- 読みもの
- お買いもの
- TTJ
- 東京茶寮
- 私達について
-
作家名一覧
- 煎茶堂東京
- 小野陽介
- 高木剛
- 森岡希世子
- 石田誠
- ちいさな手仕事
- 光藤佐
- 須原健夫
- 淡海陶芸研究所
- 千田稚子
- 中村譲司
- 北井里佳
- 齋藤有希子
- 酒匂ふみ
- 秀野真希
- 林沙也加
- 作山窯
- 中里花子
- 村田匠也
- 荒賀文成
- 水野悠祐
- 南裕基
- 只木芳明
- 色原昌希
- 小宮崇
- 飯高幸作
- 色原昌希
- 三輪周太郎
- 横山拓也
- 亀田文
- 亀田大介
- 中村豊実
- 高橋禎彦
- SHISEI
- 松徳ガラス
- 村上雄一
- 黒川登紀子
- YŌKI
- 加藤かずみ
- 瀬戸國勝
- 阿部春弥
- シャンブリートリオ
- 入江佑子
- 三野直子
- 古谷宣幸
- 渡辺キエ
- 後藤睦
- 三浦ナオコ
- 濱岡健太郎
- 山田哲也
- WASHIZUKA GLASS STUDIO
- 李荘窯
- おじろ角物店
- 船串篤司
- はなクラフト
- 光泉窯
- 萩原千春
- 藤村佳澄
- 中原真希
- 堀宏治
- 広末裕子
- 文山窯
- 伊藤萠子
- 竹下努
- 角田清兵衛商店
- Eliu
- 紙上征江
- 天野千香
- 相馬佳織
- 四十沢木材工芸
- 水野悠祐
作り手のことば「日々を豊かに生活する中にアートがある」陶芸家・中里花子さんインタビュー
2022年01月14日
by 神まどか
煎茶堂東京・東京茶寮/デザイナー 青森県生まれ。最近の趣味は中国茶と茶道具収集です。
キリッと、軽やか。でも源に感じるのは、優しさと力強さ。手に取ると、まるで大地に寝転んだときのような気持ちよさを覚える中里花子さんの器たち。
佐賀県唐津市とアメリカで作陶する中里花子さんが考える器のあり方について、そして作品が生み出される時のお話について伺いました。
中里花子さんについて
佐賀県・唐津に育ち16歳で単身渡米、以後半生をアメリカで過ごす。
日本の独特な食文化に目覚め大学卒業後帰郷し、父・中里隆より陶芸を学ぶ。2000年 東京・万葉洞での親子展開催を皮切りに、以後日本、アメリカ各地で数々の個展を開催する。
2007年 故郷・唐津に独自の工房monohanakoを設立。
2010年 メイン州にmonohanako Westを設立。現在、唐津とメインを半年ずつ行き来して作陶している。
中里さんは普段、佐賀県・唐津とアメリカを行き来して活動されてるんですよね。今活動されている二拠点について教えていただけますか。
そうですね……私、最近この歳になってサーフィン始めたんですよ。サーフィンが有名な場所だと、初心者なんかが出る幕ないみたいな感じだと思うんですけど、唐津はサーファー人口少ないので、海にただ1人だけっていうシチュエーションもあって。
それは贅沢ですね!
