間働いた後、独立して12年が経ちます。
現在も、選木も含めてすべての工程をおひとりで作業されているのですか?
現在は材木店から板材を仕入れているのですが、サラダボウルや大きい鉢、深いお椀などを作る場合、それに見合う材料が材木店にないことがほとんどです。そのため、大きな原木を仕入れて自分で製材し、材料を用意しなければなりません。
手間がかかり、ときには材料として使えるまで数ヶ月要しますが、好きなかたちのものを制作するために必要な工程です。
同じ木の種類でも、育った環境で個性があります。それぞれの木目や表情、強度などの特性をどう活かすか考えて、一枚の板から複数の材料をパズルのように切り出すのが楽しいです。大切な木を、無駄なく使い切れるとホッとします。
以前は繊細な作品も作っていましたが、近年は実用品として壊れにくい器が増えました。厚みはあるけれど、どこか軽やかな印象を与えるかたちを目指してデザインしています。
今回、お取り扱いする商品について教えてください。まずは「パン皿」からお願いします。
「パン皿」は独立した当初から作っているもので、ちょっとやそっとでは割れない厚みが特徴。お子さんにも安心ですし、とにかく長く使えて経年変化を楽しめる器です。朝食のパン皿としてはもちろん、取り皿やケーキ皿などオールマイティに使っていただけます。
オイル仕上げの器なので、料理や食材そのものの油分が染み定着することで汚れを防止し、メンテナンスの必要がなくなります。洗うときはやわらかいふきんやスポンジを使って、水かお湯で洗い流すだけでOKです。
汚れやニオイがどうしても気になる場合は、洗剤で洗い流しても大丈夫。ただし洗ったあとは油分が取れてしまうので、サラダ油やオリーブオイルなどを薄く塗り広げ、拭きあげると長持ちします。
少し深さのあるリム皿「nobo」は、どう使っていますか?
「nobo」はコンパクトにまとめられて、屋外にも持ち出して使える器をコンセプトに制作しました。日常の使い慣れた器を、ピクニックやキャンプに連れていってほしいです。
わが家では、3.5寸のサイズを、毎朝ヨーグルトやシリアルを食べるときに愛用中。大きめのもの(5寸、6寸)は家の中でも使いますが、重ねて持ち運べて便利なので、外でお弁当を食べるときに持っていきます。お手入れ法は「パン皿」と同じです。
漆器「葉反鉢4.5寸」についても教えてください。漆は扱いが難しいと感じる方もいるかもしれないので、お手入れ法も伺いたいです。
漆器ですが、気軽に扱える仕上げにしてあります。金属のスプーンを使っても大丈夫です。黒い器に、青菜のおひたしなどの緑色や、豆腐の白色などが映えますよ。
ハレの日やかしこまった場にもよく合います。正月やひな祭り用にとご購入される方もいらっしゃいました。ちらし寿司の取り皿などに使ってもらえたらと思います。
漆のものは、特にメンテナンスの必要はありません。洗うときは柔らかな布巾などを使用しお湯で流せばかんたんに汚れは落ちます。極度の乾燥や高温は割れの原因になりますので、食洗機や食器乾燥機、電子レンジの使用はお控えください。
陶器とは違う、木の器のいいところとは何でしょうか。
木は熱伝導率が低く、保温性があります。木の器に温もりを感じられるのもそのせいです。冬は温かいものが冷めにくく、夏は冷たいものが温まりにくい。木の器にアイスをよそうと、溶けにくいんですよ。わが家ではかき氷の器としても活躍しています。
また、木の器には独特の表情や色合いがあります。陶磁器やガラスの器と合わせて、食卓のアクセントとして楽しんでもらいたいです。
ちょっとしたキズやシミも使い込むほどに愛着がわき、自分だけの器になるのが木の器のいいところ。お子さんが扱っても、壊れにくいのでハラハラせずに使えるのもいいですね。
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