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【後半】ノンアルコールドリンクのこと、 教えてください。アルト・アルコ 代表 安藤裕さんに聞くノンアルコールドリンクの魅力

2022年08月15日

by 煎茶堂東京編集部

「ノンアルコールドリンク」という名は聞くけれど、ノンアルコールのビールやソフトドリンクとはいったい何が違うんだろう?

お茶の定期便「TOKYO TEA JOURNAL」VOL.40「お茶とノンアルドリンクと。」で特集したノンアルコールドリンクの奥深さ、“ノンアルコールドリンクならではの魅力” は何かを探りながら、ペアリングの楽しみ方や、味の組み立て方を紹介します。

まず初めに、日本初となるノンアルコール専門商社「アルト・アルコ」代表の安藤裕さんに、ノンアルコールドリンクの「なぜ?」を聞いてみました。

話し手…安藤裕さん

ノンアルコール専門商社のアルト・アルコ代表。大学在学中にワーキングホリデーを利用して渡仏し、本場のワインに触れる。ワイン商社でのインターン、卒業後はワイン専門商社を経て、2018年にアルト・アルコを創業。著書にノンアルコールドリンクの流れからレシピ、ペアリングについてなどをまとめた『ノンアルコールドリンクの発想と組み立て』(誠文堂新光社)がある。

聞き手…谷本幹人

煎茶堂東京・取締役兼デザイナー。世界に誇れる「日本茶の文化」を次世代に繋げていくために日々奮闘中。

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お茶は縁の下の力持ち

安藤(以下、安):ノンアルコールドリンクを作るとき、リキュールでもモクテル(ノンアルコールカクテル)でもそうですが、お茶を使うことが実は多いんです。

お茶にはカテキンやタンニンがあるのでボディを作ってくれるし、それ自体に甘みがあります。砂糖を加えずに甘みを足せる素材はとても有難いんです。

谷本(以下、谷):煎茶を使ったドリンクなら甘みを活かしてほしいと思っていました!お茶らしい美味しさがそこにあるし、実際活かしていただいているというのは、すごく感動します。

安:ノンアルコールドリンクにお茶を使う場合には二通りあると思っています。ひとつは抹茶を使うなどでお茶を前面に出す方法。そしてもうひとつは縁の下の力持ち的な使い方。

後者だと、全体的なストラクチャーが決まるんです。ワインでもイタリアのネッビオーロなどはカテキン分がかなりあります。そういう味の構成要素を紐解いていくと、この味の再現にはお茶を使っていこう、という発想ができていくんです。

谷:今日持ってきていただいたノンアルコールワインにもお茶が入っているそうですね。

安:はい。自社で立ち上げたPalette & Palateというブランドの第一弾 “Beni” です。ワイン用のブドウ果汁に、カシスやブルーベリー、数種類のボタニカルを漬け込んで作っています。この中に八女茶の茶葉も入っているんですよ。

谷:あ!おいしい! 本当に複雑な味わいですね。あと味のタンニン感もワインっぽさがある。食事にも合わせやすそうです。

安:清涼感を出すためにミントを入れたり、味わいや複雑味を出すためにセージやクローブを入れたり……。ノンアルコールってスパークリング系が多いんですよ。

そうではなくてスティル(発泡性のないもの)で楽しめて、なおかつ赤系のものはアイテム数がすごく少ないのでそこを狙いました。

谷:炭酸があるだけでライトなアルコールの雰囲気が出ますもんね。

安:炭酸があるとそれだけでガシッとした味わいが出るし、刺激もありますから。一緒に作っているソムリエさんともいつも“ お酒入れたいよね” っていう話にはなっちゃうんです(笑)。ノンアルコールだと余韻が出しづらいからこそ、タンニンとか、酸味が大事になるんです。

アルト・アルコ 代表 安藤裕
谷:先ほど、副原料としてのお茶の話が出ましたが、よりお茶を前面にだしたモクテルだとどういうものが考えられますか? お茶が持っている旨みは、酸味とぶつかりそうな気がします。

安:そうですね。お茶に関していえば、レモンとかそういう分かりやすい酸味とはぶつかりそうですが、フレーバーティーの考え方で、例えばハイビスカスティーの酸味などには合いますよね。

谷:なるほど。お茶生産の話になってしまうんですが、今は甘みと旨みを詰め込むのが主流になっています。でもそれは食卓に求められているのかと感じることもあります。
より香りがいいとか、渋みがごはんに合うとか、お茶をペアリングすることにフォーカスしたものがあってもいいなと。

安:ドリンク全般に言えることですが、単体で輝く場合と、食中で輝く場合とがありますよね。お茶の場合は単体で輝かせようとしているのかもしれませんね。飲んだときに“ うわ、おいしい” という気持ちを引き出しやすいですから。

谷:ノンアルコールドリンクを扱う立場として「こういうお茶が作られるといいな」というリクエストはありますか? 旨みを出さない方が、香りがのりそうだなとか、どこかを引き算すると使いやすくなるのかなと思って。

煎茶堂東京 取締役兼デザイナー 谷本幹人

安:どこを活かすかですよね。赤ワイン系に仕立てるか、白ワイン系にするかでもまったく違います。だから様々な味わいのものがあるのはやはり有難いのかもしれません。

ストーリーも一緒に味わうもの

安:お茶でもノンアルコールドリンクでもそうなんですが、どれだけ“話のネタ”になれるか、深掘りできるか、が重要という気がします。

お茶はそれこそ、深掘りしようと思えばどこまでもできますよね。どれだけいろいろなことを想像させてくれるのか。お酒の持っている色気ってそういうものじゃないかなと思うんです。どういう土地で生まれて、どういう作り手で、というストーリーも一緒に飲んでいる。

谷:僕たちもお茶に情報を積載して販売していますしね。安藤さんが取り扱っているノンアルコールドリンクと、いわゆるノンアルビールみたいなものとの違いは、そこかもしれない。

情報やストーリーを知りたいと思わせる深みや情報を、送り手は発信していくべきなのかもしれないです。

安:そうですね。そういうことを知って飲むのと、知らないで飲むのとでは、やはり全然楽しみが違うと思います。

谷:今後国内のノンアルコールドリンクの動きはどうなっていくと思いますか?

安:まだまだ伸びていくと思っています。海外では数百ブランドがあり、まだ日本には輸入規制の問題でほぼ入ってきていないものの、国内の造り手も想いを込めて新しいものを作ろうとしている。このライブ感も、ノンアルコールドリンクの魅力だと思います。

アルコール好きでも驚くような美味しいものもあるので、未体験の人にもぜひトライしていただきたいです。

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