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作り手のことば「控え目でも長く愛用してもらえるシンプルな茶器作りを」陶芸家・天野千香さん
2023年11月24日

by 煎茶堂東京編集部
自作した釉薬と化粧土で粉引の器を作る天野千香(あまの・ちか)さん。控えめながら奥深い器は、時間が経つほどに風合いが増し、お茶の時間を豊かに彩ります。
今回は、煎茶堂東京でのお取り扱いに伴い、天野さんにお話を伺いしました。
天野さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、器を作ることになったきっかけを教えてください。
小さな頃から手芸や工作が好きな子どもでした。近所の児童館が手工芸にとても熱心で、革細工でペン立てを作ったり、籐でかごを編んだり、ハンカチを染めたり、色々なものづくりに触れて育ちました。
高校卒業後は音楽関連の大学に通っていましたが、美術工芸や、演劇専攻の友人が周りにいたので、そんな環境で刺激を受けたのかもしれません。
26才の時に、どうしても陶芸がやりたくなって美大で基礎を学び、その後は陶芸教室を運営する傍ら(現在は終了)、個展やグループ展など展示会を中心に活動を続けています。
作品を作る工程の中で、好きな工程と理由を教えてください。
ロクロで成形をすることです。土の塊から形が生まれる工程や、土の声を聞いているわけではないけれど、まるでそう感じられるような、土の状態に自分の手を合わせていくような感覚が好きです。
今回取り扱う作品「ヒビ粉引後手急須 茶壺」「ヒビ粉引片口」「ヒビ粉引茶杯」は、粉引ならではの表情の豊かさが魅力です。作品に込めたこだわりをお聞かせください。
粉引は鉄分の多い赤土で成形して、生クリームのような泥状の白い土(白化粧)で素地を覆い、更に木灰の釉薬をかけて焼成しています。
赤土・白化粧・釉薬と3層で構成されるゆえに、白化粧の濃淡や赤土がうっすら透けたり、赤土に含まれる鉄粉が吹き出したり、様々な表現を見せるところが、粉引の魅力かと思っています。
化粧土はヒビが入るもの、入らないものと、ものにより特徴がありますが、灰釉の調合を変えて化粧土の表情に合うものを探っています。
ヒビ粉引の場合、化粧土の濃度が濃いと素焼き後に剥がれてしまう確率が高く、だからといって薄くかけるとヒビが入らないので、濃度の調整が難しくて。
濃度の数値は予め決めているのですが、同じ数値でも幅があるので最後は自分の感覚に頼るしかありません。一発勝負でもあるので悩ましいですが、納得がいく仕上がりになるまで試行錯誤しています。
中国茶も好んで飲まれている天野さんですが、器を作るうえで影響を受けた部分はありますか?
数年前に中国の友人ができた事をきっかけに中国茶器を作りはじめました。さらに、茶器作りの勉強の為に、煎茶道と中国茶も習い始めたんです。
急須作りを学ぶことから、お茶の歴史や風土、暮らしや価値観に興味がわき、何よりその背景にある思いに触れたいと思うようになりました。日本茶、中国茶に関わらずお茶そのものの美味しさにもすっかり魅了されています。
急須のデザインへの影響という点では、伝統的な中国の紫砂急須や日本の常滑の急須を基本に粉引の急須として仕上げています。
ヒビ粉引ならではのヒビの表情や、鉄粉、焦げなど楽しんでいただけたらうれしいですね。
また、お茶の時間は瞑想のような心を整える時間でもあると考えており、華美なものよりも、落ち着いた枯れた風合いを、控え目でも長く愛用してもらえるようなシンプルな茶器作りを目指しています。
作品作りのために、日常生活で気をつけていることや役立てていることを教えてください。
ただお茶を淹れて飲む習慣と、庭でぼんやりすることです。直接役立っているかは分からないのですが、心が落ち着く大切な時間になっています。
器を作る上で一番大事なことは何だと思いますか?
お茶の道具を作るうえで機能性はもちろんですが、手に取って眺めたり、慈しめるような一面があるかどうか、土の表情が生き生きとしていることを大切にしています。
今後挑戦してみたいことはありますか?
耐熱の土瓶やポットなど、お茶周りの道具や、暮らしの道具を今後も作っていきたいです。