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作り手のことば「作り込みすぎない。その塩梅をどこで止めるかが重要」陶芸家・中村豊実さんインタビュー
2022年01月27日
by 神まどか
煎茶堂東京・東京茶寮/デザイナー 青森県生まれ。最近の趣味は中国茶と茶道具収集です。
どこか切なげで、儚い。柔らかな雰囲気をまとっているように見えて、その内側から眩いくらいの光を感じる中村豊実さんのうつわ。
今回は、そんな作品作りに対する向き合い方と、“変化していくこと”について伺いました。
中村豊実さんについて
1961年滋賀県長浜市生まれ
37歳で脱サラをし、ダイニングバーを始める。
2年後、ギャラリーを併設しバーからイタリアンレストランに変え、『季の雲(ときのくも)』として再スタート。レストランで使用する器を作り始める。
現在は、レストランをギャラリーに変更し、食器、耐火鍋、中国茶器などを陶器で制作している。
まずは、中村さんが器作りを始めたきっかけを教えていただけますか。
器づくりの前に、実は37歳の時に脱サラして、ダイニングバーを始めたんです。そこからギャラリーを併設したイタリアンレストランに変えていったんですが、レストランでは割れたり欠けたり、常に食器の破損が起こります。
器の破損は売り上げにも直結してくるし、なんとか“欠けにくい器”を作れないかと思って自分で作り始めたのがきっかけです。
今はレストランだった建物を展覧会場として、併設した二階建ての方で常設展示などをして運営しています。
「欠けにくい器」を作るためには何が必要なのでしょうか?
器の縁は丸みを帯びるように成形することを心掛けています。今は、そのタイプばかりを作っているわけではなく、縁にエッジを効かせてシャープな板皿を作ったりもします。
僕は、何事も理屈ではなく感覚で動くタイプの人間ですので、その時にいいと思ったことを形にしていますね。
なるほど。シンプルな形だからこそ、作品を作る際、どんなインプットを経ているのか気になります。
僕の場合は、古いものを見たり触れたりすることでしょうか。
明確に表現するのが難しいですが、長年使われてきた古物をしばらく見たり触ったりしていると、自然と身体に染み込んだものが、ある日本人も気づかないうちに器に現れてきたりする……。そんな感覚なんじゃないかなと思います。
中村さんが作品をつくっていて一番気分の上がる瞬間はどんなタイミングですか?
作りたい形がパッとひらめいた時は、もう、すぐに作りたい気持ちになります。
レストランで使う器を作るというところから始めたので、こんな料理に合うなと考えたりします。「白八角鉢」は、煮物や和え物などにちょうどいいと思いますね。小鉢のイメージですが、深さがあるので、関西では「とんすい」と呼ばれる汁物にも対応できるんじゃないでしょうか。
「茶海・円柱・白」は、口が少しひらいた形ですので、手に持った際に熱さをダイレクトに感じずに済むので使いやすいかと思います。茶器を作るのも楽しいですよ。
「輪花茶杯」は、轆轤成形にはない手あとが感じられるところが気に入っています。ひとつひとつの形が微妙に違っていて、並べたり重ねたりするとまた見え方が変わってくるんです。
中村さまの作る“白”への思い入れはありますか?
茶湯の色がはっきりと見えるので、茶器は白が多くなりますね。落ち着いた雰囲気があるので、照りのないマットな白が好みです。
ただ、今後も白の釉薬は変化していく可能性があります。やっぱり、その時にいいと思ったものを作りたいと思っているので、ずっとこの釉薬を使うとは限りません。
中村さまの「うつわ作り」に対するポリシー・思想はありますか?
料理など受け入れるモノの邪魔をしないシンプルなものを目指しています。技術が上がると、作りすぎることがあるんですよ。
作りすぎるというのは、要するに「作り込みすぎる」ということです。李朝の器に惹かれたのがきっかけだったと思いますが、古い器を見たり、他の作家さんの器を見るうちに、シンプルなものは飽きがこないと確信したことが大きいと思います。
作り込みすぎない。その塩梅をどこで止めるかが重要と考えています。
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