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都松庵としての役割と“京都に住んでる人目線”で作ったデザインの話。都松庵インタビュー vol.1
2022年02月23日
by 神まどか
煎茶堂東京・東京茶寮/デザイナー 青森県生まれ。最近の趣味は中国茶と茶道具収集です。
煎茶堂東京オンライン/銀座店で3月1日(火)から販売を開始する「さくらの煎茶×都松庵AN DE COOKIEセット」。
今回のセットに含まれる「AN DE COOKIE」は、京都で約70年の歴史をもつあんこ屋が手がけるあんこ菓子専門店・都松庵(としょうあん)のお菓子です。
歴史がありながら新しい風の流れを感じる都松庵のこと、シンプルでミニマルなパッケージが出来た理由やデザインについて、都松庵の中尾元さん、桑原春菜さんにお話を伺いました。
都松庵について
あんこの魅力と可能性を、あんこの概念に囚われない発想から提案し続ける。昭和25年創業。京都堀川三条に本店、京都タワーに「KYOTO TOWER SANDO店」を構える。
都松庵のはじまり
煎茶堂東京デザイナー・神(以下、神):
こんにちは。煎茶堂東京の神です。本日はよろしくお願いします! まずは、都松庵さんの起源や歴史を教えていただけますでしょうか。
都松庵・中尾元さん(以下、中尾):
よろしくお願いします。都松庵自体は、もともと製餡会社の都製餡という会社があって、まずそこがスタートです。
都製餡は昭和25年に創業していますので、今から70年ほど前ですかね。
都松庵・桑原春菜さん(以下、桑原):
今年で72年ですね。
中尾:
あんこ屋なので、製餡所ですね。当時は、あんこを専門とする会社というのは全然なくて。
お菓子屋さんはあったんですけど、餅は餅屋みたいなかたちで、あんこはそういう専門のところに依頼されてるお菓子屋さんが多くて、私たちはそうしたお菓子屋さんのあんこを作るというのを一番メインとしてやっていたんです。
でも、徐々にお客さんのお菓子屋さんがあんこを自社で炊くようになっていって、なおかつ、うちみたいにOEMでやってるお菓子の競合もどんどん増えてきてて。
それじゃ今後先細りだよねという話で、約10年近く前に小売りのブランドとして自社ブランドを持とう!ということになり、「都松庵」が始まりました。
都松庵ブランドとしての役割
ただ都松庵自体、1985年には会社があったんですけど、本格的にブランドとしてスタートしたのは約10年前になります。
始めた当初は全く順風満帆ではなくて。お菓子屋ではないんでノウハウも無く、結構苦労してました。
3年ぐらいやって、これじゃ話にならないねという感じだったんです。けれど、お菓子自体は結構面白いのがもともとあったんで、もったいないなあと思っていて。
今回セットになる「AN DE COOKIE」も実は最初からあったんですけど、なにかしらブランドイメージが浸透しないというか、ちゃんとしたブランディングができてなかったんでちょっと苦戦してました。
私はその段階で入社したんですが、その時に思い切ってリブランディングしようと。それが大体7年ぐらい前ですかね。
そこからはパッケージもデザイナーと組んでやり始めて、まずは代表商品を決めて、そこから新しくしていきました。
全体を変えてしまうと今までのお客さんにストレスがかかるので、徐々に変えていってここ1〜2年でようやく全体的な見え方が統一されてきて、今という感じです。
神:
そうだったんですね。ブランドとして活発に動かれたのは結構最近のお話なんですね。
中尾:
そう。だから商品や中身自体は結構前からあるんですよ。
神:
逆に新しく作ったものってどういうのがあるんですか?
中尾:
「MIYAKO MONAKA」という商品は3年前ぐらいですかね。あと「YOKAN FOR COFFEE」というコーヒーのための羊羹も最近です。BLUE BOTTLE COFFEEさんのコラボ羊羹のきっかけになったのがこれですね。
神:
お菓子のアイディアはどのように生み出されているんでしょうか?
中尾:
さっき話に出たデザイナーと話している時に、デザイナーから提案してもらうものもあるんです。
それ以外には親会社の都製餡でいろんなOEMを受けているので、たくさん試作をしててボツになったものの中でも「これはいけるやろう」「これは都松庵で出したい」というものを商品化することもあります。
コーヒーのための羊羹は特にそんな感じで、それをデザイナーに相談したら、デザイナーのほうがそれに見合ったデザインをしてくれて。
神:
なるほど。OEMでいろいろ試作をできた上で販売できるというのは会社にとってもいい流れですね。
中尾:
そうなんです。その辺をなんとか拾い上げてかたちにすることに、都松庵の役割があるのかなとは思いますけどね。
神:
すごく健康的なサイクル。
中尾:
そうですね。無駄がないようにね。
リブランディングで意識した「京都に住んでいる人」の視点
神:
もともとのパッケージからリブランディングされましたが、どういうふうに変えていきたいと思ってらっしゃったんですか?
中尾:
この間、大学の授業で、都松庵のデザインをお願いしているデザイナーのサノワタルさんと私で講義をしたんですよ。その授業で話しながら思い出したんですけど、私たちとしたら、京都のお菓子というのを生かさない手はないんで、「京都」というのも前面に出したいと思っていたんです。
でもね、あんまり、ザ・京都!っていうのはちょっと違うだろうなというのがあって。それで京都を今までと違う切り口で出してくれそうな人を探しててサノさんに行き着いたんですね。
実際そこの考えはサノさんと合致してて。ただすごいのは、サノさんはやっぱりもっと深いところで見てはって。
こないだおっしゃってたのは、「京都に住んでいる人の目線で“新しい京都”っていうのがあるから、それをデザインに起こしてる」と。
実際に京都に来られたら、観光客の方は、ザ・京都のイメージと全然違う部分を感じられる時があるかもしれないと思うんですけど、京都に住んでる人間はその辺結構敏感なんですよ。
だから、実際に京都に住んでる人間が買いたくなるようなものって、逆に言ったらすごくしっかりとしたデザインじゃないと難しいだろうなってのがありました。
そこを起点にデザインをしてもらって、今の新しいデザインになったんです。それを周りの方も分かってくれたのか、結果的に京都駅など色々な場所で販売したおかげもあって「京都土産」というイメージもついたと思います。
それは意図してた部分でもあったけど、ちゃんと狙った通りになってくれて、その辺はデザインの力も大きいなというのはすごい思いましたね。
デザインに取り掛かってもらう前にサノさんとかなり打ち合わせをしてたので、着手してもらってからは完全にお任せしました。
沢山話してみて信頼感があったので、あとはもうそのデザインの大きい枠組みからは外れないように全体的にディレクションしてもらって、今に至ってますね。
神:
デザイナーさんも会社の一員みたいな感じで作られてるのはすごくいいですね…!
桑原:
打ち合わせが、もうとにかく多いですよね。
中尾:
多い。
桑原:
週1でお会いしてやり取りをずっとしているので、サノさんもかなりお話を聞いてくださいますし、こちらもお話をしますし。
神:
それはいいですね!お話の中で生まれてくるアイデアもありそう。