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「少数民族の手工芸品は本質的な『豊かさ』を思い出させてくれる」mrak・山﨑幸さんインタビュー Vol.1

2025年02月14日

by 煎茶堂東京編集部

アジアの少数民族が伝統的に紡ぐ手工芸品に光を当て、その価値を新たな時代へ継承する試みを続けるブランド・mrak(ムラック)。

今回、煎茶堂東京でmrakの製品をお取り扱いするにあたり、代表の山﨑さんに、ブランドの信念や、少数民族の伝統的なものづくりに対する想いなどを伺いました。

山﨑さん、今回はよろしくお願いします。まずは、簡単なご自身のプロフィールと、mrakの成り立ちを教えていただけますか。

よろしくお願いします。mrakは、2019年4月に福岡で誕生したブランドです。創業時から、東南アジアの少数民族の人々が育んできた物質文化に焦点を当てて、活動を展開してきました。

特に深い関心を寄せていたのが、伝統的な装身具。私自身、伝統的なデザインを現代に復刻したシルバージュエリーやオリジナルアクセサリーの制作を手がけながら、何度も現地を訪れ、文化に対する理解を深めてきました。

ヒマラヤの朝霧。山景と村(Photo:mrak)

2021年、活動の拠点を佐賀との県境に位置する山間部へと移しました。より自然に近い場所で暮らすことで、私たち自身も、心と感性を豊かにしながら活動を続けられています。

2023年には、活動の幅を大きく広げ、東南アジアからヒマラヤ地域へとフィールドを拡大しました。同時に、装身具だけでなく、民族の日々の暮らしに寄り添う生活道具にも視野を広げています。本格的に手工芸品の取り扱いをスタートしたのも、このタイミングです。

そして、2024年秋から、夫が事業に正式に加わり、夫婦二人三脚での活動が始まっています。

今回お取り扱いする「Allo」の手工芸品は、ヒマラヤの少数民族によって加工されたものです。山﨑さんが、アジアの山岳地帯に住む少数民族の伝統的なものづくりに、関心を持ったきっかけを教えていただけますか。

私が23歳の時に出会った、純度95%以上の高純度シルバー製14面体ビーズが、すべての始まりでした。山岳民族という言葉すらよく知らないなかで、このビーズが、タイ北部に暮らす少数民族・カレン族によって製作されていることを知りました。

これをきっかけに、書籍による調査や現地視察を重ねていくなかで、過酷な自然環境のもとに身を置く少数民族ならではの美意識や精神性、文化に触れることとなります。それは「自然の叡智」そのものだと感じるとともに、奥深さに魅了されて、現在に至ります。

ラオス南部タリアン族の村にて。竹細工品が燻されている様子。(Photo:mrak)

これまでに少数民族の方々と繰り返し交流されてきたなかで、特に印象に残っている現地の方々の言葉や体験について教えてください。

2024年、ラオス南部に暮らすタリアン族の村を初めて訪れました。彼らは、今もなお山間部で自給自足の暮らしを続けています。この訪問で体験した出来事は、私の価値観を大きく揺さぶるものとなりました。

最も印象的だったのが、私たちが現地パートナーとともに持参した豚肉に対する、村人たちの反応です。私たちは「これを一緒に食べることで交流を深められる」という考えで、豚肉を持って行ったのですが、村人たちは誰一人として手を伸ばしませんでした。

彼らは、代わりに自分たちが育てた野菜と米だけのシンプルな食事を、家族全員で円卓を囲みながら静かに味わっていたのです。

彼らは、日の出とともに畑へ向かい、夕暮れとともに帰宅します。そして、当日採れたばかりの野菜と米を家族で分け合い、明日への英気を養います。彼らの生活を観察していると、このシンプルな生活リズムのなかに、確かな充足感が漂っていました。

タリアン族の竹細工職人(Photo:mrak)

もう一つ興味深かったのが、彼らの伝統工芸である竹細工への姿勢です。職人たちは、時間や労力を惜しまず、ひたすら作品と向き合っています。生産性や効率性の追求とは無縁の世界にある彼らが生み出す籠や円卓は、驚くほどの精巧さと美しさを備えているのです。

私たちは、インフラの整備や物質的な充実を「豊かさ」の基準として捉えています。しかし、タリアン族の人々は、必ずしもそうした「豊かさ」を求めていません。

むしろ、資本主義的な価値観から意識的に距離を置くことで、自分たちなりの自由と幸せを得ているように見えました。必要最小限の物で満足し、「足るを知る」精神を実践する彼らの姿は、現代社会に生きる私たちに重要な問いを投げかけているように感じます。

この経験を通じて、私は「物を作る」という行為の本質や、「豊かさ」の多様性について深く考えさせられました。効率や生産性ばかりを追求するなかで、私たちは何か大切なものを見失っているのではないか、と。そんな気づきと学びをもたらしてくれた出会いでした。

少数民族の方々との交流を通して、現代社会に生きる私たちにとって、本当に大切なものに気づかされたという山﨑さん。vol.2では、「mrak」の理念や意義、今後挑戦していきたいことなどを伺っていきます。

お楽しみに!

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