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作り手のことば「一見地味でも、使うと力を感じられる懐の深い作品を作りたい」陶芸家・高木剛さんインタビュー

2024年08月09日

by 煎茶堂東京編集部

移住先の福岡県うきは市にある「李椿(リチェン)窯」で、蹴(け)ろくろ※を使った器づくりを続ける、陶芸家の高木剛(たかぎ・ごう)さん。

月に数日のみオープンする、ご自身の展示室「李椿」での作品展示のほか、京都を中心に数多くの企画展に参加するなど、精力的に活動されています。

今回、煎茶堂東京で高木さんの作品をお取り扱いするにあたり、高木さんのお人柄、作品や陶芸に対する想いなどを伺いました。

※蹴ろくろ:足で蹴って回すろくろ。九州から関西にかけての西日本で主に普及してきた。

高木さん、今回はよろしくお願いします。まずは、簡単なプロフィールを教えていただけますか。

よろしくお願いします。私は鹿児島県出身で、20歳のときに山梨市で活動していた作家のもとで修行し、2008年に京都市(旧京北町)で独立を果たしました。李朝時代の器に強い魅力を感じたことから、2012年には韓国の青松(チョンソン)白磁窯※で短期研修を受けました。

その後、2020年に福岡県うきは市へ移住し、現在に至っています。

※青松白磁:韓国・慶尚北道(キョンサンブクド)青松郡にある陶磁器製造企業。青松郡が直接管理しており、朝鮮時代を代表する四大民窯の一つに数えられた。

高木さんが器を作ることになったきっかけを教えてください。

20代のとき、当時東京で働いていた父親からのすすめがあって、東京の器ギャラリーで働き始めました。オーナーさんが同郷ということもあって、子どもの頃から手仕事に興味を持っていた私に引き合わせてくれたんです。

そのギャラリーで働く中で、陶器に興味を持つようになりました。やがて、自分も焼物を作ってみたいと思うようになり、ご縁もあって山梨の作家のもとで修行するに至りました。

陶芸を始められた当初は、さまざまなアルバイトを掛け持ちしながら制作活動を行っていたと伺いました。当時のご経験が現在の器づくりに生きていることを教えてください。

20代の頃、飲食店のアルバイトで調理を経験しました。料理を盛り付けたときに映える形の器を作ろうという意識に、この時の経験が生かされていると思います。

今でも、自宅にいるとき余裕があれば、自分で料理して、自分の作った器に盛り付けています。

李朝時代の白磁に魅せられたことが、今の作品づくりにつながっていると伺いました。高木さんの考える、李朝時代の作品ならではの魅力とはどのようなものでしょうか?

李朝時代の器に限らず、「おおらかさ」は感じるものに魅力を感じます。

おおらか、といっても単に「ゆるい」わけではありません。韓国の古陶磁は、形のバランス、口縁の作りなどをよく見ると「ゆるさの中にも緊張感を持っている」と思います。

技術の高さだけでなく、作る人の美意識や感性が出ているように感じるんです。作者の表情が宿っているから、見たり使ったりしていて、安らぎを感じる。そこにとても惹かれます。

韓国・青松白磁窯での短期研修で学んだこと、印象に残っていることを教えていただけますか?

青松白磁窯には2週間ほど滞在し、主にろくろ成形を学びました。私が、定番で今もよく作る高台皿もこのときに教わったものです。

伺ったのは寒い時期でしたが、オンドル※で部屋を暑いくらい暖めていただき、皆さんにとても親切にしていただきました。

古い窯跡も見に行かせてもらって、陶片などから学ぶこともありました。

※オンドル:かまどや炉から出る熱い煙を床下の管に通すことで部屋を暖める、朝鮮半島で伝統的に伝わる暖房設備

ご自身のギャラリーや窯の名前になっている「李椿」には、どのような意味や想いが込められているのか教えてください。

李朝時代の焼き物が好きということから、李を頭につけました。椿は好きな花の一つで、現在の窯場が以前、椿の苗木を育てていた場所だったこともあり、合わせて李椿としました。

高木さんの作品には、どこか優しい雰囲気やまあるい印象を感じます。作品づくりで何か意識されていることはありますか?

特に意識することはないのですが、「自分らしい形とはどんなかな」と考えることはあります。私が思う「自分らしい形」は、奇をてらうことなく、できるだけシンプルに仕上げる形です。

一見すると地味でも、使ってみると器としての力を感じられるような、懐の深い作品を作れたらと思っています。

作品を作る工程の中で、高木さんが好きな工程とその理由を教えてください。

ろくろを挽いて成形する工程が好きです。思いどおりにならないところは、かえって土と会話しているように感じます。会話を通して、その土らしさを出せるよう心がけています。

作品を作るにあたって、何かインプットはありますか?

美味しいものを食べに行ったり、良い音楽を聞きに行ったり…。自分の興味のある物事から、器づくりのインスピレーションを得ることがあります。

高木さんが考える、器を作る上で一番大事なことは何ですか?

できるだけ自然体でいること。常に、柔軟に物事を見たり感じたりできる自分でありたいと思っています。

最後に、今後挑戦してみたいことがあれば教えてください。

私の窯場には灯油窯と薪窯(穴窯)があります。穴窯で焼くのは、今のところ年に3回ほどのペースなので、今後はもう少し増やしていきたいです。

高木剛さんの作品

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