- 読みもの
- お買いもの
- TTJ
- 東京茶寮
- 私達について
-
作家名一覧
- 煎茶堂東京
- 相馬佳織
- フじイまさよ
- 稲村真耶
- 児玉修治
- 小野陽介
- 高木剛
- 森岡希世子
- 石田誠
- ちいさな手仕事
- 光藤佐
- 須原健夫
- 淡海陶芸研究所
- 千田稚子
- 中村譲司
- 多田佳豫
- 北井里佳
- 齋藤有希子
- 酒匂ふみ
- 白鷺木工
- 秀野真希
- 林沙也加
- 作山窯
- 中里花子
- 村田匠也
- 荒賀文成
- 水野悠祐
- 南裕基
- 只木芳明
- 色原昌希
- 小宮崇
- 飯高幸作
- 三輪周太郎
- 横山拓也
- 亀田文
- 亀田大介
- 中村豊実
- 高橋禎彦
- SHISEI
- 松徳ガラス
- 村上雄一
- 黒川登紀子
- YŌKI
- 加藤かずみ
- 瀬戸國勝
- 阿部春弥
- シャンブリートリオ
- 入江佑子
- 三野直子
- 古谷宣幸
- 渡辺キエ
- 後藤睦
- 三浦ナオコ
- 濱岡健太郎
- 山田哲也
- WASHIZUKA GLASS STUDIO
- 李荘窯
- おじろ角物店
- 船串篤司
- はなクラフト
- 光泉窯
- 萩原千春
- 藤村佳澄
- 中原真希
- 堀宏治
- 広末裕子
- 文山窯
- 伊藤萠子
- 竹下努
- 角田清兵衛商店
- Eliu
- 紙上征江
- 天野千香
- 四十沢木材工芸
- 水野悠祐
キレのある深い渋味を特徴とするモダンな深蒸し茶。003 こいしずく
2019年04月17日
by 煎茶堂東京編集部
現在、煎茶堂東京・東京茶寮で提供されている、シングルオリジン煎茶「003 こいしずく」をご紹介します。
003 こいしずく
キレのある深い渋味を特徴とするモダンな深蒸し茶。
昔ながらの製法と現代の味わいのハイブリッド。
甘味:★ 苦味:★★★ 旨味:★★
すっきりとあと引く渋味が魅力。渋いお茶といっても、古臭さを感じさせないのが特徴で、若い女性に人気が高い。『やぶきた』品種だが、萎凋により風味が増しているためモダンな印象がある。静岡の深蒸しだが、とろみや粉っぽさは少ない。茶葉が曲がったヨンコン茶が実に趣深く、伝統と革新の共存を感じられるお茶だ。
合組 | 『やぶきた』シングルオリジン |
産地 | 静岡県「大原」 |
農園 | 大原第一共同製茶組合 |
標高 | 83m |
蒸し | 深蒸し |
火入れ | 84℃ 10min |
来歴 | 静岡県在来種実生 |
農林水産省 品種登録年 | 1953年 |
種苗法 品種登録年 | 未登録 |
早晩性 | 中生 |
品種の特性 | 総合的に優れた品種で、国内の全栽培面積の約8割を占めている品種。
甘味のある濃厚な味と優雅な香気を持っている。 |
命名の由来 | 篤農家・杉山彦三郎が竹藪を開墾して茶畑にした場所から選抜。その場所が、竹藪の北側だったため『やぶきた』と命名。ちなみに、『やぶみなみ』もある。 |
茶葉
水色
生産地・品種について
深蒸し茶に心血を注ぎ、技術を磨き続ける伝統工場の「透き通る深蒸し茶」。
藁科川のそば、本山地区で一風変わった見た目をしている工場があります。そこは、深蒸し茶に対して最も真摯に研究を続けてきた生産者が立つ工場。その名も「大原第一共同製茶組合」。日本の茶園面積75%を占める品種『やぶきた』、その最もポピュラーな品種で「こいしずく」は作られています。静岡で生まれ、煎茶のひとつの基準とまでなった『やぶきた』を長きに渡って作り続けてきた「大原第一共同製茶組合」が送り出す、ひと味違う『やぶきた』の味わいには理由がありました。
「こいしずく」は深蒸し茶を追求した結果、他のラインにはないとても変わった工程で作られています。茶は摘んだ瞬間から発酵が進行しまうため、通常は摘み取ってから早めに発酵をとめる蒸青という蒸しの工程に入ります。ですが、「こいしずく」はあえて蒸青せず8時間の“萎凋(いちょう)”を行っています。萎凋の最中は建物内部に霧を発生させ、外光を極力遮断させて葉緑素の反応を抑える徹底ぶり。その次の蒸しの工程では通常の2倍の時間をかけて深蒸しにしています。その後、揉みの工程に入るのですが、深く蒸したお茶は壊れやすく、力を掛けすぎるとボロボロになってしまうため、揉みの2段階目“揉捻”工程を2つに分け、2台の揉捻機を並べているのです。代わりに最後の揉みである“精揉”は省かれ、優しく緩く揉まれてしっかりと残った茶葉が少し曲がった形の「よんこん茶」になります。そのような試行錯誤が40年の期間を経て、現代まで続いてきているのです。
ライナーノーツ
「こいしずく」は名前からして可愛らしいのだけど、飲んでみると期待とは裏腹に鋭い渋味のある、モダンな味わいのお茶だ。深蒸し茶はとろっとした緑色のにごりを期待しがちだが、1煎目の水色は透明感があっていい意味で予想を裏切られる。このお茶を作っているのは、伝統の製法を今も続ける工場(昭和54年設立)、大原第一共同製茶組合。伝統製法でモダンな味、これは一体どういうことだろう。工場の立ち上げ時からお茶を作り続けている和田さんにお話を伺った。その当時、最先端の機械設備と画期的だった衛生的な建築構造を設け、工程ごとに区画を分けて考案されたのが、「V字型」の工場。それだけで男心がくすぐられる響きだが、その内部はもっと痺れる。武骨な巨大設備に鉄の梁、インダストリアルな雰囲気に包まれる2人の佇まいに、一般的にイメージするステレオタイプなお茶作りの現場のイメージは覆される。お茶の工場と言われるまでは、車に搭載される工業部品か何かを作っているのではないかと思ってしまうほど。この男性2人が「こいしずく」を作っているのだから、先のギャップも生じよう。というのは短絡的だが、無骨なイメージとは裏腹にこの工場の製造プロセスは繊細そのもの。通常の2倍の蒸し時間をとっているため、葉はとても柔らかく、その後の“揉み”の工程で負荷を掛けすぎると千切れて粉々になってしまう。優しく丁寧に、通常より多くの時間と工程を経て作られるのがこの「こいしずく」なのだ。味や製法など、様々な二面性を内包したつくづく面白いお茶だと思う。僕はこういうところもお茶の魅力の一つだと思い、飲む人が思いを馳せて楽しんでもらえたら、と思う。
LUCY ALTER DESIGN 谷本幹人