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作り手のことば「海外にも、作品とお茶の時間の素晴らしさを伝えたい」陶芸家・塚本友太さんインタビュー

2025年03月14日

by 煎茶堂東京編集部

伸びやかで美しいフォルムを数多く生み出す、若手陶芸家の塚本友太さん。制作活動の傍ら、お茶を淹れる時間も大切にされているといいます。

今回、煎茶堂東京で塚本さんの作品をお取り扱いするにあたり、塚本さんのお人柄、作品や陶芸に対する想いなどを伺いました。

塚本さん、今回はよろしくお願いします。まずは、簡単なプロフィールを教えていただけますか。

よろしくお願いします。僕は1994年愛知県岡崎市生まれで、名古屋芸術大学美術学部を卒業後、愛知県常滑市にて大澤哲也氏のアシスタントをしながら制作活動を開始しました。

2019年愛知県武豊町に築窯し、2021年に独立して現在に至ります。

ありがとうございます。器を作ることになったきっかけは何だったのですか?

明確なきっかけはないのですが、幼い頃からモノづくりが好きで、その延長で美大へ進学しました。大学ではさまざまな素材を扱うなか、粘土は手に馴染み、思い通りに形を作れる感覚がありました。

大学の課題でオブジェを制作することもありましたが、あまり熱が入らず、気づけば器ばかり作っていました。

今思えば、焼き物のなかでも器に心が向いたのは、実用性ゆえに、自分の生活にとても近い存在だったからだと思います。

器づくりにおいて、塚本さんが好きな工程は何ですか?

最も好きな工程はろくろ挽きです。

土の状態を細かく感じ取りながら、適切な力を加えることで、土が滑らかに伸びていく感覚がとても心地よいからです。一つひとつ形が生まれ、作品が次々と増えていく様子に、「この手で新たなものを生み出している」という実感が湧いて嬉しくなります。

制作活動のインプットを教えてください。

生活のなかで出会う意識的なもの、無意識的なもの、すべてがインプットです。身の回りの物や環境から、時間をかけて自然に染み込んでくるさまざまなエッセンスが、作品や自分自身のあり方に反映されていくと考えています。

そのため、ほかの作家の作品を集めて研究し、自分が「好き」「心地よい」と感じられる物や体験を、できるだけ身近に置いておくことを大切にしています。

器を作るうえで一番大事にしていることは何ですか?

シルエットの美しさです。

タイミングによって、良いと思うバランスが常に変化していくので、日々調整しながら制作しています。

塚本さんの作品は、装飾的な造形のものからシンプルなものまで、伸びやかな雰囲気を感じます。形を決めていくときに、何か指針のようなものはありますか?

普段から無意識的に処理しているため、言語化できない部分が多く難しいのですが、「どういう風に輪郭の線を流していけばシャープさが出るか」と考えながら形を作っています。

伸びやかさというのも、まさにポイントかもしれません。

今回煎茶堂東京でお取り扱いする作品のなかには、総銀彩のものも含まれます。
土の風合いを感じられるシンプルな作品が中心でありつつ、銀彩の器も手がけている理由や、銀彩の魅力について教えてください。

作品のバリエーションに銀色を取り入れることで、展示空間が引き締まり、より印象的なものになるからです。

焼き物に金属を焼き付ける場合、一般的に金、銀、プラチナ、パラジウムが使われます。銀は、プラチナやパラジウムに比べて光沢が控えめで、柔らかく品のある質感が特徴です。

また、これらの金属のなかで経年変化するのは銀だけ。時間の経過とともに、銀色から黄金色や黒色へと変化し、その時々でさまざまな表情を見せてくれるところも魅力です。

少し話は変わるのですが、現在奥様がドイツで働かれていると拝見しました。ドイツの風土や文化に触れる機会もあると思いますが、ご自身の考え方や作品づくりに何か影響はありますか?

ドイツの人たちは、日本人に比べて無理をしない気がします。

例えば、仕事が終わらなくても無理に残業することはなく、定時になるとさっと帰ってしまいます。しかも定時が早く、帰宅ラッシュは毎日15時から16時ごろです。

そんな調子なので、当然いろいろなサービスが日本と比べて不便なのですが、それでも社会は問題なく回っています。日本にいると、あらゆるサービスが行き届いている反面、ちょっとした不便にすぐイライラしてしまいがちです。

でも、実際には、多少不便でも慣れてしまえば大した問題ではないんですよね。


僕自身、以前は「何でも完璧にやらなければ」と自分を追い詰めるクセがありましたが、ドイツの人々の生き方を見て、救われた気がしました。

完璧じゃなくても大丈夫なんだ、と。

そう考えられるようになってから、毎日を生きるのが少し楽になりました。

塚本さんは中国茶や日本茶がお好きとのことですが、お茶を淹れる時間や飲む時間はどのような意味を持っていますか?
作品づくりに生きていることがあれば、あわせてお聞かせください。

お茶の時間は、慌ただしい日々に追われて心が乱れそうなとき、立ち止まるきっかけを与えてくれます。一杯のお茶を淹れることで頭が整理され、気持ちが落ち着き、もう一度課題に向き合う気力が湧いてきます。

風の心地よさ、陽の光のぬくもり、土や植物の香り、飛び交う虫たち、美しく移り変わる空の色…

そうした自然を感じながらお茶を淹れる時間は、僕にとってとても大切なひとときです。

最後に、今後挑戦してみたいことはありますか?

海外での展示にも力を入れていきたいです。

昨今は中国、台湾などのアジア圏で日本人の作品が人気ですが、欧米諸国の人々にも、作品とともに、お茶の時間の素晴らしさを伝えることができればと思います。

塚本友太さんの作品

Instagram:@pajero.boro
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