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作り手のことば「すごく綺麗なものよりも手仕事の跡が残るのがいい」木工作家・南裕基さんインタビュー
2022年02月10日

by 神まどか
煎茶堂東京・東京茶寮/デザイナー 青森県生まれ。最近の趣味は中国茶と茶道具収集です。
シャープな線と手仕事の温かさが同居する南裕基さんの木工作品。
今回は、木工作家として活動を始めたきっかけや、作品づくりのインプットについて伺いました。
南裕基さんについて
京都府舞鶴生まれ
2012年 木工を学ぶ
2016年 愛知県蒲郡で木工作家として活動中
まずは、南さんのプロフィールを教えていただけますか?
はい、生まれは京都で、舞鶴という京都でも北のほうです。大学で愛知県に来て、木工とは全然違う分野に進んだんですが、途中でものづくりがしたいと思って2012年に岐阜県の高山で木工を学びました。
そこは家具とか時計、文具のような小物とかを作るような木工会社で、制作しながら学ぶ工房だったんです。
だけど家具だと高価ですし、あまり身近に感じられなかったというのがあって、少し頑張れば大学生や若い子でも買えるようなものがいいなというところから、食器類を中心にしようと思って、2016年から蒲郡で制作しています。
なるほど。なぜ蒲郡に移住を決めたんでしょうか?
制作するにあたっての条件が合ったというのが移住を決めた理由ですね。木工なので音が出たりとかするし、あまり街中ではできないというのがあって。だけどどこでも良かったってわけではないんです。
僕が育った舞鶴は海や山がある自然が豊かな地域なんですけど、蒲郡もやっぱりそういう地域なので心のどこかで落ち着いたっていうのもあるのかもしれません。
いくつかいいなと思う物件の中で今の場所を選んだんですけど、結構田舎の地域なので、街中では生まれないような人間関係とかがあって、人同士が近い関係なんです。それも面白いなと思いながら、地域活動にも参加しながら生活してますね。
2016年からこの場所で活動し始めているんですけど、最初はクラフトフェアとかを中心に出していて、今は少しずつお店との付き合いが増えてきました。
最近はコロナ禍というのもあってそういうクラフトには参加できなくなってきたんですが、お店での展示会とか販売を行ってます。
もともと大学では何を学ばれていたんですか?
大学は福祉系の大学で、就職先も子どもと関わるのが好きなので児童施設にしました。そこで働いてて、子どもに触らせるなら何がいいかと考えて、木に着目したんです。
リハビリで触るのにも木がいいんです。だから素材を色々試してみたんですが、やっぱり木だと匂いもあるし、手触りもいいというので木工にしようと決めました。
今はそういう子ども向けのなにかを作るっていうのができてないんですが、いずれはそういう方向に持っていきたいなと思っています。
子ども向けの木工作品楽しみです。先程の話でもありましたが、南さんの作品は手に取りやすい価格帯だなと感じます。
工業製品に比べれば割高ではあると思いますけど、それでも無理な価格帯ではないと思うので、使ってもらえる方が広がっていけばいいなと思ってますね。
作品の形など、どこからインプットを得ているのかが気になります。
基本的に生活してる中でアンテナに引っかかったものや気になった形を昇華させています。例えば建築物なんかで「この線かっこいいな」と思ったら一度持ち帰って挑戦してみる。
だけどそれをそのままお皿にできるかっていうと、できない。一度は形にしてみるんですよ。でもちょっとなんかおかしいなと思って、もう1回作り直してっていう調整を重ねて最終的には形にしていくんです。
しずく型の茶さじは、もともとは柄がついてるやつだったんですよ。スプーンを短くしたような感じ。だけどそれじゃ普通だし、面白なくないなというのもあったので、1回作り直しました。
柄を取ってみようと試してみたら、スプーンの先だけの形になって、それだとまだ形がおかしい。じゃあちょっとスリムにしてみようかなというのが続いて、最終的にあの形になって、しずくのような形になったので「しずく」という名前をつけてます。
茶さじって、入れ物の中にそのまま入れておいたりするじゃないですか。
はい、しますね。
そういう意味でも入れやすいサイズかなっていうので、ちょうどいいかなと思ってます。あの茶さじはかなり厚さを薄くするんです。
僕は特別お茶に詳しい訳ではないんですが、少し中国茶に興味を持ってから、台皿だったりとか茶さじだったりとか、お盆にしてもそうなんですけど、派生して作っているものがいくつかありますね。
自分で使ってみたいと思ってイメージしながら、こういう感じで置いてやるとかっこいいかなと思って作っているものが多いです。
作品の形は、神社とか寺とかそういう建物も好きなので、そういうところに使われている部品などを作品に落とし込んだりしています。それ以外にもインプットする場所はありますが、そんな感じですかね。
隅切り盆のディテールを見ていて、あのような線はいつもどうやって考えてるのかと思っていたんですが、今のお話を聞いて納得しました。
それでも1回作るだけではあの形にならないので、何個か作っていくうちに今の形になっています。
初めて作るものって自分の手も慣れてないのであまりうまくできなかったりするんですけど、何個か作っていくと少しずつ精度上がってくるので、それで今の形になっています。
ちなみに木工作品を作るときはどういうプロセスで作っていってるんでしょうか。
材料は丸太を縦にスライスしたようなものです。それを、お盆の場合はその厚みまで削ってカットして、内側のへこんでいるところを削って、それで大まかな形が完成なんですよ。あとはもう全部手で整えていくって感じですね。
手仕事の風合いも残したいので、すごく綺麗なものを作りたいっていうよりは、綺麗でもありつつ、手で作ったあとが残るのが僕はいいと思っていて。だから全部微妙な違いがあっていいと思ってます。
茶托は削った跡が見ても触っても面白いですね。
あれは全て掘ってるので、面白みはあるかなと思いますね。茶托なんて小さい作品ですけど、やっぱり同じ材料でも全部木の個性があります。中には個体差で彫りづらいものもあるんだけど、それも一つの面白さを考えながら。
今回は煎茶堂東京さんに楓やクルミなどいくつか木の種類が違うものを注文していただいてますが、どれもわずかに表情が違うので並べてみると面白いかなと思います。
使い込んでいくとまたどんどん変わっていくものですか?
