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作り手のことば「粉引づくりは、ケーキにクリームを塗るような楽しみ」陶芸家・荒賀文成さんインタビュー

2022年12月23日

by 煎茶堂東京編集部

京都で生まれ育った、陶芸家の荒賀文成(あらが・ふみなり)さん。現在も京都に住み、国宝・重要文化財に指定された「岩清水八幡宮」の参道入口に工房「荒楽窯」を構え、作陶を続けています。

荒賀さんの作品を代表するのは、ろくろで生み出す美しい造形の器。つるりとした質感の白い表面は、粉引で仕上げているのが特徴です。

今回、煎茶堂東京での取り扱いに伴い、器づくりについてお話を伺いました。

本日はよろしくお願いします。荒賀さんが、陶芸に興味をもったきっかけを教えてください。

高校2年生の頃、友達がいる美術部をたずねて遊びに行ったときに、たまたま陶芸をやらせてもらったのがきっかけです。うちの高校の美術部には窯もあり、ろくろがひける先生もいて、かなり本格的に陶芸を学べる環境でした。

そこでハマってしまったんですよね。僕も美術部に入部して、土練りから菊練り、ろくろまで教えてもらって。バイトをしながらも、放課後は陶芸に没頭していました。卒業後は、先生のすすめで京都の訓練校に進み、陶芸の勉強を続けました。

作陶される際に大切にされていることは何ですか?

“ろくろで仕上げたまんまの姿” で仕上げたいと考えています。いまは、押し型で成形された器も多いですが、僕は完全ろくろ仕上げで勝負したい。削るとフォルムが変わってしまうので、極力削ることもしないアプローチを心がけています。

ろくろで成形した器の底部を、糸で台から切り離したままにする「糸切り高台」のように、自然なかたちで仕上げたいんです。個性がないようで個性的な器。それが理想です。

「荒楽窯」

荒賀さんが、粉引(こひき)の器を作り続けている理由は何でしょうか。

僕が焼き物を始めた30年前くらいは、粉引という言葉が流行り始めて、信楽焼きの作家さんを中心に盛んにつくられていました。

赤土のベースの上に、カオリンという成分を泥のように溶いて白化粧したものを粉引と呼ぶのですが、僕はただ、つくった器を白く塗るのが楽しいんですよ。幼い頃にケーキづくりの記憶が楽しかったように、器に白いクリームを塗るような感覚でハマっちゃったんです。

粉引は、李朝時代に朝鮮半島で焼かれていた白色系の陶器が由来です。韓国といえば白磁の器ですが、昔は磁器が高級品だったので、庶民が土ものに白く塗って白磁のように見せたのがはじまりと言われています。

僕の父は韓国人で、だからといって幼少期に何か影響を受けたわけでもないですが、自分のルーツは感じるんですよね。さまざまな陶芸の技法に挑戦していますが、白い粉引はずっとブレずにつくり続けています。惹かれるのは、李朝の粉引など古い時代のものです。

荒賀さんがつくる、粉引の器のよさを教えてください。

同じ白い器でも、磁器と粉引の陶器では違いが明確じゃないですか。磁器は少し冷たいイメージのある白ですが、粉引はまったりした温かみのある白。白いけれど、寒い冬に使っても寒さを感じさせない魅力があります。

最近は素焼きをしてから白化粧をされる方が多いですが、僕は土に白化粧をしてから焼く「生化粧」にこだわっています。表面にプツプツした凹凸がない、つるっとしたクリーミーな質感は生化粧でないと出せないんですよ。

土ものは、磁器に比べると割れやすく欠けやすいですが、去年からは焼き方や釉薬を改良して、より強度のある器をつくれるようになりました。作品の仕上がりと、釉薬の塩梅を試行錯誤しましたが、いまはだいぶストレスなくつくれるようになりました。

作品の大半はご家庭でも実際に使用されているそうですね。なかでもお気に入りは?

「つば皿6寸」は、つば皿と名前をつけましたが、いわゆるリム皿です。この皿はサントリー『金麦』のCMでも使っていただいたのですが、CM内では見込み(料理を盛る部分)を超えてリムの部分にまでコンビーフユッケを盛っています。

見込みを小さくつくっているので、こんなふうにリムを超えて盛ってもいいし、リムの余白を生かして小さな料理をおしゃれに盛ってもいい。いろいろ使える器です。

新作の「ヒビ粉引」についても教えてください。

釉薬のガラス質がヒビ割れてできた模様を貫入といいますが、貫入のすきまから下地の赤がのぞいて黒っぽく見えるのが、今回の新作「ヒビ粉引」のシリーズです。

一般的には、貫入のすきまにわざと墨を流し込んだ「墨貫入」がよくつくられますが、僕の作品は白化粧自体がヒビになっています。少し古めかしいアンティークのような雰囲気があるので、テーブルコーディネートや料理に合わせて楽しんでいただきたいです。

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