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僕の道楽かもしれんけど、やっぱりお茶を揉む以上とびっきりのいいお茶を作りたい 「028 りょうふう」海田園黒坂製茶 黒坂浩教さんインタビュー

2020年07月19日

by 煎茶堂東京編集部

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お茶の歴史ある岡山県で育まれる、スッキリとした渋味の「028 りょうふう」。
海田園黒坂製茶の2代目となる黒坂さんは、大学を出てから35年間、一筋にお茶を揉み続けています。この土地の茶作りの歴史や黒坂さんのお茶に対する想いをお伺いしてきました。

話し手:海田園黒坂製茶 黒坂浩教さん 聞き手:谷本幹人



―――「りょうふう」はどういう特徴がありますか。
この畑の分を買ってもらっているね。「りょうふう」が2俵出来とって、1俵を静岡に出して、1俵をうちで県の品評会に出したら1番になって。それと、あの鉄塔が立ってる山のてっぺんに「りょうふう」の畑があるんやけど、それが同点で2番やった。それで、県知事賞がそこんとこにある「やぶきた」。あとこっちの畑のは中・四国農政局長賞で。

―――今年お茶づくりのテーマみたいなものはありますか。
去年はちょっと浅蒸し系統で。あんまりストレスをかけんように優しく蒸して、そのあとも強く揉んでしまって粉にせんような揉み方を心がけて。結局、何年か「りょうふう」揉んでるんですけど、あんまりつぶしていくと渋味をすごく感じやすくて。

まぁその渋味も、スッキリした渋味やからそれも「りょうふう」の良さでもあるんですけど。今年はあまり強く渋味が出んようにして、蒸し方と仕上げ工程で甘みを出していくような。去年のは、山の上の「りょうふう」が特に渋味を感じたな。

―――岡山の地域でのお茶の歴史ってどういった感じですか。
結構、美作(みまさか)のお茶は歴史が古いらしいです。

この辺の美作方面の農政局の統計事務所が出しとった本には、室町時代の書に「お茶は狭山の“武蔵”、京都の“山城”、岡山の“美作”の三物なり」いうて書いてあったいうて。結構古い本やったから、統計事務所にちょっとこの文章のエビデンス調べてくれ言うたけど、古い書だからアカン難しいわて言われたんじゃ。

―――茶作りが始まったのはどれぐらいの時代になるんですか。
ここからちょっと離れたところに真木山いうお寺があるんだけど、そこに岡山県で最初にお茶の栽培が始まったいう風なこと書いてあった。お寺の宿坊のお坊さんがたくさんいてお茶を飲むようになって、それでその周りでお茶の栽培が広がって。

で、この海田の地域もその一部。真木山のとこで始まったが鎌倉時代で、そのあと室町で全国の書に載るぐらい。岡山は、その頃から番茶じゃな。釜で煮て天日で干して。全国のお茶関係の人に美作いうたら、美作番茶って有名だなあて皆さんに言われるくらい。

―――美作の今の茶づくりはどんな感じでしょうか。
うちは全部自社工場で作って、よその人の生葉もちょびっといれてるけど、今の美作はちゃんと市場に出回るような商業的な茶づくりが盛んじゃなくて、品質を求めて作ってるところは少ない。うちはそれなりの作ろうとしよるけど、このへんで一般農家の人ってあと他には1〜2件くらいで。

―――そういう地域の事情の中で、黒坂さんの次にお茶揉める人…継げる人っていらっしゃるんですか。
早く育てにゃなとは思ってるけど、今のところはなし。お茶揉むのも、近所の人らが手伝いに来てくれてたんですよ。その人らはもう高齢になって亡くなったり。茶工場も今、この美作市では4つしかない。昔はこの海田の谷だけで14〜15件はあったんだけど、今は2件しか残ってない。年齢も…1番若くて45歳。僕が今年57歳になる。

―――そもそも、この海田園黒坂製茶はどのように始まったんでしょうか。
元々お茶の葉っぱの生産農家をおやじがやっとって。昭和38年頃、近所におったおじさんがそろそろおまえも工場始めてみんか言って黒坂製茶が始まって、今で55年になりますね。それで今、2代目ということで大学出てから35年、お茶を揉み続けてます。茶園はだんだん改植なんかもしながら面積も増やしてます。

揉み終わった茶葉は「ふるい」を使って選別していく。目の細かさによって番号が異なる。
―――いいもの作って、ちゃんと評価されてるっていうのが一番ベストですね。
そうだけど、なかなか最近はそうはいってないな。いいお茶を作るいうのは、もしかしたら僕の道楽かもしれんけど、やっぱりお茶を揉む以上とびっきりのいいお茶を作りたいいうのが、やっぱり人間なんで、採算なんか度外視でやるんで。

いいお茶が作れたらやっぱ嬉しいし。去年の県品で1番取った「りょうふう」なんかは、茶刈りにいったときにみずみずしいいいのがよう揃ってて。結構、そういうときって刈るときからわくわくするんです。ほんとお茶、好きなんです。

―――岡山は備前焼とかもあって、焼き物と土は相性がいいみたいなことも聞きますけど、そういうのはあるんですかね。
このへんは昔からようお茶ができる言うてる。ここの土地は、ミネラルが結構含まれてるベタ土。前に専門の先生が来て、ここと違う畑だけど1か所見たら、ここの土はいいなって。

でも、あの崖から200m離れたところに行ったら、ここはあんまりようできんな言うて、ちょっと離れただけで全然違う。だから、ここも最初は上のほうは水捌けが良いけどその下は固い層やったから、そこまで行ったらお茶の成育が良くない。

水が溜まってるところには根は伸びないから。だから植替えで土の下の方まで全部天地返しして。石が出てこんかったらまだ良かったんだけど、丸い石がゴロゴロいっぱい出てきた。

―――やっぱり水捌けは大事ですか。
そう、その次が土作り。土作りは、うちは菜種粕と草入れたり。化成肥料とか化学肥料やったら、一瞬でぱっと効いて終わるような感じだけど、菜種は有機質やから肥料効果が長続きするで。

じわじわじわと、ずっと。そうすると、木もやっぱり元気でずっとおる。人間もガッと栄養取って、あとはヘトヘトになるまで働くじゃなくて、ほどほどに栄養がずっとあるほうがいい。木も一緒じゃ。

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このインタビューは、「観て飲む」お茶の定期便 "TOKYO TEA JOURNAL"に掲載されたものです。毎月お茶にまつわるお話と、2種類の茶葉をセットでお届け中。

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