「桃源郷への入り口」- TOKYO TEA JOURNAL VOL.75 巻頭コラム

「桃源郷への入り口」- TOKYO TEA JOURNAL VOL.75 巻頭コラム

TOKYO TEA JOURNALの巻頭コラムをご紹介。お茶のこと、うつわのこと、お茶菓子のこと。
私たちが企画した商品やよいと思った品に、向き合って、改めて見つめてみて思ったことや考えたことをお伝えします。

桃源郷への入り口

氷をたっぷりと入れたグラスに注げば、ふわりと立ちのぼる甘やかな香り。まるで熟れた桃にかじりついたかのようなジューシーさと、台湾烏龍茶のすっきりとした後味が、火照った身体を癒してくれる。

白桃烏龍茶は、夏にふさわしい香りのお茶。果実のみずみずしさとお茶の清涼感、その両方を一杯のなかに宿すこのお茶は、単なる飲み物ではなく、ひとつの季節の風物詩とも言える存在だ。そして、このお茶の魅力は、味わいや香りにとどまらない。

そもそも桃という果実は、古来よりさまざまな象徴性を帯びてきた。中国では「不老長寿」をもたらす縁起の良い果物とされ、仙人が食べるものとして語られることもある。「桃源郷」という言葉が示すように、桃は現実を超えた世界、夢や憧れの象徴でもある。

一方、リンゴは科学文明の象徴。ニュートンの万有引力の逸話に登場する果実である。現代が「リンゴの文明」であるなら、桃は、人間の感覚や心の営みを象徴する果実と言えるだろう。

その一杯を飲めば、たちまち現実のすぐ隣にある桃源郷への扉が開くような気がする。

少しロマンチックすぎるかもしれないけど、それくらい美味しいと思う。白桃の香りがふわりと広がり、その後に続くのは、台湾烏龍茶ならではのやわらかな甘みと、のどごしのすっきりとした余韻。甘さと渋みのバランスが絶妙で、蒸し暑い日にごくごくと飲みたくなる……。

この夏、白桃烏龍茶とともに、香りの記憶と、心に宿るロマンを旅してみてほしい。きっと、日常がやわらかくほどけるような時間が、そこで待っている。

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