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用の美の精神を宿す。須原健夫さんの茶道具
2024年07月04日
by 煎茶堂東京編集部
大阪在住の金工作家の須原健夫(すはら・たけお)さん。東京で彫金を学んだ後、「yuta」という屋号で自身の工房を立ち上げ、制作を始めました。
もともとジュエリーを制作されていましたが、日本のものづくりの産地を巡った経験や、民藝との出会いから、主に彫金や鍛金の技法を用いた真鍮のカトラリーを制作されています。2023年に兵庫県宝塚市に工房を移し様々な作品を生み出しています。
そんな須原さんの作品から、お茶を飲むシーンにフォーカスした道具3点をご紹介します。
「菓子匙」
全長145mmの菓子匙は、作家によってひとつひとつ丁寧に手作業で作られています。滑らかでしなやかな流線のライン、シンプルな造形の中に宿る美しさが魅力的です。和洋問わず、甘味をいただく時間にささやかに寄り添ってくれます。表面は上品な艶消し仕上げで、気分を上げてくれます。
真鍮の製品は、空気に触れるとくすみや黒ずみが出る性質があります。そんな経年変化、使用していくうちに鈍い光に変わっていく経過を楽しむのも、真鍮カトラリーの醍醐味のひとつ。時間によって味わいが深まる、愛すべき道具です。
「茶匙」
お茶を入れる時に欠かせない茶匙は、所作が美しくなるものを選びたいです。須原さんの茶匙は、繊細で絶妙な曲線が魅力的。卵のような、落ち葉のような、自然物から感じる柔らかな形が、金属で表現されている面白さもあります。
様々な茶のシーンで活躍するフォルムで、お茶を始めたばかりの人にも、とっておきの道具をもっておきたい方にもおすすめです。
「茶則」
茶則は、茶葉を茶壺に移す時に利用する道具で、もともと文房具だったとも言われています。
茶葉の存在を引き立てる須原さんの作る茶則は、真鍮の風合いと模様の中で、茶葉が映えるように、設計されています。
『ふと静かに耳を澄ました時に聴こえてくるような美しさを意識して制作しております。生活のふとした静寂と共に、傍に置いていただけるとうれしいです』と自身の生み出す作品に対して、須原さんが言葉を残しています。
作品の素朴でやわらかい風合いは、生活の中で使っていく中でも静かな落ち着きをもたらしてくれます。
そして民藝を愛する須原さんが大切にしているのは、用の美の精神です。柳宗悦らが唱えた日本の暮らしと、そこに根付く意識。華美な装飾ではなく実用性の中の美しさを見つめるような視線が、作品の内側から感じられます。
日常の実用性、誠実で丁寧な生活に共鳴しながら、長い時間をともに過ごす相棒として、ご自宅に迎えてみてはいかがでしょうか。