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〈 墨を、つくる。〉墨で書けば1000年残る。奈良墨「墨運堂」インタビュー
2022年01月27日

by 煎茶堂東京編集部
茶道と並ぶ日本の伝統文化である書道、そしてそれを生み出す「墨」の魅力。
お茶の定期便「TOKYO TEA JOURNAL」で特集した「墨の表現力」では、「墨を、つくる。」「墨で、書く。」「墨で、あらわす。」の3つの視点から見た墨について特集しました。
今回は、「墨を、つくる。」にまつわるお話を、書画用品メーカーの墨運堂で働く職人の皆さんに伺いました。
教えてくれたのは…がんこ一徹長屋 墨運堂
墨運堂の本社工場一角にある、奈良の工芸を集めた複合施設、がんこ一徹長屋に墨運堂の直営店があり、固形墨や墨汁をはじめ、書画用品が揃う。また敷地内には、職人の型入れ作業が見学できる墨の資料館、試墨ができる永楽庵(5〜15名の利用、1ヶ月前までに要予約)もある。
奈良で受け継がれる墨づくり。
日本の墨づくりのほとんどが、奈良。奈良墨と呼ばれて、1400年にわたって受け継がれてきました。飛鳥時代、高句麗の僧、曇徴(どんちょう)が奈良に製法を伝えたことがはじまりとされます。
「墨づくりができるのは、10〜4月の寒い時期だけ。底冷えする奈良は、墨づくりに適してたんやと思います」と、墨運堂の前田定道さん。
墨の原料は、煤と膠。菜種油など、植物性の油に火を灯して覆いをし、覆いに少しずつつく煤を集め、湯煎して溶かした膠と混ぜ合わせて、墨玉をつくります。
膠とは牛などの動物の皮や骨髄を煮出した、いわば天然の接着剤。灯芯(とうしん)には、畳の原料でもある、い草が使われます。
「墨の良し悪しは、煤の質で決まります。細く巻かれた灯芯ほど、粒子の細かい質の良い煤が採取できます。けれど、その量はわずか。そのため、高級品として扱われます。
さらに、膠と煤を混ぜ合わせたときに、よく練ることも大事。のび良く、書きやすい墨になります」
練り上げた墨玉は、木型に入れて成形。墨玉に触らせてもらうと、やわらかく、はずむような弾力。押し戻す力が強く、小さな木型によく収まるものだと感心します。
木型に入れたらプレス機にかけて圧縮。反ったり、曲がったりしないように慎重に木型から取り出します。美しいレリーフや文字は、この木型に彫り込まれたもの。
急激に乾かすと割れてしまうので、少しずつ水分を抜き、乾燥だけでも3〜4ヶ月。彩色などを施して仕上げ、1年以上かけてようやく完成。途方もない手間と時間をかけて、奈良墨は出来上がります。
墨で書けば、1000年残る。
墨運堂は、1805(文化2)年より、奈良市の餅飯殿(もちいどの)にて墨づくりをはじめました。明治時代になって、鉛筆やインクが広まるまでは、筆記具といえば墨だけ。
「墨で書いた字は、消えることなく1000年残ります」と、前田さん。
墨運堂では現在でも職人が固形墨をつくりますが、主力は墨汁。小学校の習字の授業でも墨汁が主流。全身を使って大きな筆で書く、書道パフォーマンスも大量の墨が必要なので主に墨汁が選ばれます。
「それでもやはり墨をするのはいいもの。墨をする間に心が整い、静かに書と向き合えます」
高価なものもある墨ですが、では、どんな墨を選べばいいのでしょう。
「墨選びは好みですが、かな用は粘りの少ないもの、漢字用はしっかりと紙にしみ込むものが向いています。最初のうちは500円の墨で十分。
まず大事なのは、硯選びです。安価なものはガラスのようにツルッとしてうまくすれません。硯の良し悪しは、表面にある鋒鋩(ほうぼう)で決まります。目には見えないほどきめ細かな目立てによって墨がすられ、墨色やにじみに差が出ます。
硯はぜひいいものを。身の丈に合った墨を使って、腕を磨き、墨選びはそれから。続けるうちに、自分の好きな字もわかってくると思います」
おすすめは、道具一式を出しておくこと。しまいこんでしまうと、準備するのが面倒になるから、いつでも向かえるように。
「一日に一度、わずかな時間でも、墨をすって書く習慣をつくる。目に見えて上達しますし、心も落ち着く。忙しい人ほどおすすめですよ」
墨づくりの工程
1/墨玉をつくる
煤と膠でつくる、墨玉。時間を置くと冷えて固くなるため、木型に入れる際には、職人が手や足で練る。練るほど光沢が生まれる。
2/成型する
十分に練り上がったら、墨玉をちぎり、天秤で重さを計り、木型に合う分量をはめ込む。プレス機にかけて圧縮し、成形する。
3/型から取り出す
刃物のような「型コジ」で木型をあけて取り出す。木型に彫り込まれた、文字や絵柄がくっきりと。水分が多くやわらかいため慎重に。
4/形を整える
はみ出た部分を切って整えたら、すぐ木箱に入れて乾燥を防ぐ。「急に乾くと割れる。作業は1秒でも早く」と、墨職人の林龍之介さん。
奈良県で長く受け継がれる奈良墨。墨と触れ合う機会が減ってしまった現代ですが、お正月の時期は書初めなどで墨をするところから初めてみるのもいいかもしれません。
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