
麻生要一郎「3月は、ちらし寿司。」- TOKYO TEA JOURNAL 巻頭エッセイ
2023年03月17日

by 煎茶堂東京編集部
TOKYO TEA JORUNALの巻頭コラムを飾る、料理家・麻生要一郎さんのエッセイ。季節を感じながら、毎日のちょっとした幸せを見つけられるような麻生さんのエッセイをお楽しみください。月に一度更新予定。
3月は、ちらし寿司。
春になると作りたくなる「ちらし寿司」。
鯛の身を炒っておぼろにし、干し椎茸をゆっくり煮含め、蓮根を甘酢に漬け込み、干瓢を薄味に仕上げ、錦糸卵を作る。
いずれも手間がかかるが、母から教わった我が家のちらし寿司に欠かせない具材である。気紛れで刻み穴子、海老や鮮魚を足し、あしらいに菜花や絹さやを散らす。やや硬めに炊き上げたご飯に、手早くすし酢を混ぜる。少し冷めたところに先の具材を加え、色合いやバランスを見ながら盛り付けるのは、楽しいひと時である。
合わせるお椀は、蛤が良い。昆布出汁に、酒を少し加えて、蛤を入れてゆっくりと待つ。あまり余計なものは入れず、木の芽で風味を引き立てる。
料理の仕事を始めて、かしこまった席で、ちらし寿司を作る事になった時、亡くなった母に手伝ってもらった事がある。春のうららかな日差しが入る台所で、「もう少し海老を真ん中に寄せた方が綺麗に見えるわよ」と話しながら、二人で一緒に盛り付けをしたのは、良い思い出となった。
今年は、いつもの味の他に、筍や山菜を使った春の淡い苦味を感じられるような、少し大人のちらし寿司に興じたいと思っています。皆さんの、ちらし寿司の思い出をお寄せ下さい。
麻生要一郎
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あそう・よういちろう|1977年1月18日生まれ。茨城県水戸市出身。料理家・随筆家。 家庭的な味わいのお弁当が評判となり口コミで広がる。雑誌への料理・レシピ提供、食や暮らしについての随筆を行う。初の単行本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社刊)を刊行。2022年1月には第2弾『僕のいたわり飯』(光文社刊)も。 |
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Illustration:fancomi
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