俺は茶つくんのが、結局好きやから 「018 うじひかり」下岡清富さんインタビュー

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玉露という品種で全国の生産量トップを誇る京都府。その中でも南部に位置する宇治田原という町があります。

個性と面白さを求める下岡さんは、手間を惜しまず愛情深くお茶を育む農家です。我が子のように茶畑に接する様子やその想いについてお話してくださいました。

話し手:下岡清富さん 聞き手:谷本幹人



―――茶園の成り立ちについてお伺いできますか。
おやじが久五郎っていうから久五郎茶園です。 俺、この家4代目やけど俺のおじいからやってんちゃうかな。でも、ほんまに面積広げてやり出したんはおやじの代やから、まだ50年ならへん。

で、好きな事せいよって言われながら来たけど気づいたら寄り切られて、継がなしゃあないなっていう感じで。けど、他を見てると家の経営がまあまあできてなくって、もうやめとけっていう家も多いから良かったんちゃうかなと。

―――じゃあ、お子さんにも同じように。
そうね。親になってみて思うんが、うち息子が今中学2年生やけど、やれとは言わん。嫌々やられんのが嫌。俺は茶つくんのが結局好きやから、おやじがどうこう言おうがやってたと思うし。

だから家で俺、茶の仕事がしんどいとか言わへんし、遊ぶときは遊ぶし。農家って楽しいねんなって思わすようにはしてる。山登り行ったり、この前息子と2人の時、2人やし良いもん食いに行こうって言って焼肉たらふく食わした。

―――お父様との仕事はどんな感じでしたか。
親子でやるとけんかばっかりやけどな。俺はこうしたいねんっていうのと、そうじゃない意見がもう絶対合わへんから。でも、合うときは絶対正解やっていうことやから、一応なんかやるときは聞く。

今までやってきた経験だけ利用したろうと思って。まぁ、時代の移り変わりもあるし、新しい品種植えたら昔の常識では通用せえへんかったり。


―――「うじひかり」はどういった特徴がありますか?
芝生っぽい味がするなというところですか。「うじひかり」は、宇治の品種なんですね。葉がちょっとこまいから、生育をおさえていくと仕上がりがこまかなる。かというて、自由に伸ばしすぎるとアホみたいに大きくなる。形をとるのか内質をとるのかが難しい。

煎茶やったらもうある程度細かくて旬のいい時に採るのが主流やけど、玉露は芽数を少なくして1個1個、充実した芽をつくるっていうのが基本やから、あまりピチピチに詰まってくると良くはない。けどこれぐらいでも去年と今年は結構量も採れたし、そこそこ良かったんちゃうかな。

 


男らしく、苦みばしった表情でお茶への溢れる愛を語ってくださった下岡さん。

―――手摘みの玉露も栽培されていますね。わざわざ手間のかかるお茶をなぜ?
「下岡さんとこのお茶はそんなんしはるぐらいやったら、安心感あるな」って思われたい。品評会は毎年獲るつもりでやってん。今年は不発やったけど、3年くらい前に関西の品評会で玉露で1位を獲った時は1kgが31万で売れた。4kg出したら120何万。

けど、普通に収穫したら畑1枚から 40〜50万円の売上があがるのをフイにして、品評会のために人件費かけて茶摘んでもらって、さらに肥料代もかかる。

―――そういったことを考えたら採算はなかなか。
その大臣賞獲った時は黒字になるけど、そんな毎年獲れるやんじゃないからだいたい損や。でも、同じ年に玉露と被せの2個もらった時はだいぶ黒字やったな。

お祝いにお世話なった人呼んでちょっとパーティーっぽい事やるんですけど、2個同時やから1回で済むでしょ。効率的(笑)。 それぞれ年が代わって獲ったら2回やらんな。


―――今年のお茶はどうでしたか?
今年 1 発目の手摘みがいい価格つかずにもうやめようかなと思ったんだけど、2 回目ちょっと蒸したらキロ 2 万円超えて。それがまたまぁ、つくる面白さというか。自分のイメージとしては、子どもを育ててるのとおんなじで。

子どもを育てんのに別に1から10まで手を掛けるわけじゃなくて、ある程度その畑ごとの能力があって、いいとこを伸ばしてあげようっていう。そのお茶が売れるっていうのは就職とか嫁入りとかと同じだと思っていて、必要とされるところに行きよったら、それが別に安かろうが高かろうが…。

まぁ、高いほうがいいけどちゃんと貰ってもらえるっていうのが嬉しい。でも、下岡さんはいいお茶つくりはりますねって言われても、あんまり自分はそういう意識がなくて、もともと良かったんやって言ってます。出品茶とかでも元から土質がいいとこじゃないと1位にはなれへんから。

―――まさに子育て.…茶葉の人生を見守っていますね。
うん。やっぱり、自分の子どもやと思ったらこの子のいいとこ、ココなんです!っていうのを作ってあげたい。あほな子なんぼ勉強さしても東大には行けへんし。 でも、東大に行けなくてもスポーツやらしてそれでどっか就職したら、それはそれで成功やし。

今はみんな同じようにつくって、そっちが主流になっていて。みんな同じ化粧顔つき。それどうなんって思う。それやったら性格も分からへんやんって。 特徴があるお茶って、やっぱ面白いじゃないですか。なんかそういうの楽しんで飲むみたいなのって、まだあんまりないなって思ってて。

もうほとんどの人は、お茶飲む時に品種すら考えたことないっていう人ばっかりじゃないですか。 お茶にも面白いのあるよ、っていうのはもっと知ってほしいですね。品種とかで見てくれると、プレッシャーになるのが良い。

もし、なんの品種だとか見てもらえへんようなを状態やったら、同じ化粧して出荷したほうがお金にはなるし。 結局おいしい、あのお茶うまかったなって言われたらそれが一番嬉しい。また来年も欲しいわって言われたら頑張ろうって思う。

 


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このインタビューは、「観て飲む」お茶の定期便 "TOKYO TEA JOURNAL"に掲載されたものです。毎月お茶にまつわるお話と、2種類の茶葉をセットでお届け中。

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