あと、魚とか食べ物も美味しいですし、人間関係もそんなにせかせかしてないしっていうのはいいことですね。
アメリカは行けてないからすごい恋しい。私はアメリカでも田舎のメイン州ってところに住んでるんですけど、あそこはすごい広いし、雄大だし、自然が豊か。そんな風景を目の前にすると、自分がもっと謙虚になれる気がします。
日本とアメリカの往復をしていいと思うのは、お互いの文化を客観的に見れることですかね。
私は集中すると周りが見えなくなるっていうことがよくあるんですけど(笑)、場所を変えたり文化を変えることで、自分自身のことを客観的に見れるっていうのは、ものづくりにもプラスになることだし、人間としても大事なことだと思ってます。一歩下がって見えるというか。
なかなか普通に暮らしてると自分を客観的に見るっていうのはできないですよね。
そうですね。あとは、やっぱりアメリカに行けなくなって行動範囲が狭くなったことで、それまでは基本個展をして作品を販売してたのを、急遽オンラインで販売するようになりました。
2021年のゴールデンウィークぐらいですかね。家での生活を充実させるために器を買ったり…というブームがあったように感じます。私たち作家の作品は一点ずつ手づくりだから、オンラインで表現して伝わるかな?と思ってたんですけど。
その一点ずつの歪みが愛おしいと思います。
そういう風に感じていただければ、作り手としてはそれがありがたいです。むしろそこが手づくりならではの良さだと思ってるんです。
器も、ひとつひとつ表情が違って人間味があるというか……。人間だって誰1人同じ人がいないように、器もわざと違うように作らなくても、生まれてくるものってやっぱりみんな違うんですよね。
日々のリズムもあるし、原料も有機的なもので作られてますよね。土も釉薬もそう。だから当然微妙に成分が違ったりもしますし、表情も微妙に違ってくるものなんです。
私は無理に同じものを作ろうっていうのをゴールにしていなくて、違うものは違うでいいかなぁって。それを個性としてポジティブに認めてあげたいと思ってるんで、お客様にもそれが伝わればいいなと思っています。
私たちもシングルオリジン煎茶を販売していて、毎年同じ方が同じ場所で作った同じ品種でも味が違うことがあるので、わかります。
同じものを作ろうとすると大変かもしれませんが、その時にしかない味になるのは面白いですね。
中里さんが陶芸家としてになったきっかけを教えていただけますか?
うちの親が焼き物をやっているのですが、私は家を継ぐっていうポジションにいなかったので、誰からも期待されてなかったことなんです。私もむしろやりたくないと思ってたほうなんですよ。
16歳の時にアメリカに行ったんですが、それも元々はテニスがきっかけでした。でも後からデザインとかアートとかのほうに興味が出てきて、少し勉強してるうちに日本人ということに対してのアイデンティティを意識し始めたんです。
アートに対する考え方も、日本では工芸って美術として同じようにアートと同じレベルで捉えられているんだけど、西洋ではあんまりそこはちょっと下に見られてるふしがあるんですよ。私、それは違うんじゃないかなと思って。
その辺りで私は、“日々を豊かに生活する中にアートがある”っていう文化で育てられたってことに気づいたんです。
それは親が焼き物をやっているのを身近でそれを見ていたからなのかなと思うんですけれど。私はそういうことをやりたいと漠然と思ったのがきっかけですかね。
頭で考えるアートよりも、体の中から出る日々の生活のリズムが出てくるようなものを作ってみたいなと思って、それって焼き物だ!って。
身近にもともとあったものに気がついた。
そうです。やってみるとまあ自分の性格とかにも合ってたんですよね。でも実は、きっかけっていうよりも、それしか他に何も無かったというのもあります。
その頃ちょうどビザの問題にも直面して。ビザを取ろうとすると、アメリカには無い特殊技術を求められるんです。
日本人だと寿司職人が一番手っ取り早いやり方なので、割と皆さん寿司職人とかに進んだりもされるんですけどね。最初はなんとかしてアメリカに残りたいっていう気持ちで、そんな不純な動機でもありました。
そうでしたか…!インスタグラムでも拝見しましたが、中里さんの器づくりをしている様子はすごく生き生きして見えます。
もともとアスリートだったので、体を使って数をさばいていくみたいなリズムがすごく心地よくって。
陶芸って結構いろんなプロセスがあるんですけど、ほとんど体を使うことなんですね。それによって、自分がレスポンスしていく“ライブ感”がある仕事なんですよ。私なりの解釈では、陶芸はスポーツに似てるなぁと。
スポーツ。
直感ともまた違うんですけど……頭で考えてたら間に合わないっていうか、その時の土のコンディションの見極めもそうですし、ろくろもリズミカルにやらないといけない。
実は料理と似たようなとこがあって、素材感を出すには手際よくチャチャッとやらないといけないんですね。これはこうじゃなかろうか?とか考えてやってると繊細な味は出せない。
