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作り手のことば「“日本の食卓で使えるもの”を大前提に、主張しすぎないような器づくりを」陶芸家・竹下努さんインタビュー
2022年02月25日

by 神まどか
煎茶堂東京・東京茶寮/デザイナー 青森県生まれ。最近の趣味は中国茶と茶道具収集です。
凛としていて高潔な雰囲気をもち、いざ手に取って料理を載せてみると、なんだか料理までお澄まししているよう。
背伸びをする感覚もなく食卓に取り入れることができる竹下努さんの器。今の作風に仕上がるまで、そしてそんな器の背景にあるお話を伺いました。
竹下努さんについて
長野市生まれ。高校卒業後、岐阜県多治見市の多治見工業の専攻科で2年間陶芸を学び、そのまま多治見市で作陶を続ける。
煎茶堂東京デザイナー神(以下、神):こんにちは。本日はよろしくお願いします!まずはプロフィールから教えていただけますか?
竹下さん(以下、竹下):よろしくお願いします。僕は長野市出身で、高校卒業してから岐阜の土岐に来てます。
神:そうなんですね。長野はすごくいいところですよね。じゃあ高校はそういった美術系とかそういうものだったんでしょうか?
竹下:全然!普通科の高校でした。僕が焼き物を知ったのは中学校の頃なんですが、そのときの担任の先生が趣味を兼ねて作られていて、最初は粘土で泥遊びみたいな感じで触らせてもらってたんです。
でも美術部だったというわけでもなくて。卒業するとき先生と話し合いをしている中で、植物や動物が好きだったのでそっち関係に行くか、陶芸に行くか悩んだ結果、今こうなってます。
それで高校卒業後、多治見工業の専攻科で2年間陶芸を勉強させてもらいました。そのあとに同じ多治見市にある窯元に就職して、焼き物ってこういう感じなんだっていうのを教えてもらいましたね。
神:元から今の作風だったのでしょうか?
竹下:今の作風になったのは多分ここ5年くらいかと思います。当時、中学校の先生が赤土の結構ざっくりした焼き物をされてたので、それの影響で最初はずっと土物を作っていました。
その中学の先生は粉引とか三島とか言われる赤土に白土を塗って模様を出したりしていて。白土で焼くのでは出ない、面白い雰囲気がでるんですよ。
それでずっと続けていたんですが、粉引や三島のオリジナルが李氏朝鮮時代、つまり韓国の昔の焼き物なんですけど、その中に僕がいまやってる白磁のものがあって。
その頃の僕の感覚では磁器ものって冷たくてカチカチしてて、面白みがないんじゃないかと勝手に思ってたんですよね。
神:はい。
竹下:情報が少なくて本物を見たことも触ったこともなかったのでそんなイメージを持っていたんですけど、いろいろ勉強する中で、李朝の白磁って今まで僕がイメージしてたような白磁と違うんだっていうことに驚かされたんです。
思っていたより土感があるというか……李朝時代の作品にとても柔らかい印象を受けました。それ以来ちょっとずつ作り始めてたんですよ。
それで、10年前くらいに陶器祭りに出させてもらって、そこで割り当てられたエリアを全部自分のもので埋めてみたら、「随分ちぐはぐなものをいろいろ作ってるな」ってことに気がついて。
李朝と、先生から学んだ粉引や三島からの影響が混ざってしまっていたんですよね。
その他にも影響を受けているものは沢山あって、更に学生あがりだったっていうのもあって、「あれもこれもやりたい!」って色々やってたんです。それでテントを全部もので埋めたときに、絶句するくらいぐちゃぐちゃしてたんですよ。
神:なるほど。そこで初めてちょっと俯瞰で見たんですね。
竹下:客観的に見なくてもめちゃくちゃすぎるっていうことに気がついて、そのときから一つに絞ろうと決めたのが5、6前ぐらいですかね。今は白い器ばかりを作っています。
神:ありがとうございます。今の作品を作る上で、ポリシー的なものはありますか?
