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「少数民族の手工芸品を伝えることは、単なる文化の保存ではなく、貴重な知恵の継承」mrak・山﨑幸さんインタビュー Vol.2

2025年02月14日

by 煎茶堂東京編集部

アジアの少数民族が伝統的に紡ぐ手工芸品に光を当て、その価値を新たな時代へ継承する試みを続けるブランド・mrak(ムラック)。

今回、煎茶堂東京でmrakの作品をお取り扱いするにあたり、代表の山﨑さんに、ブランドの信念や、少数民族の伝統的なものづくりに対する想いなどを伺いました。

Vol.2では、mrakというブランドの理念、少数民族の伝統文化を伝えることの意義、今後挑戦していきたいことなどを伺っていきます。まだVol.1を読まれていない方は、ぜひあわせてご覧ください。

Vol.1はこちら

ヒマラヤに自生するAllo。この状態から繊維が取り出され、編まれ、製品となる。(Photo:mrak)

少数民族による民芸品が数多くあるなか、取り扱うアイテムをセレクトするにあたって大切にしていることや、セレクトの基準などがあれば教えてください。

選定するにあたって、特定の民族や国といった生産地にとらわれないよう心がけています。その代わりに、3つの観点を重視しています。

① 非営利的な生産から生まれる本質的な美しさ
② 文化的価値
③ 現代における新たな価値の創造可能性

まず、①について。私たちが特に価値を見出しているのは、古来より自民族の暮らしのために作られてきた品々です。長年の暮らしのなかで培われてきた伝統的なデザインは、その民族固有の文化的アイデンティティを体現しています。こうした品々には、生産性や合理性を超えた精巧な美しさが宿っているのです。

現在、商品として広く流通している製品にも、その起源をたどれば、かつて自民族の生活に根ざした道具として生産されていたものが数多く存在します。

次に②です。上記の非営利的な生産活動によって生まれた品々は、その民族を理解する上で重要な文化的資料としての価値も持っています。単なる商品にとどまらず、民族の歴史や価値観、美意識を現代に伝える、貴重な文化遺産としての側面も持っていると言えるでしょう。

Alloを加工する人々(Photo:mrak)

最後に③。現在、少数民族の手工芸品は、さまざまな課題に直面しています。主なものを挙げると、市場の開拓不足、生産・品質の不安定さ、後継者不足などです。どの国においても、都市化や生活様式の画一化が進み、伝統的な暮らしや価値観が急速に変化しています。

現代的な「豊かさ」を求める次世代の若者たちが村を離れるようになり、貴重な物質文化は年々失われつつあるのが現状です。

このような状況において、私たちは特に「まだ光の当たっていない」手工芸品に注目しています。潜在的な価値を持ちながらも、世間に十分認知されていない手工芸品を積極的に発掘し、その価値を高めていく挑戦です。

それは、単なる商品の発掘・販売ではなく、将来消えゆく恐れのある貴重な文化的価値の保存であり、その価値をアップデートすることで、次世代への継承を試みる挑戦でもあります。

Allo 繊維(Photo:mrak)

mrakのブランド理念には、「日本で培った感性と美意識を通して現代の文脈で再解釈していく」という一節があります。
山﨑さんが少数民族の育んできたものを再解釈するにあたり、大切にしている「日本ならではの感性や美意識」とはどのようなものでしょうか?

私が日本の美意識として特に大切にしているのは、繊細さと謙虚さの調和のなかに確かに存在する、洗練された美しさです。余白が醸し出す奥深さや、華美な装飾に頼らず、内側から静かに輝くような素朴な美しさに価値を見出しています。

こうした美しさのなかで培ってきた審美眼を通して、少数民族の方々が育んできた文化や手工芸品を見つめ直し、現代に伝えていきたいと考えています。

アジアの山岳地帯に住む少数民族の伝統的なものづくりや文化を、後世に残していくことの意義は、どのような点にあるのでしょうか。

先ほどお話ししたように、どこの地域でも都市化や生活様式の画一化、電波の普及が急速に進んでいます。少数民族の若者の間では、豊かさの概念が変化しつつあり、長年受け継がれてきた貴重な物質文化は存亡の危機に直面しています。

しかし、彼らの持つ伝統文化や物質文化は、長年の自然との対話で育まれてきた「自然の叡智の結晶」です。彼らの伝統的な人生観や暮らしのなかには、現代社会に生きる私たちが見失いつつある、人間が生きることの本質が息づいています。
だからこそ、これらの美しき文化を次世代に継承していくことには、深い意義があると考えています。単なる文化の保存ではなく、自然との調和や本質的な豊かさといった人間本来の営みを、私たちに思い出させてくれる貴重な知恵の継承ではないでしょうか。

お買い求めいただいた方が実際に使う際、感じてほしいことや考えてほしいことがあれば教えてください。

私たちがお届けする手工芸品は、それぞれの土地に自生する植物を生かし、古来より受け継がれてきた原始的な手法によって生産されています。実際に触れていただくことで、自然がもたらす健やかさや叡智、そして本質的な豊かさについて、思いをめぐらせていただけたら幸いです。

Allo 工房への道のり(Photo:mrak)

最後に、少数民族の伝統的なものづくりを継承するため、今後新たに取り組みたい企画やチャレンジしたいことはありますでしょうか。

今後の展望として、大きく2つのプロジェクトに挑戦したいと考えています。

1つ目が、海外での展示会の開催。日本人である私たちmrakの目を通して選んだ手工芸品の魅力を、より広く世界へ発信していく機会を設けたいという考えです。

2つ目は、少数民族の方々の暮らしと技術に焦点を当てた、より深い文化理解を目的とする展示会の企画。単に販売するためのものではなく、その文化への関心と理解を深めていただくことに主眼を置いた企画です。

具体的には、少数民族の日常生活や手工芸品の生産工程を紹介する道具の展示、職人の方々を日本へお招きしての製作実演、公開インタビューの実施などです。こうした展示を通して、製品を購入する以外の形で、皆様に広く文化に触れてもらう機会を設けたいと考えています。

そして、将来的には美術館や博物館での開催も視野に入れた、より本格的な文化発信の場を設けることが、私たちの大きな目標です。

mrakの作品

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