例えばまっすぐな線を引くときに定規をあてて引くより、ギュッと思い切って引いたほうが気持ちが伝わるっていうのあるじゃないですか。
ありますね。
そういう「勢い」とか「リズム」っていうのが大切にしているキーワードなんですけど、土って生き物なので、それをナチュラルに伝えていけたらなっていうのがありますね。
だから、例えば『エッグボウル』や『バンブーカップ』とかは、自然界の中にある曲線や姿にすごくインスピレーションを受けてるんです。なんでそんなに惹かれるのかっていうと、やっぱり線や骨格にそういった勢いやしなやかさがあるから。そういう風に私もなりたいとさえ思います。
ちなみに、『エッグボウル』は、丸いボールを作ってから、柔らかいうちに縁を手でヒュッと押さえて作るんです。
包み込むように。
はい、型を作って取るんじゃなくて。そうして手で作ると、自然な“たわみ”が生まれて、横から見ると柔らかなカーブができあがるんです。そんな自然な形っていうのがすごく美しいなと思っていて。アブストラクトな言い方なんですけど、そんな感じです。
あんまりわざとらしいと作家のエゴが強すぎて、使う方が気負いしちゃうようなのは嫌なんですけれど。やっぱり使ってる人には気持ちよく、空気みたいな存在を感じてほしいと思います。
自然界の美しさを落とし込む作品は美しいですね。
そうですね。
私、本当にアウトドア好きで、暇さえあれば本当に山登ったりとか海で泳いだりとかしてるんですけど、自然の中で造形を見て、私なにやってるのかなってたまに思うときあるんですよ(笑)。絶対勝てないなぁって。
そういうものを見て感じるときの気持ちってすごく満足感があるので、そんな気持ちをシェアしたいです。
なにが気持ちいいとかは人それぞれなので、そこはあんまり押しつけがましく言いたくないけど、そういうのを共感していただければ嬉しいなと思います。
中里さんが作品を作っていて、一番気分が上がる時ってありますか?
やっぱり一番フィジカルなろくろの「水引き」という作業でしょうか。大きい土の塊をろくろで土取りをしてヘラで伸ばしたり、指先でのばしたりしてやってる作業が気持ちいいですね。
一応頭の中ではこれを何個作ろうっていうのはあるんだけど、いったんスイッチ入ると結構なにも考えてないんですよ。
無というわけではないんだけど、そこには自分の手と土があって、それが回って、身体がレスポンスして形ができあがっていくっていうのが気持ちいいというか……ノリがいいときはそういう感じですね。
私はハウスミュージックが好きで、作業中に大きい音で流してるんです。ジャンルで言うとディープハウスって呼ばれる、言葉も少なくインストルメンタルで、ビートとリズムだけが流れるように運ばれていく音楽ですね。そういう曲を流して、ハイな状況で作ってるときもあります。
いわゆる、ゾーンですね。
まずはトランス状態から。
ダンサーとかもそういうところあると思うんだけど、中心の軸が取れてないとグニャグニャになって回れない。それは物理的な中心でもあるんだけど、精神的な中心でもある。
私は座禅とかは組まないんだけど、座禅をやってる人はたまにそういうことを言っていて、ろくろやってる気持ちと似てるかもと思います。
陶芸教室に1回だけ行ったことがあるんですけど、本当に難しいですね。
やっぱり、そう簡単に、すぐに思い通りにはできないもんですよ。土を触っていてヒヤッとする質感とかヌメヌメする質感とか、回ってるものに対して自分を合わせるっていうのが結構没頭しやすいポイントかもですね。
確かに手で直接泥を触っているという感覚も気持ち良かったです。
すごいダイレクトですからね。ダイレクトに触るのはやっぱり陶芸ならではです。押せば引っ込むし、引っ張ると伸びる。
さっきも話に出ましたが、土自体がすごいレスポンスしやすいマテリアルなので、素早くやっていかないときれいな流れにならない。
私の器はそんなライブ感をまっすぐ伝えられるような、「今の私はこういうのをレスポンスしました」っていうのをそのまま伝えられるようなものを素直に作りたいと思っています。
関連記事
-
【GIFT OF NEW YEAR】年末仕様の特別なギフトセット◎人気の作家の茶杯2点+お試しサイズの4g茶葉をコットンバッグに詰めてお届け
2023年12月15日
-
〈Styling_01〉茶と道具展 vol.01 ハレの器展示作品一覧
2023年11月30日
-
作り手のことば「毎日たくさん使うことで、“育つ器”に」木工作家・山田哲也さんインタビュー
2023年04月14日
-
陶器やガラスと組み合わせたい。山田哲也さんの木の器
2023年04月13日
-
朝のひとときを豊かにしてくれるもの。後藤睦「パン木皿」
2023年03月31日
-
中里花子さんの作品一覧
2023年03月28日
-
和にも洋にもなじむ懐の深さ。亀田文さんの愛らしいカップ
2023年03月24日
-
お家の中でも外でも大活躍! 後藤睦「nobo」
2023年03月10日