変わってきますね。木によって変化の度合いや表情がどんどん変化していきます。漆は黒く塗っていますが、使えば味がでてくるのでそれも楽しんでいただけたら。
隅切り盆のこだわりポイントはありますか。
ぽこっと膨らんでいる縁は4ミリの厚さにしていますが、それが5ミリとか6ミリでは全く違う雰囲気になってしまうので、色々試して最終的に4ミリがバランスのいい感じになりました。そこはこだわって試作しましたね。1ミリの差が表情をガラッと変えてしまうんですよ。
幅がありすぎてもちょっとかっこ悪いし、細すぎても装飾がよく分かんなくなるので……ちょうどバランスを見て。
あとは表面の彫り目はそれぞれ違うので、そういうのも見てもらえると木という素材ならではの魅力を味わっていただけるのではないかと思います。
個人的に、隅切り盆のテーブルに接する面と立ち上がりの削ぎ落とされてるディテールが好きです。フラットに削ぎ落とされた部分と表面の彫り目のニュアンスが全く違うので、一つの作品でふた味楽しめると思っています。
ありがとうございます。
あと、茶托は中国茶の茶杯をのせられるといいなというので最初作っていました。だけどお客さんはそれぞれの使い方をしてくださっていて。豆皿みたいに使ってくれている方もいて、すごいいいなと思って見てますね。
木ではない違う素材を合わせるのはいいなと思ってて、だから煎茶堂東京さんでガラスと合わせてくださっているのはすごくいいなと思います。単体で使ってもらってももちろんいいんだけど、何個か並んでいても見栄えがするかなと思いますね。
南さんが作品を作っていて好きな工程はありますか?
そうですね。ざっくりとした形は機械で作るので、淡々とした作業なんですけど。だけど“のみ”や彫刻刀などを使って形を整えたりしていく段階っていうのは、少しずつシルエットが完成に近づいてくるので面白いですね。
もちろん完成して蜜蝋塗ったりとか漆を塗ったりして仕上げている途中の作業も楽しい。
新しく考えて作ったものが形になるっていうのが一番面白いところで、それがしっくりきた瞬間はたまらないです。もちろんしっくりこないときもいっぱいあって、きっとそれがより大きな喜びに繋がっていると思います。
木工作品のお手入れはどのようにしたらいいですか?
電子レンジ、オーブンや食洗機などは基本的に使用できません。
蜜蝋に亜麻仁油とかを混ぜて作ったものを仕上げに塗っているんですが、洗ったりしていくとすぐに落ちてくるので、どうしてもカサついてきたりとか、白くなってきたりしてしまいます。
お客さん自身で蜜蝋を塗るかそれに類似したもの、口に入るものなので基本的にはクルミのオイルとか亜麻仁オイルとかがいいとは思いますけど、それを塗ってもらえるとお手入れとしていいかなとは思います。
ただ油によっても乾かない油、例えばサラダ油とかは塗って綺麗にはなると思いますけど、ベタベタにもなると思うのであまりお勧めではないですね。
塗るときは手に垂らして指で塗る感じでもいいと思いますよ。いずれにしても、塗ってもまたすぐ落ちるのですが何度も繰り返し塗っていくと徐々に落ちづらくなってきて、塗る頻度は落ちてくると思います。
人によっては塗らなくても味があっていい感じだよっていう方もいるんですけど、カサついてくるので多少は塗ってあげたほうがいいかなとは思いますね。
ありがとうございます。最後に、作品を作る上でのポリシーを教えていただけますでしょうか。
最初、こういう作家業を始めたときには「みんなが好きだと思うもの」「万人に好かれるもの」を考えないと!と思っていたので、すごくシンプルな丸いお皿を作ろうと思っていました。
でも木工作家さんはたくさんいるし、僕が始めた時期っていうのは結構どんどん増えているような時期だったので、なんかそれじゃあちょっと面白くないなというのがあって。
そういうシンプルなものを作ってる人はたくさんいるから、そこはお任せして、自分は自分らしい部分を作品に落とし込んで、基本的には「自分が作りたいもの」「好きな形」というものを作品にしていきたいなと思ってますね。
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