玉緑茶ってどんなお茶?勾玉状の風変わりな日本茶の魅力
2020年11月17日
突然ですが、皆さんが普段飲んでいるお茶の形状を想像してみてください。おそらく多くの方が針状の細い茶葉を思い描くのではないでしょうか。しかし、日本には玉緑茶と呼ばれる勾玉状のお茶もあるのです。一風変わった見た目の玉緑茶は、味や香りにも独特の魅力があります。
今回は、玉緑茶とはどんなお茶なのか、さまざまな側面からご紹介していきましょう。
大きく分けて2種類ある玉緑茶

勾玉状の茶葉が特徴的な玉緑茶には、大きく分けて蒸し製玉緑茶と釜炒り製玉緑茶の2種類があります。2つは同じ玉緑茶という名前で呼ばれますが、似ているのは形状のみと言っていいくらい、製法が大きく異なっているお茶です。
歴史的に見ると釜炒り製玉緑茶の方が古く、後でご紹介しますが、戦国時代末期に中国から伝わったと言われています。江戸時代には全国的に広がり、現在のような煎茶が広まるまでは、抹茶と並ぶ代表的な日本茶だったようです。
対する蒸し製玉緑茶が誕生したのは、大正末期から昭和初期にかけてのこと。中国茶が好んで飲まれていた旧ソ連への輸出を増やすため、中国製の釜炒り茶に似たお茶として開発されたのが蒸し製玉緑茶でした。この戦略はソ連に受け入れられ、戦後には北アフリカなどへも盛んに輸出されたのです。
ちなみに玉緑茶という名前は、蒸し製玉緑茶の輸出が急増した1932年に公募で決定したもの。つまり、もともと玉緑茶とは、釜炒り製に似せたお茶として生まれた蒸し製玉緑茶を指す言葉ということになります。
「ぐり茶」とも呼ばれる蒸し製玉緑茶

2種類ある玉緑茶のうち、生産量が多いのは蒸し製玉緑茶。勾玉状の独特な形状から、ぐり茶という愛称でも知られています。
緑茶は生の茶葉を最初に加熱することによって、茶葉の酸化(お茶の世界では発酵と呼びます)を止めるのが特徴。ぐり茶の場合、茶葉を高温で蒸すことによって酸化を止めます。これが、蒸し製と呼ばれる所以ですね。
蒸して酸化を止めるという点は煎茶と同じなのですが、蒸し時間を煎茶よりも長めにする傾向があります。蒸し時間を長くすることにより、渋味が少なくまろやかな味わいに仕上がるのです。
ぐり茶の特徴である勾玉状の形は、中揉(ちゅうじゅう)や仕上げ再乾と呼ばれる、茶葉を揉みながら乾燥させる工程で生み出されるもの。回転する機械の中でクルッと丸まっていきます。煎茶は茶葉を針状に整える精揉(せいじゅう)という工程がありますが、ぐり茶では行われません。
香ばしい香りが特徴の釜炒り製玉緑茶

一方の釜炒り製玉緑茶は、先ほどご紹介したように中国から伝わった歴史あるお茶。単に釜炒り茶と呼ばれることが多くなっています。その名の通り、釜で炒ることによって茶葉の酸化を止めるのが特徴。
「ぐり茶は中国製の釜炒り茶に似た形状のお茶として開発された」とお話ししましたが、今でも中国茶の大半は釜炒り茶です。日本茶の多くが蒸し製であるのとは対照的ですね。
釜炒り茶は、釜で炒ることによって生まれる釜香(かまか)という独特の香ばしさが魅力。口に含んだ瞬間、蒸し製の緑茶にはない味わいに驚くはずです。茶葉を炒っているので、お茶の水色(すいしょく)は少し赤みがかっており、全体的に透き通っています。
釜炒り茶についてはこちらの記事で詳しくご紹介していますので、気になる方は読んでみてくださいね。
釜炒り茶を実際に味わってみたいという方は、こちらの茶葉がおすすめです。
九州育ちの多い玉緑茶

ここまで玉緑茶についてご紹介してきましたが、飲んだことがないという人も多いのではないでしょうか。それもそのはず、全国茶生産団体連合会の調査によると、令和元年度の日本茶生産量に占めるぐり茶の割合はわずか約2.5%。釜炒り茶を合わせても、たった約2.8%に過ぎません。
江戸時代には代表的な日本茶だった釜炒り茶は製造に手間がかかることから、18世紀に誕生した蒸し製の煎茶にシェアを奪われました。戦後の高度経済成長期に日本茶の輸出量が減ると、海外向けに作られたぐり茶もわずかに作られるのみとなったのです。
なお、上のデータを見てみると、玉緑茶の生産は圧倒的に九州が多いということがわかります。全国の生産量における九州のシェアはぐり茶で約92.7%、釜炒り茶に至ってはなんと約99%が九州産です。佐賀県・長崎県で生産される嬉野茶は、玉緑茶の代表的な銘柄として知られます。
ぐり茶は、九州以外に静岡県でも生産が盛ん。明治後半、諸事情により釜炒り茶の生産が禁止された静岡県でぐり茶は誕生しました。そのため、今でも伊豆地方を中心にぐり茶が生産されています。
九州で多く作られているのは、中国から釜炒り茶が伝わったのが九州だったという歴史が関係しているようです。昔から釜炒り茶の生産が盛んだった九州で、ぐり茶が多く作られているというのは必然かもしれません。
関東などでは馴染みが薄い玉緑茶ですが、九州や伊豆では今でも広く愛されるお茶なのですね。
玉緑茶を美味しく淹れるには?

煎茶とは一味違う玉緑茶の魅力を引き出すには、どのような点に気をつけて淹れればいいのでしょうか。
ぐり茶は精揉工程がないというお話をしましたが、その分深蒸しにしたり中揉工程をしっかり行ったりしているので、通常の煎茶と同じように飲むことができます。
一方、釜炒り茶は釜で炒って作るので、茶葉の組織が比較的残った状態です。このことから、釜炒り茶は茶葉の成分が溶け出しにくいお茶と言えます。
釜炒り茶の成分を十分に抽出するためには、やや高めの温度のお湯・少し長めの抽出時間で淹れるのがおすすめ。高い温度で淹れることによって、釜炒り茶の特徴である釜香も存分に楽しめますよ。
玉緑茶の持つさまざまな表情を楽しみたいなら、煎茶堂東京の基本レシピもおすすめです。
魅力的な玉緑茶の世界を知ろう
中国伝来の釜炒り製玉緑茶は、江戸時代に唐茶と呼ばれ広く親しまれました。明治以降は日本茶の海外輸出を増やす目的で、蒸し製玉緑茶が誕生。戦後は煎茶の広がりとともにすっかり生産量が少なくなってしまいましたが、玉緑茶こそ日本茶の歴史や奥深さを感じられるお茶と言えるかもしれません。
たまには玉緑茶を飲みながら、煎茶だけにとどまらない魅力的な日本茶の世界に浸ってみるのもおすすめです。
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