わたしの茶道具「来歴のよく分からない、匿名的な古いものに惹かれます。」台形/伏木庸平さん

2021年07月23日

by 神まどか

お茶のある暮らしを楽しむうちについ増えてしまう茶道具たち。でもお気に入りの逸品があると、お茶はもっと楽しくなる。センスのよいあの人が、そんな愉悦にどっぷりつかってしまった茶道具をご紹介。

東京・国立で台形の形をした飲食店「台形」を営む伏木庸平さんは、その誕生と歴史に思いを馳せてしまう2つの茶道具について教えてくれました。

いつからかどこかで誰かに使われ
巡り巡って今はここにある。
時間の堆積を感じる茶道具

来歴のよく分からない、匿名的な古いものに惹かれます。

これは自分の知らない誰かが、自分の知らない場所で、自分の知らない用途として長い間使っていて、たぶんその人はもうこの世界にはいなくて、だけれども物だけは残って、色々巡ったのちになぜかいま現在、東京西部の国立にある台形という小さな店で紅茶の道具として使われている。その想像し得ない因果に、人間の一生の尺度を超えた、物に備わる時間の堆積を感じます。

ティーカップとして使っているのはたぶん江戸前期ぐらいの御深井焼、ティーポットとして使っているのはたぶん幕末から明治期ぐらいの美濃の油さしで、両方ともツギハギの直した跡だらけ。このカップなんて、少し抵抗を感じるほどの金継ぎ具合です。これも自分の知らない誰かの手によって直されて、このかたちとしてあるんですよね。重層的に織り合わさった、確かな生の痕跡を見ることができます。

いったい何人の人が、いままで口をつけたのでしょうね。そう思うと、いつものお茶の味も、お茶を飲んでいるこの時間も、なんだか少しだけ、歪なものに変わってくる気がしますよねぇ。

台形
伏木庸平さん

台形のかたちをした小さな飲食店。Twitter:@daikei_org / Instagram:@dai.kei

「台形」で提供される料理の一つ。(料理は季節によって変動します。料理名はついていないとのことだったのですが、今回伺うと「『球体』でお願いします。」と返信が。この「球体」に何が詰まっているのかは、食べた人だけのお楽しみ。(※料理は季節によって変動します。)

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