竹下:正直、あんまり思想的なものはないです。
語弊がある言い方かもしれないですが、基本的には“日本の食卓で使えるもの”を大前提として作っているので、あんまり思想を盛り込みすぎちゃうときっと使えない器になっちゃうと思うんですよ。
なので今は「李朝風」くらいに、自分の中でもそのぐらいの距離感で李朝白磁と向き合って器を作ればいいかなと思っています。
李朝白磁って思想論からちょっと掘り下げていくと、結構暗い過去があるんですよ。
なので多分韓国のそういう時代背景を知ってる人たちが見たら、「えっ、そんなの日常で使っちゃうの」って思うだろうと。
結構宗教じみてるというか、もともと祭器に使われてた器がほとんどなんです。
神:祭事で使われていた過去がある。
竹下:オリジナルはガッツリそういうものが入ってきちゃうので、あんまり表立って器として作られていないのかと。
神:日本の食卓で使えるものということですが、竹下さんの器には日常的な中に背筋がピンと伸びるような質感を感じていて、それが好きです。
お茶を飲むときって休憩がてらホッとするときもあれば、自分の雑念を取り払いたい時など、色んなシチュエーションがあると思うんですけど、竹下さんの器や茶器は特にそういう「雑念を取り払いたい」というときにとてもいいなと思います。
竹下:本当ですか。めっちゃ雑念だらけで作ってますよ(笑)。でも、轆轤やってるときは楽しいですね。
何も考えずにひょいひょいと作れるときがたまにあって。窯元に勤めてたときはずっとラジオが流れてたんですけど、集中するともう完全に音が消えます。
「あれ、さっきラジオでしゃべってたこと全然ちがう」って思うと、何個か轆轤の横にできたものが置いてある。ああ、時間が経ってたんだっていうときはあります。
神:すごい。気持ちよさそうですね。
作品を作るときのインプットについてお聞きしたいんですが、さきほどの話からすると李朝白磁や昔作られた器をもとに考えて作られることが多いですか?
竹下:そうですね。でも今のものを見たりもしますよ。昔のものが好きっていうのは今も昔も変わらないですけど。現代的なもの、窯元で作ったもの、製品として作られたものだったり、他の作家さんが作られているものだったりは見て勉強になるところがあります。
今この歳になってみて、ピンと引っかかるものと「引っかかるけど、今ちょっとこれ咀嚼できないな」っていうのが結構あるんですよ。
神:そのときに受けたインスピレーションがすぐに作品に反映できるわけではないんですね。
それでいうと今はなにかブーム的なものはありますか?
竹下:今も昔もあんまり変わらないですけど、飯碗作ってるときは最高に楽しいです。
単純に作りやすいというか、自分の手の形やサイズ感が飯碗を作るのにすごく合ってるんだと思うんですよ。あと僕がご飯好きっていうのが大きい。
あれも結構昔からある形で、「くらわんか」っていわれる九州のほうでも作られてたもので、そのときは雑器として作られた食器なんですけど、この形がすごい魅力的なので今自分で作ってます。
神:今回取り扱いさせていただく玉カップやお皿は、それぞれどういう風に使っているか聞いてもいいですか?
竹下:玉カップは汁椀としてよく使ってます。もともとは過去に行った展示用に茶器として作ったものなんです。1人分のお茶っ葉を入れて、お湯を注いで蒸らしてそのまま飲んでいただくような、まるっこい形のカップです。
でも茶器にこだわる必要ないかなって思ったので、今は茶器っぽくない間合いにして出してます。
で、飯碗はご飯ですね。今回煎茶堂東京さんに届けた飯碗はちょっとちっちゃいので、あれは個人的に汁椀に使うことが多いんですけど。僕、ご飯が好きなんでいっぱい食べたいんですよ。
もう丼に近いです。それの形が少し違う浅型の飯碗がもう1種類あって、そっちの大きいサイズを自分は毎日使ってますね。
神:最後に竹下さんが作る器で「ここが好き」という部分があれば教えていただけますか?
竹下:意識しているのは“主張しすぎないようにしよう”というところです。
器を作っている以上はご飯が主役かなというのは、ご飯好きとしてはちょっと揺るがないところがあって(笑)。僕の器はあくまでも脇役、引き立て役です。
僕は今白い器ばかり作っているんですが、いろんな器がある中で、何個か僕のが入ってると余白的な感じで見てもらえると嬉しい。
最近は、柄ものの器の中にポンっと僕の白い器があるといいなって思ったりします。
神:あー素敵ですね。逆に白と白の組み合わせでいうと、輪花玉カップと蓮華の相性はすごくいいですよね。私は台湾の豆花が大好きなんですけど、玉カップとレンゲは絶対に合うなと思ってます。
竹下:おお、ぴったりじゃないですかね。蓮華は使い手に使い方をお任せしているというか、使う人によって使い方が違ってくるんじゃないかなと思います。
神:他の作家さんにもお話を聞いていて、今だと「Instagramで買ってくれた方のいろんな使い方を見れて、新しい発見がある」という方もいらっしゃいました。
竹下:そのほうが作家としては健全な作り方なんじゃないかなと思います。僕の考え方ってどちらかというと窯元的な考え方がある気がするので、「使えるか使えないか」を前提において作ってるところがあるんですよね。
対して、作家さんって自分が「かっこいいな」「これいいな」って思ったものを作って、それをお客様が手に取るところを想像していると思うんですよ。それって精神衛生的にすごくいいんじゃなかろうかと。
あれこれ考えすぎずにとりあえず外に出すというか。なので、今回取り扱っていただく作品も、購入いただいた方にどんな風に使われるのか楽しみにしています。
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