椎茸が世界を平和にするって本当?食を通じたコミュニケーションを豊かにする 椎茸祭 竹村賢人さんインタビュー

2020年10月09日

by 煎茶堂東京編集部

出汁の最大の魅力は「うま味」。第五の味覚と呼ばれる「うま味」には、お茶や昆布などのグルタミン酸、鰹節に含まれるイノシン酸、そして干し椎茸のグアニル酸があります。うま味は単独で使用するよりも組み合わせることで飛躍的に増すという「相乗効果」があり、グルタミン酸を含むお茶と、この干し椎茸のグアニル酸も相乗効果を生み出す相性のいいペアなのです。

日本の文献に干し椎茸が初めて登場するのは、曹洞宗の祖、道元が記した「典座教訓」。禅寺の食を仕切る「典座」の教えを綴ったもので、干し椎茸のうま味がいかに大切にされていたのかが描かれています。現代の出汁は、動物性のうま味が欠かせないため、ベジタリアンやヴィーガンは味わうことができません。

菜食主義の人も、そうでない人もおいしいと感じてもらえる出汁を作りたい。その思いをきっかけに「椎茸祭」を立ち上げ、椎茸出汁や干し椎茸を製造・販売している竹村 賢人さん。「椎茸の出汁が世界を平和にする」とお話しする竹村さんに、その理由と椎茸の味わい深さについて伺いました。

教えてくれたのは…椎茸祭・竹村賢人さん

株式会社 椎茸祭 代表取締役。
2017年に椎茸祭を創業し、椎茸の「ほっ」とさせる力で世界を平和にすることを目指す。肉や魚を食べることのできない彼女(現在の奥さん)と同じ料理をおいしく食べたいという思いを出発点に、椎茸出汁のうま味が持つポテンシャルを追求し続けている。
椎茸祭公式HP:https://shop.shiitake-matsuri.com/

椎茸は世界を平和にするって本当?

お茶や出汁を飲んだあと、ほっと息が抜けたことはありませんか。この出汁の力に気づいたのは、実はインドの企業で働いていた時です。インドはすごく好きな国ですが、つらかったことがふたつあって、ひとつが湯船に入れないこと、もうひとつがラーメンや味噌汁などの出汁が飲めないことでした。このふたつって、どちらも思わず「はーっ……」って息が抜けてしまいますよね。

この「はーっ……」を作りだしたい、それをきっかけに世界を平和にしたい。それが起業の際に考えたことでした。でもお風呂のビジネスは元手がかかる。そこでまず出汁について考えようと。今、インドの人口はものすごく増えていて、将来的に世界中のかなりの割合を占める可能性があります。でもインドはベジタリアンが多いので、動物性のうま味が加わる出汁は浸透しづらいんです。それならインドのベジタリアンでも飲むことができる、きちんとおいしい出汁ができたら世界平和の鍵になるかも知れない。そこで目をつけたのが椎茸でした。

椎茸出汁のおいしさを広く伝えるためには、椎茸業界自体を元気にしなきゃいけない

一般的な出汁は、鰹節などのイノシン酸と、昆布などのグルタミン酸を合わせますよね。これはうま味の相乗効果といって、単独で味わうよりも、掛け合わせることで7〜8倍ものうま味を感じることができるからです。でもグルタミン酸と合わせるのは、必ずしもイノシン酸である必要はないんです。もうひとつのうま味成分、干し椎茸のグアニル酸を合わせることでも、うま味の相乗効果を生み出すことができます。

ではなぜ、椎茸出汁があまり市場として広がっていないのかというと、干し椎茸を作るのがけっこう面倒くさいから。干し椎茸に使う椎茸は、昔ながらの原木栽培で作る必要がある上、干す工程自体にも手間と時間がかかります。しかも椎茸業界自体も縮小化していて、ここ10年で4割ほどの椎茸農家が辞めていってしまっているんです。せっかく椎茸はすごい底ヂカラを持っているのに、このままでは“ヤバい、廃れてしまうぞ”と。

だから椎茸出汁のおいしさを広く伝えるためには、椎茸業界自体を元気にしなきゃいけない。これは大変だから誰もやらないだろうなあと思いつつ、やっている感じです。

食を通じたコミュニケーションを豊かにする

今、ヨーロッパのヴィーガン人口は10%に達しています。そのうちの少なくない人が、思想として菜食を選択しているのではなく、家族や仲間に合わせて菜食を選択しているそうです。今後この割合はさらに増えてくるでしょうし、「プラント・ベース(植物由来)の方が無難」になってくると思います。それなら、菜食の人も、そうではない人も、同じように「おいしいね」と言い合える選択肢があった方が絶対にいい。菜食でない人も「おいしいから」選んでもらえるプラント・ベースの出汁を作ることは、食を通じたコミュニケーションをより豊かにするし、それってやっぱり世界平和につながると思うんですよね。

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