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作り手のことば「お茶の味や香りをストレートに表現できるのは、白磁の誇るべき才能」陶芸家・色原昌希さんインタビュー
2024年04月12日
by 煎茶堂東京編集部
陶磁器生産の本場・岐阜県で白磁器を製作されている、陶芸家・色原昌希さん。「白だけでも十分に世界は広がる」と語る色原さんの作る器は、どれも繊細で透明感のある白をたたえています。
今回、煎茶堂東京で色原さんの作品をお取り扱いするにあたり、色原さんのお人柄、作品や陶芸に対する想いなどを伺いました。
色原さん、今回はよろしくお願いします。まず、簡単にプロフィールを教えていただけますか。
よろしくお願いします。僕は徳島県出身なのですが、あるときテレビで、ろくろを引く職人の映像を観たときに衝撃を受けたんです。「こういう仕事もあるのか!」と。
同時に「ものづくりで生きていけるなんて羨ましい」と思ったことがきっかけで、岐阜県多治見市の陶磁器意匠研究所の門戸を叩きました。
研究所を修了後、岐阜県の陶磁器メーカーに勤務しながら技術や知識を習得しました。その後、岐阜県で陶芸家をされている村上雄一氏の学びを受け、現在にいたっています。
村上雄一さんに師事されたなかで印象に残っていることや、ご自身の製作に影響していると感じたことを教えてください。
「自分のものづくりに正直であること」と「素材に真摯であること」ですね。経験を積んでもなお、いつも“今”の感覚を大切にして、挑戦し続ける姿勢がカッコいいと思います。
数ある陶磁器のなかでも白磁に惹かれた理由と、色原さんの考える「白磁だからこそ表現できること」を教えていただけますか。
白磁を意識したのは、10代の頃に「白くてシンプルなお皿はどんな料理でも盛り付けやすくて使いやすいな」と感じたことがきっかけだったかな、と思います。
それで、多治見市陶磁器意匠研究所を修了後に就職したのが、創業当時から白磁を製造している岐阜県の陶磁器メーカーだったんです。意図せず就職したんですけどね。
陶磁器メーカーに勤めていた6年間、磁器と真摯に向き合い、その素晴らしさを知ったことには大きな意味があったと思っています。それと同時に、さまざまな製造上の制約をクリアするには、作家独自の技法や細やかさ、手間が必要なのだとも感じました。
この部分が白磁の繊細で大変なところでもあり、他にはない魅力です。白磁はレリーフや造形によって陰影が生まれます。純粋で薄手な白の磁器は光を通すことで、唯一無二の透明感を放ちます。光の当たり具合や強弱によって、同じ白でもさまざまな表情を見せるんです。
白だけでも十分世界は広がります。
魅力は見た目の表現だけに留まりません。味や香りの表現も白磁の魅力の一つだと思います。磁器は吸水性が極めて低く、釉薬との相性も良いため、お茶の香りや味をストレートに表現できます。
お茶の種類や飲むシーンによっては、必ずしも白磁がベストではないと思いますが、これは白磁の誇るべき才能だと思いますね。
白磁の魅力がとてもよく伝わってきました。色原さんは作品を作る工程の中で、どういった工程が好きですか。
素地を作る工程、石膏原型を作る工程の2つが好きです。
前者は、まだ形もない磁土(磁器の原料になる質の良い土のこと)が、器としての形を帯びていく実感がいいんです。後者は、原型に起こす緊張感と新しいものが生まれるというワクワク感が好きですね。
僕の中では、量産と新作の2つがバランス良くあることが理想です。
作品づくりにおいて、何かインプットはありますか。
中国茶器を作ることが多いので、中国陶器から学ぶことが多いですね。自分の手で実際に起こしてみると、伝統的な茶壷の完成されたフォルムの素晴らしさに改めて気づかされます。あと、自然物の線や造形のリズムが好きなので、そこも参考にしていますね。
色原さんは同じ陶芸家の奥様ともコラボレーションをされていますよね。奥様との製作活動から学ぶことや、刺激になることがあったら教えてください。
同じ陶芸家でも、意識している感覚はまったく違います。僕は、特に器としての形とアウトラインの美しさを意識して作品づくりをしています。これに対して、妻の象嵌(ぞうがん※)は、その器に服を着せるような加飾技法です。
世の中にはたくさんの作家がいて、各々がやりたい表現で自由に器づくりをしています。異なる感覚を持つ妻の姿から、無理に作家性を広げる必要はない、自分が得意とする表現で器を作ればいいんだ、と改めて気づかされました。
色原さんが考える、器を作るうえで一番大事なことは何ですか。
自分が使いたいかどうかを一番に考えます。
最後になりましたが、今後挑戦してみたいことは何かありますか。
今ある技法を追求していきたいです。ろくろ、筒びき石膏型※、排泥鋳込み(はいでいいこみ※)、それぞれに特性と欠点があります。
理想とするイメージを、どの技法を使ってどのようにすれば実現できるか考えるのですが、新たな器が完成するまでに選択の連続と失敗があるんです。その繰り返しの中で、小さな挑戦を積み重ねていきたいと思っています。