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作り手のことば「器は使う人が主役。そのなかで感性を表現する面白さ」陶芸家・土井善男さん 清水なお子さんインタビュー
2025年03月07日

by 煎茶堂東京編集部
ご夫婦で器づくりをされている、陶芸家の土井善男さんと清水なお子さん。
シンプルで洗練されたフォルムが美しい土井さんの白磁と、花や動物をモチーフにした絵柄が可愛らしい清水さんの染付は、いつもの食事をあたたかく穏やかなひとときへと昇華してくれます。
今回、煎茶堂東京で土井さんと清水さんの作品をお取り扱いするにあたり、お二人のお人柄、作品や陶芸に対する想いなどを伺いました。
土井さん、清水さん、今回はよろしくお願いします。
まずは、それぞれの簡単なプロフィールと器づくりを始めたきっかけを教えていただけますか。
土井さん
「よろしくお願いします。私は1970年生まれで、現在は京都の亀岡で制作を行っています。
もともとモノづくりが好きだったこともあり、美術系大学の陶芸科で学びました。大学卒業後、京都の器を作るところで2年ほど修行し、独立して現在に至ります。
大学時代は工芸やアートも勉強したのですが、器の『使い手が主役』というところに面白さを感じました。自分の作った器を使ってくれる人とコミュニケーションを取りながら、自分の作品にフィードバックする、相互的なモノづくりの面白さです」
清水さん
「1974年生まれで、土井と同じ美術大学の出身です。最初から陶芸家を志していたわけではなく、美術系に進みたいと思って試験を受けて…受かったのが陶芸科だったという感じでした。でも、キチっと決められたことをやるのが嫌だったので、造形が自由な陶芸は性に合っていたんだと思います。
大学卒業後は、藤塚光男氏の元で3年半修行しました。藤塚氏が染付による器づくりをされている方だったので、そこで今に通じる染付の技法を学びました。
2003年に土井と結婚したのを機に、京都の亀岡で共同制作を開始し、現在に至ります」
ありがとうございます。お二人は器づくりにおいて、どの工程が好きですか。理由もあわせて教えてください。まずは、土井さんお願いします。
土井さん
「ろくろを挽くときが面白いです。土の塊を遠心力で成形していくって、一見すると不思議で面白い行為じゃないですか?手を使うから、同じようでいて毎回違うものができるというのも好きなところです」
ろくろを挽く行為には、思い描いていたとおりの形を作っていく面白さと、偶然思っていたのとは違う形ができる面白さがあると思うのですが、どちらに魅力を感じていますか?
土井さん
「どちらかと言うと前者です。
大学時代の恩師に言われたのが、『“ろくろを挽きます”と言ったら、それは“ろくろに挽かれているのだ”』という言葉でした。
せっかく制作するなら、挽かれるのではなく、自分でろくろを挽きたい。偶然性の面白さはもちろんあるけど、自分が主体で作りたいんです。その日の体調や気分など、自分でしか気づかない微妙な変化が作品に生きることもあって、そういう微妙なところを楽しんでいる面もあります。
景色を写真に収めるように、自分のフィルターを通して、自分の感覚を入れたいというのがあるのかもしれません。
器の場合、使う人が指先や口先で敏感に質感やフォルムを感じ取ります。見るだけではない感覚が加わってくるなかで、いかにして自分なりの感性を届けられるかが面白さだと思います」
「ろくろに挽かれるのではなく挽く」というのは深い言葉ですね。
清水さんは、どの工程が好きですか?
