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作り手のことば「ありのままの美味しさを楽しめることが“究極”」松徳硝子・齊藤能史さん インタビュー VOL.2
2022年06月18日
by 神まどか
煎茶堂東京・東京茶寮/デザイナー 青森県生まれ。最近の趣味は中国茶と茶道具収集です。
“飲み物を美味しく飲めるグラス”を追求した「うすはり」が世界的にも有名な松徳硝子。この度、「お茶のある暮らし」を提案する煎茶堂東京で「オールド S」の取り扱いを開始することとなりました。
今回は、飲み物との境界線を感じさせない「飲み口0.9mm」のグラスがどのようにして作られているのか、東京都荒川区にある工場にお邪魔して、代表取締役の齊藤能史(さいとう・よしふみ)さんにお話を伺いました。
ガラスを吹いた後はどのような工程に進むのでしょうか?
吹いて型から出たばかりのガラスは500〜600度あって、徐々に常温に向かって冷えていってしまいます。ガラスは温度差に弱い素材なので、冷える前に徐冷炉に入れて、加熱しながらゆっくりと冷まします。
うちのは耐熱ガラスではありません。同じガラスでも、うちの並ガラスと耐熱ガラスとは、全くジャンルの異なるものです。
耐熱ガラスは膨張収縮(温度によって膨張〜収縮する性質)が極めて少ない素材なんです。ガラスは熱い飲み物を入れれば膨らんで、冷たい飲み物を入れると縮むんですよ。急にキュッと縮まったらバキッて割れちゃう。それがほぼ変化しないっていうのが耐熱ガラスなんですよ。
なるほど。元々の素材が違うっていうことですか?
そういうことです。で、吹いた後のガラスの“第一検査”をして、ガラスの状態がどうか、型が出てるか等、複数のチェックをして、OKなものは仕上げの工程に進めます。駄目なのは壊して原料に戻します。
泡が入ると「不良だから交換して欲しい」という方が稀にいらっしゃいますが、原料の粉の状態で空気は含まれていますので、自ずと泡は生じてしまいます。
粉は細かいですもんね。
そう。溶かす過程で絶対泡って出ちゃうんで、ゼロにはできない。ただ、量や粒の大きさとかで判断しますけど、基本泡っていうのは入り得るものということを分かっていただけたら。
ある程度のそうした「必ず発生してしまうもの」に関しては説明して理解してもらいたいなと思っていますが、それで全然満足してるわけじゃなくて。まだまだ課題は山積みで、多くのお褒めの言葉を頂きますが、今のクオリティに満足はしていないです。
満足出来てないうちは、まだまだ伸びしろがあるとも思い、励みにしています。
「完璧」を求める姿勢は勉強になります。
ありがとうございます。ここからやっと仕上げの工程です。まず、余分な部分とグラスを切断します。一回ダイヤモンドのチップで線を引いて、そのあとその箇所にバーナーで熱をあて、切断します。
切断したあとは、まだちょっと飲み口のところがガタガタしてるので、この断面を研磨する工程に入ります。機械で粗く研磨した後、手で仕上げの研磨をしていきます。
切断して、熱を入れて、機械で研磨して、さらに手で研磨…。
そうです。研磨で平にした後は、最後に焼くんですよ。
焼くんですか?
焼きます。焼く前に断面を細かくしておかないときれいに溶けないんです。
粗摺りだけだと目が粗いので、もう一段階細かく手で擦り込みます。鉄板とグラスとの間に金剛砂(こんごうしゃ)という粒度の細かい砂を研磨剤にして擦り込むと滑らかになるんです。この焼きも、やり直しがきかない非常に難易度の高い工程です。
ガラスを均一に吹くのも大変なんですけど、それを仕上げるのも大変なんですよね。
飲み口を整える工程だけでもこんなに沢山の作業があるんですね…。
そうなんですよ。しかもガラスって触れないんですよ、熱くて。指の感覚で仕事できる工程って今お伝えした飲み口の擦りぐらいなんです。
触れないから、ガラスって一発勝負。そこが大変ですよね。だから手間ばっかりかかって、正直儲かんないです、本当に。
でも私たちが作っているのは「飲み物を美味しく飲めるグラス」なので、飲み口は大事。飲み口が薄いと異物感が少ないんですよ。グラスが美味しくしてるっていうよりは、ありのままの美味しさを楽しめること、邪魔しないこと。それが究極だと思ってます。
私も自宅で使っていますが、お茶もビールもグラスの感覚を意識せずに飲んでいます。
ありがとうございます。
そして、最後に作ったものを検査します。検査項目が何十項目とあるので、それが規格に当てはまるかどうか、目視での検査です。検査は集中力を使うし大変ですよ。完成度が信頼度に直結しますし、あれもこれも駄目だと弾いてしまったら、今度は売るものがなくなっちゃう。
でも、例えば厚みの規定を緩めちゃうと、「なんか美味しく飲めるって聞いたけど普通のコップだね」って、ガッカリさせちゃいますよね。一度でもそう思われたら終わりなので。そういう点では本当に最重要ポイントです。いや、全部大事なんだけど。
齋藤さんはどういった経緯でこの会社に入社されたんですか?
僕は元々は違う会社にいて、業績が悪い時にブランディングの立て直したいということで、最初はボランティアで相談を受けていたんですよ。で、紆余曲折を経て、今は松徳硝子を継いでいる。
なんでそこまでしてこの会社を残そうと思ったかって、結局、手づくりでしかできねえことを追及してやり続けりゃなんとかなるんじゃねえかと思って。機械でできないことを追求するっていうのが大切なことに思えたんです。
ネットや海外でもうちに似た薄いグラスが出てるんですけど、大体続かないで辞めてるのをよく見ます。
工程が細分化されたのを見ると、あんなに大変なことは中途半端に続けられないというのがよく分かります。
そう。それは自分らが一番分かってるので、言い切れます(笑)
あと、「MADE IN JAPAN」とひとくくりにする流れも嫌いです。そういうセレクション系のお話貰うんですけれど、基本断るんですよ。セレクションっていっぱい色んなところが貰ってると思うけど、世の中にそんなにいいものが多いかというと、正直そうは思わない。
中国であろうが、日本であろうがいいものはいいけれど駄目なものは駄目。変なステレオタイプとか先入観を持っちゃったら、適正なものの評価とか価値を見失っちゃうじゃないですか。