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作り手のことば「器で大切なことは、安全で清潔であること。」渡辺キエさんインタビュー

2022年11月25日

by 煎茶堂東京編集部

栃木県は益子で作陶する渡辺キエ(わたなべ・きえ)さんは、鋳込みという技法で磁器を中心に制作しています。やわらかなフォルムと錆釉によるゆらぎのある縁取りが印象的で、縦に入ったラインを一目見ると渡辺さんの作品だと分かるほど。

今回は、煎茶堂東京でのお取り扱いに伴い、渡辺さんにお話を聞きました。使う人をより自然体に、料理や飲み物の味わいを際立たせてくれる器が生まれる背景について伺っていきます。

渡辺さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、器を作ることになったきっかけを教えてください。

学生時代に所属していた陶芸クラブをきっかけに、粘土を触り始めました。京都芸術短期大学の陶芸コースを卒業後、憧れの濱田庄司さんのあとを追うように益子町に移り住み、製陶所で働きながら独立に向けて勉強しました。

陶土より磁土の素材感が好きで、自然と今の作風に落ち着きました。

渡辺さんの作品の目印は、器に入った縦線が大きな特徴です。作品を作る工程の中で、好きな工程はありますか?

石膏で型を作り、初めて泥漿(粘土を泥状にしたもの)を型に流し込んで作品を型から取り出してみた時に「陶芸をやっていてよかった」と感じます。

泥漿を流し込む鋳込みは、ロクロなどの他の技法にはない表現や雰囲気が生まれるので、自分の意図した通りに型が作れたかどうかを確かめる時間が楽しみのひとつです。

縦線模様は、ロクロで挽いた原型から石膏型を作り、液体状にした磁土を流し込み、型から取り出し乾燥させ、素焼きした後に釉薬をかけます。そのまま完成させるバージョンのものもありますが、茶色のラインが入っているのは、第二酸化鉄(ベンガラ)で線を引いたものです。

ミニマルで品がある器の佇まいにとても惹かれます。大きさや色味など使いやすいカップが豊富ですが、作るときに意識されているところはありますか?

どんな飲み物にも使いやすいように、大きすぎず小さすぎず、ちょうどいい感じのサイズ感にこだわっています。ドリンクはもちろん、スープの器として使ってくれる人もいるようです。

渡辺さんの作品は、円や八角など、極めてシンプルな形とクリーンな釉薬の組み合わせが特徴だと思います。形や釉薬はどのようにして今のスタイルに辿り着きましたか?

はじめは、とにかくシンプルに、個性を削ぎ落として作品を作ろうというコンセプトでした。ですが、使っている磁器土が焼き上がった時に少し揺らぐ感じの形に仕上がったことで、シンプルな中に少し自分らしさが加味されるのかなと思うようになりました。
釉薬は、初めに目指した方向性のまま、すっきりとしたものを組み合わせることが多いです。

作品を作るときのインプットはありますか?

アジアの古い焼き物が好きです。

和、洋、中、どんな料理でも渡辺さんの器となじむのは、発想の源が広いことが一因なのかもしれません。器を作る上で一番大事なことは何だと思いますか?

安全で清潔であること。長く器作りを続けていても、基本的なことを大切にしたいと思っています。

今後挑戦してみたいことはありますか?

新しい粘土や釉薬を試してみて、その材料でどのような表現ができるか、いろいろな焼き物を作ってみたいと思っています。

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