清水さん
「ろくろを挽くのも好きですし、同じ作品を複数作っていくのも嫌いじゃないです。染付を繰り返しやっていくのも好きですね。1個作って終わるのではなく何個か作るというのは、実用品である器ならではのことなので。
最初に制作する器はサンプルを作るのですが、正式に販売を開始すると、だんだん筆が走るようになっていくんです。それを実感できるのが嬉しいし、楽しいんです。
たまに思った通りにならないこともありますが、『これはこれでアリか』と思うようにしていますね。作る時期が変われば自分の好みや感性も変わるし、変化していくのが当然で、それもハンドメイドならではの良さかなと思います」
土井さん
「例えば、過去に作っていた器を5年後にリクエストされても、その間に感性も変わっているし、技術も身についていますから、確実に同じものにはなりません。ハンドメイドの醍醐味だと思って楽しんでいただければありがたいです」
続いて、作品づくりにあたってのインプットがあればお聞かせください。
土井さん
「普段の生活で欲しいと感じたものから着想することが多いです。もちろん美術館に行ったり、ほかの作家さんの展示会に行ったりするのも好きですが、『こういうのがあったらいいな』『もう少しこうだったらいいな』という感覚が作品につながっています。
常にアイデアを探しているというか、色々なものを自然とそんな目で見てしまいます。」
清水さん
「普段から、使うシーンを考えて作ることが多いかもしれません。あと、骨董の古い資料を見て、絵柄のアイデアや描き方を参考にしています」
器を作るにあたって、一番大事にしていることは何ですか?
土井さん
「大事なことはいっぱいあって、一番大事なことは選べないというのが正直なところです」
清水さん
「やっぱり使っている人がいてこその器なので、使い勝手の良さが一番かなとは思いますけど。あと、陶器以外の素材の器と合わせて使えるよう、食卓に調和するデザインを心がけています」
土井さん
「器を使って食事をする人が主役であって、作家はお手伝いくらいの立ち位置と捉えています。器は使いやすいことが前提なので、一定の決まりのようなものはあります。ただ、その隙間を探すという行為が、表現の面白さや深みにつながっているのかもしれません」
少し話題を変えて、個人で活動しつつ、ご夫婦でも取り組みをされている理由などを教えていただけますか。
土井さん
「あくまでも個々の作家で、場所は共にしつつもそれぞれで活動しています。作家ゆえにお互い譲れないところもありますし、尊重しなければならないので」
清水さん
「作家同士なので、意見を最初に聞ける相手ではありますね。悩んでいるときに意見を聞ける点は利点かなと思います。作り方を教え合えたり、お互いの作品にインスピレーションを受けたりするのも、作家が2人いることのメリットかもしれません。
意見については、聞いているようで聞いてないこともありますけど(笑)」
土井さん
「腑に落ちれば器づくりに反映することはありますが、意見の相違はあって当然ですから」
お二人がとても自然体だというのが伝わってきます。
土井さんは白磁、清水さんは染付と、メインとする作風が異なっていますが、それぞれどのような点に魅力を感じるか、お聞かせください。
土井さん
「白磁はシンプルなだけに奥深いです。一定の決まりのなかで、ちょっとしたラインや形の違いをニッチに追求していくのが魅力ですね。食器といえば、使いやすい形の“答え”がある程度出ているけれど、そのなかでもやれることはあると考えています」
清水さん
「染付は、絵の華やかさや可愛らしさが魅力だと思います。モチーフにもいろんな広がりがあります」
染付の絵柄はどのように考えられているのですか?
清水さん
「古い作品を見て考えることが多いです。そのまま持ってくるのではなく、自分のフィルターに通して解釈し直すといったイメージでしょうか。美しいと思うものは、時代に関係なく普遍的なのかもしれません」
お二人は、これから挑戦したいことはありますか?
土井さん
「いっぱいあります。とりわけチャレンジしたいのが、青っぽい釉薬を用いた作品づくりです。これまで使ってきた釉薬は白っぽいものが中心だったので、違う色を取り入れて、さまざまな白を表現したいです」
清水さん
「絵付のモチーフを増やしていきたいです。花や動物に加えて、人物などにもチャレンジしたいと思っています。茶器や茶道具の制作にもチャレンジしてみたいですね!(笑)」
ぜひお願いします!(笑)
最後に、作品を手に取ってくださる皆さんへ伝えたいことがあればどうぞ。
土井さん・清水さん
「私たちが作る器は、一つひとつ違います。ちょっとした歪みやひずみ、小さな石や不純物から出る鉄粉の質感など、違いがあるのも魅力だと思っています。既製品のような画一的な美しさとは異なる、手作りならではの味を楽しんでもらえたら嬉しいです」