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自然のありのままの美しさを小さな盆栽で表現する 石木花 後藤卓也さんの考える伝統文化への思いと秋のおすすめ6選

2020年09月11日

by 煎茶堂東京編集部

小さな器の中から伸びていく枝の形。葉の間から漏れる光の輝きと、風に揺れる姿。小さくとも、その一本の木から感じ取れる情報は、豊かで美しいものばかりです。厳格な印象をもちやすい盆栽ですが、伝統的な要素を残しつつも現代のスタイルと調和しながら表現する「石木花」の盆栽なら、きっとお気に入りを見つけられるはず。


この小さな盆栽に込められた想いを私たちに話してくれたのは、山形で植物の品種を種から育て、器も自社で制作する「石木花」の後藤卓也さん。ありのままの自然がもつ素朴な美しさを表現する後藤さんが考える伝統文化への思いとは?室内で育てる時の注意点は?初心者でもわかりやすい基本の育て方とお手入れ方法のほか、秋におすすめの品種についても伺いました。

教えてくれたのは…石木花・後藤卓也さん

盆栽という日本の自然文化、伝統文化を新しい視点でとらえなおし、受け継いでいくことを目指している。

石木花公式HP:https://www.sekibokka.jp/

小さな器は自然への入り口

私たちが石木花という名前を使っているのは、“盆栽”という言葉に縛られすぎないようにするためです。盆栽というととっつきにくいという印象を持つ人が多いですが、盆栽という日本に根付いた自然文化、伝統文化は残していきたい。その入り口になれたらと思っています。


父と石木花を始める前に「いちばん美しいものは何か?」と話し合って出たのが、「ありのままの自然が美しい」という答えでした。その自然とは何かというと、人と自然が重なっている場所、例えば里山のようなものだと思ったんです。盆栽では厳しい自然を表現することもありますが、石木花はもう少し人と近しい「自然への扉」を表現したい。お客様がその扉を抜けて、奥にある豊かな自然を感じ取ってくれたら、と思っています。


ある高名な盆栽コレクターの方に「君たちの作品は始まりであり到達点だ」と言っていただけたことがありました。自分たちの「自然への扉」という考えが、盆栽文化の本質的な部分を表現できていたのかなと思えて、うれしかったですね。

和の植物の美しさに出会える場を増やしていきたい

私たちは、「ありのままの自然の美しさ」をお客様に届けるため、器も自分たちで作り、植物も種から育てています。いろいろな人とコラボレーションして作ることも考えたのですが、やはり自分たちのやりたいようにやりたくて。器にも実は盆栽ではありえない色使いをしたりしています。植物を引き立てる器の色や形は何かをフラットな視点で考え、それぞれ今の形にたどり着いています。

また石木花の植物は、商品になるまで最低でも3年はかかりますし、性質によって育て方も違います。手間がかかるので、家族と、少しの従業員の計9名で日々やっています。

種から育てるというやり方を続けているのには、もうひとつ理由があります。盆栽に使われる「和物」と呼ばれる植物の品種が少しずつ失われているからです。例えば、お茶をペットボトルで飲む人が増えたように、盆栽も生活様式の変化や、選択肢が多様化したことによって需要が減っています。さらに、和物の栽培の知識や技術を持つ生産者も高齢になっています。また後継者不足も深刻な問題です。一度失われてしまった品種は、簡単に復活させることはできません。だからこそ、生産者や一般の方から種を受け継ぎ、現在では300種ほどを栽培しています。


盆栽とは名乗っていないものの、数百年に渡って、この伝統を受け継いできた文化に対する敬意は深く持っています。だからこそ「和」の植物の美しさに人々が出会える機会を増やしたい。そして、その先にある“日本の自然の美しさ”を感じる心を育んでほしい。そう願っています。

石木花ミニ図鑑

花モノ、実モノ、葉モノ…手のひらサイズのミニチュアな世界に大いなる自然への想像が広がり、ついついうっとり。後藤さんの考える、秋におすすめの品種を「石木花ミニ図鑑」と称してご紹介します。

ヤマドウタン

「ドウタン」は枝の出方が昔の灯台(ともし火)の脚に似ていることから付いた名前とされています。繊細な枝が織り成す樹形が特徴的な樹種です。枝先の小さな葉は秋に美しく紅葉し、見ごたえがあります。また、非常にゆっくり生長するという性質のため、現在の姿を長く楽しむことができます。

トキワサンザシ

可憐な白花の後に、たくさんの赤い実をつけます。一年を通して、華やかに変化する姿から目が離せません。そのうえ、とても丈夫で育てやすいので初心者の方にもおすすめです。

アカマツ

クロマツと大変よく似ていますが、アカマツのほうが葉がやや細くやわらかい印象なので、クロマツが雄松(おまつ)と呼ばれるのに対しアカマツは雌松(めまつ)と呼ばれています。線の細さを活かした優しい樹形に仕立てるのに向いています。

姫サルスベリ

光沢のある葉に、どことなく異国情緒漂う印象的な花が特徴的な姫サルスベリ。細やかに枝分かれしやすく、小品に仕立てるのに向いた品種です。ポイントを抑えて管理すると毎年枝先いっぱいに花を咲かせてくれます。その花は夏の長い期間咲き続けることから漢字で「百日紅」と書くそうです。

長寿梅

縁起が良い木とされている長寿梅です。梅ならではの趣きある枝ぶりや、小ぶりな葉は風情があります。また、早春と秋に2度咲かせる花も素敵です。比較的丈夫で育て易い樹木です。

ヤマモミジ

秋の紅葉狩りは日本の秋の風物詩になっていますが、この風習の起源は古く、奈良時代から始まったとされています。また、全国の寺社仏閣等にモミジの名所が数多く存在することから、いかに長い時代愛されてきたのかが伺い知れます。





生活様式が変わり、また多様化した現代の私たちにとって、自然を身近に感じ愛する心を育んでくれる盆栽の存在はとても尊いものなのだと気づかされます。丁寧に、ゆっくりお世話をして愛でる時間自体が心の波を穏やかなものにしてくれるのは、なんだかお茶を淹れる時間と似ているかも、と思ったり。そうして小さな自然と向き合えば、自然を美しく、愛おしく感じる心がわきあがってくるような気がします。

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