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作り手のことば「草津焼が、草津に興味を持つきっかけになればいい」淡海陶芸研究所 陶芸家・山元一真さんインタビュー
2024年06月28日
by 煎茶堂東京編集部
滋賀県草津市に生まれ、父の山元義宣さんとともに「草津焼」制作に情熱を注ぐ、淡海(おうみ)陶芸研究所の二代目・山元一真さん。
草津焼は、この地で過去につくられていた焼き物の系譜を持ちながらも、1997年に市の指定ブランド(第1期)、2019年に「草津ブランド」の指定を受けた、新しいブランドです。
今回、煎茶堂東京で淡海陶芸研究所の作品を取り扱うにあたり、山元さんのお人柄、草津焼のこと、作品や陶芸に対する想いなどを伺いました。
山元一真さん、今回はよろしくお願いします。まずは、簡単なプロフィールを教えていただけますか。
よろしくお願いします。私は、滋賀県草津市にある淡海陶芸研究所の二代目にあたります。
私の父・山元義宣が1985年に開窯(かいよう)し、地元の泥土を使った「草津焼」を制作する窯元として活動してきました。草津焼は、地域産業活性化やブランディングの一環として草津市が定める「草津ブランド」15品目の1つに指定されています。
お父様とともに、器づくりの道に進んだきっかけは何だったんですか?
やはり、父が陶芸家だったので、生まれたときから土が常に身近にあったことは大きいでしょうね。自然と「将来は陶芸家になる」という選択肢を想像しやすい環境だったんだと思います。それに、私自身、幼い頃から土遊びが好きだったんです。
そんなことから、高校卒業後、京都で陶芸を学ぶ道へと進みました。
作品を作る中で、山元さんが好きな工程と理由を教えてください。
ろくろでの成形作業が好きですね。手捻り(てびねり)※やタタラ※は静物を造形していくという感覚ですが、ろくろによる成形は動的です。回しながら姿が変化していく過程には、常に土とのコミュニケーションがあるような気がします。だから、いつまで続けていても飽きませんね。
作品を作るときのインプットはありますか?
自然の造形から着想することが多いように思います。工房から見える野山にふと目を向けると、季節の草花たちが織りなす豊かな造形が目にとまります。
例えば、今回煎茶堂東京で扱ってもらう蓋碗は、野山で目にとまった「ツリガネズイセン」の鈴のような曲線を、器の形状に落とし込んだものです。
そうなんですね。同じく取り扱いを予定している「糸切ティーポット」は、思わず手に取りたくなる斬新で魅力的な造形をしていますよね。この造形は何から着想を得たものなんですか?
糸切ティーポットの形状は栗の形がモチーフになっています。ろくろから器を切り離すときには「しっぴき」と呼ばれる切り糸を使うのですが、あえてその模様を残しています。切り離した部分をそのまま残すという造形上、削りを入れることができないので、成形作業がとても難しい作品です。
続いては、少し視点を変えて「草津焼」について伺います。信楽焼の生産地として有名な滋賀県ですが、「草津焼」というのはどういった特徴をもつ陶器なのでしょうか?
まず、ブランドとしての草津焼は比較的新しいものですが、この地では過去に焼き物が生産されていました。
7世紀後半頃、大津京※が都だった時代には、当地で須恵器(すえき)が焼かれていたという記録が残っています。いわば国家事業のようなもので、国庁に納めるための食器や硯(すずり)などを制作していたようです。
現代の私たちが作る草津焼も、当時の土の特徴を引き継いでいます。硬質で水を通さない性質のため、電子レンジでも使用できる頑丈な陶器です。
歴史を紐解き、新たに生まれ変わった「草津焼」を伝統工芸として根付かせるためには、今後どのようなことが重要だと考えていますか。
平易な言葉ではありますが、「つづける」というのが大前提でしょうね。そのうえで、ローカルな取り組みと、外に向けて発信していく取り組みの両輪を大切にしていきたいです。
ローカルな取り組みでいえば、近隣の教育機関と連携して造形授業を実施しています。外に向けて発信していく取り組みでいえば、まさにこのインタビューがそうですよね(笑)。
地元の人に愛してもらい、外の人に知ってもらうことが、伝統につながっていくのだと思います。草津焼を通して、草津に興味を持っていただいたり、草津を好きになったりする動機になったらとてもうれしいです。
山元さんが思う、器を作るにあたって一番大事なことは何でしょうか?
器の使い手とのコミュニケーションとでも言いましょうか…。どのように持たれ、どのように口に触れ、どのように使う人の暮らしの中にあるか、という想像を突き詰めていくことが、最も大事なことだと思っています。
器は、生活の中で使われることによって、価値が生まれるものですから。
最後に、今後挑戦してみたいことがあれば教えてください。
常に新たな造形には挑戦したいと思っています。今、興味があるのは茶壺ですね。
中国出身の友人ができたことをきっかけに、中国茶の道具に興味を持ったのですが、さまざまな造形の一つ一つに、そこに至った文化的背景があるんです。新たな造形に挑み続けることで、背景にある文化について知り、自分自身の思考や創作の幅を広げることができると思っています。