季節を楽しむ心が生んだ 「お弁当」という文化。京都・お辨當箱博物館で知るお弁当の歴史

2022年03月21日

by 煎茶堂東京編集部

桜の開花が近づくと、ソワソワとしてどこかへ出かけたい気持ちになります。そんなときに欠かせないのは、春らしいごちそうを詰めたお弁当。

かつて上流階級だけの贅沢品だったというお弁当は、今では誰もが当たり前のように楽しめるものになりました。では、「お弁当」という文化はどこからどのようにして生まれたのか? 京都にある「お辨當(べんとう)箱博物館」にお話を伺いました。

教えてくれたのは…お辨當箱博物館

半兵衛麸の店舗がある1階から階段を上った2階にある博物館。お弁当文化の歴史の深さを感じさせる美しい品々は一見の価値あり。1階ではもちろん京麸や京ゆばを購入できるほか、併設されている茶房では半兵衛麸の食材を使った京料理も堪能できます。
※2022年3月いっぱいで建物の改装のため一時閉館します。お弁当箱の一部は、店舗にて展示される予定です。詳しくはHPをご確認ください。

「べんとう」のはじまりは安土桃山時代

元禄2(1689)年に創業された半兵衛麸には、豪華絢爛たるお弁当箱が展示されている

「べんとう」という言葉が誕生したのは、安土桃山時代といわれています。花見や紅葉狩りなどの際に、「提重」という美しい弁当箱が用いられ、そのコンパクトな空間には、多種多様な美しい料理が詰め込まれました。

お弁当という食文化のすばらしさを後世に伝えるため、江戸時代から近代にかけて使われていたお弁当箱を収集・展示している「お辨當箱博物館」。

ここに収められている美しいお弁当箱とともに、食でも季節を楽しむ心についてご紹介します。

“上流階級”だけの贅沢品

皿や酒器がひとつに収められている江戸時代の提重。コンパクトさとともに、細工にも驚かされる

螺鈿(らでん)や蒔絵などの細工が施された、目にも麗しいお弁当箱。この中には、お重だけでなく箸、酒器、盃などをすべて収められるように作られています。

「おべんとう」は、実は近世の初頭まで、貴族や大名など上流階級だけの贅沢品でした。

お花見をはじめ、蛍狩り、川遊び、紅葉狩り、お月見など、季節を楽しむ行楽のお供に持参するため、たくさんの料理が提供でき、かつコンパクトに収納できる「提重」が誕生しました。中には、行楽にはつきものの野点ができる道具一式を収めたものもあるそうです。

お花見のお供に持参したと思われる、桜の蒔絵が施されたお重

330年余りの歴史を持つ京の麸屋「半兵衛麸」では、江戸時代に使われていたという提重をはじめ、多彩なお弁当箱を展示している「お辨當箱博物館」を無料で公開しています。

「今はどんな食材も簡単に手に入るようになり、器もプラスティックなど安価で使い捨てのものが増えています。便利ではありますが、それと引き換えに、自然を感じ、四季を愛でる心や、物を大切に使う気持ちが薄れているようにも感じます。

本来は季節の風流を食で表すために作られたお弁当という食文化を未来に伝承するお手伝いをしたい、という思いでこの博物館を開設しました」(広報部・玉置淳さん)

中には、舟の形をしたお弁当箱や、将棋盤と組み合わされたお弁当箱などの珍しいものも。一見茶釜に見えるお弁当箱は、何と漆器。中には器や杯、水筒が収められているのだとか。

茶釜を模したもの(左)などの変わり弁当箱も。茶室をかたどったもの(右)は、金平糖などのお菓子用の箱だそう

お花見用のお弁当箱を集めたコーナーにある器は、それぞれに美しい桜が描かれています。眺めていると、その季節に合わせたお弁当箱に色とりどりの食材を詰め、春の訪れを喜ぶ一大イベントを心ゆくまで楽しむ光景が目に浮かぶよう。

お弁当箱とは、単に食べ物を入れて持ち運ぶためだけのものではなく、季節や自然を愛でるという「文化」を楽しむ装置だったことが伝わってきます。

コンパクトでありながらもその小ささを感じさせない茶室のように、限られたスペースの中に、季節を感じ、味わう食材を詰めたお弁当。その世界は、さながら五感で楽しむ小宇宙のよう。お弁当の中には、「日本の食文化そのもの」が収められているといっても過言ではありません。

今、世界で日本の食文化のひとつとして、お弁当が注目を集めています。お弁当に込められた季節と食を楽しむ心にこそ、海外の人々を惹きつける秘密があるのかもしれません。 

お辨當箱博物館

所在地 〒605-0903
京都市東山区問屋町通五条下ル上人町433
電話番号 075-525-0008
営業時間 9:00-17:00
茶房 11:00-16:00
URL https://www.hanbey.co.jp/abouthanbey/museum/

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