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作り手のことば「“飲み物を美味しく飲めるグラス”が絶対的定義」松徳硝子・齊藤能史さん インタビュー VOL.1
2022年06月17日
by 煎茶堂東京編集部
“飲み物を美味しく飲めるグラス”を追求した「うすはり」が世界的にも有名な松徳硝子。この度、「お茶のある暮らし」を提案する煎茶堂東京で「オールド S」の取り扱いを開始することとなりました。
今回は、飲み物との境界線を感じさせない「飲み口0.9mm」のグラスがどのようにして作られているのか、東京都荒川区にある工場にお邪魔して、代表取締役の齊藤能史(さいとう・よしふみ)さんにお話を伺いました。
齋藤さん、本日はよろしくお願いします。早速ですが、ガラスをどのようにして作っていくのか、そもそものところから教えていただけますか…?
よろしくお願いします。ガラスの主原料は、珪砂(けいしゃ)と呼ばれる砂です。砂にも色々あり、我々は最もグレードの高い「ハイシリカ」という珪砂を使っています。原料は、メーカーへ材料と組成を指定しオーダーします。
ガラスにも配合があるんですね。
そうなんです。透明と言っても、砂の純度や透明度へのこだわりにより、異なります。紙も手触りや質感、同じ白でも色が全部違うというように、ガラスも全部微妙に違うんです。ハイシリカは透明度に差が出ます。
うちには窯(溶融炉)が4つあって、その中で常時ガラスを溶かしています。それを吹きの職人が棹(さお)で巻き取って成型するという流れです。今は4チームで吹いていて、その日の生産計画に基づいて大体1チームにつき1日で2〜3種類のグラスを作ります。
グラスにも様々な製法があって、大きく分けると機械と手作りですね。その手作りの中でも型を用いず何回も加熱して成型していく「宙吹き」と、それに対して、私たちが行っている型を用いて成型する「型吹き」という製法があります。
型吹きはいわゆる工場であったり職人が作るのに最適で、反復生産がしやすいのが特徴です。ただ「型」と言っても、いわゆる鋳造では無いので、その通りピッタリ出来上がるわけではありません。
結局外形を整えるガイドでしかないので、口や底の厚さなどは規格に合うよう、職人のさじ加減で決まってきます。
型と言っても簡単なわけではない。
そう。最初は小さな「下玉」と呼ばれるガラスの玉を作って、その上から再度必要な量のガラスを巻き取り、大体の大きさまで膨らませて、最終的に型に入れて一気に吹きあげます。
ガラスの玉を膨らませてグラスになっていくんですね。
そうです。膨らませて形ができるんだけど、グラスの厚み、形状は、全て巻き取る量と“吹き加減”次第で決まります。僕らは作品じゃなくて製品(プロダクト)を作ってるんで、結局なにが違うかって「規格」があるんですよ。
製品としての規格がある。
このグラスだったらサイズや厚さがこうで、何グラムという規格があります。その中で、厚さや重量も個体差が生じるので、下限と上限の値があって、その中に入れるように作らなければなりません。
型は全て、外は鋳物(鉄)でできていて、内側にコルクの粉末を塗りつけて焼いて定着させています。これが結構ミソなんですよ。水分が型の内側に含まれ、熱いガラスが入ったときに、全体に水蒸気が発生して型とガラスがくっつかずに膜が出来ます。
その中で回るから、表面がツルツルになるんです。これが機械で作ったガラスだと型の模様がついちゃう。うちのグラスは触感も違うし、透明度も違うんです。全くフラットなガラスだから、中身もよりクリアに見える。
私たちには「飲み物を美味しく飲めるグラス」っていうのが絶対的な定義としてあって、その体験を作るためにグラスを作ってます。なので、見た目や食感から美味しく見えるということも非常に重要です。
美味しさへの追求はこういうとこから始まってるんですね。
そうです。グラスを作るのは、まず下玉を巻くところから、型に入れるタイミングや巻き取る量等、複合的な要因で決まってくる。我々の考える腕のいい職人の定義は「難しいものを数多く作れる」ということです。
なるほど。それが「技術」なんですね。
難しいことが出来るだけでは、職人としては飯食えないんですよ。反復生産で質の高いものを数多く作らなきゃ。……と、言うのは簡単ですけどね。やるのは大変だと思います。なにが大変かって言ったら、常にガラスって炊き続けてるんで極端に言うと5分前と今とではガラスの状態が違うんですよ。
窯の中の溶けているガラスですか?
そうです。例えばお茶だと、「今このタイミング」っていうので抽出しないと茶葉が開いていったり、渋みが出てきたりとか、いろんな変化が起こるじゃないですか。
それと一緒で、ガラスは窯に入ってるツボの中で炊き続けてる状態なので、どんどん固くなって煮詰まっていったり、さっきまでは泡がなかったのに泡が大量に出てきたり。常に変化してるんですよ。
その条件下で、「同じものを作れ」というのが、実は相当無理のあることなんです。その為、ホームページで生じうる個体差や状態についてはきちんと表記するようにしています。とは言っても、その工程を含めて一定のものを作るのがプロなんじゃないかと常に探求はしています。
あとは、常に一定のリズムで一定の動作を行うことができる人ほど腕がいい。「動きが多くてなんだか活気のある工場だな」っていうのは間違いで、お寿司屋の職人さんとかお茶の先生も、無駄な動きが一切なくクオリティー高いもの作れる人っていうのは、腕がいいんです。
そして、無駄な動きがないと、その分所作が美しくなる。私たちもそうありたいなと思っています。