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草津に根付く、新しい焼き物。淡海陶芸研究所の器
2024年06月27日
by 煎茶堂東京編集部
滋賀県草津市の静かな里山に位置する、淡海(おうみ)陶芸研究所。父の山元義宣さんと息子の山元一真さんの二代の陶芸家が、草津焼を制作する窯元です。
草津焼は、「瀬田シルト」という昔ながらの粘土を原料に作られています。鉄分を多く含む土から作られる草津焼は、軽量なうえ、硬質で丈夫。電子レンジも使用できるため、日常的に気軽に使える陶器です。また水分を通しづらく、入れたものの匂いが移りづらいというのも特徴です。
淡海陶芸研究所の草津焼の作品から、白泥(はくでい)と呼ばれるシリーズの器を5点、ご紹介します。
今回紹介する器は、やわらかな発色と質感が特徴的な白泥という技法で仕上げられています。
淡海陶芸研究所では、ろくろで成形した器をベースに、鉄分を取り除いた独自の配合の泥を上掛けし、さらに透明の釉薬でコーティングした三層構造で器を作っています。下地がところどころ浮き上がって、土のやさしさと力強さが感じられる雰囲気に。白磁にはない独特の風合いが魅力です。
「白泥小煎茶碗」
高さ5.5cmと小ぶりの小煎茶碗。煎茶の色が美しく映えるような穏やかな白色が魅力的です。ふちの部分に下唇にフィットする反りが施されていて、飲み心地もなめらかです。
茶碗の表面にある小さな窪みは、手に持った際に滑らないように指どめの役割を果たしてくれます。まるで茶碗のえくぼのような、愛らしいアクセントが印象的です。
「白泥蓋碗」
「ツリガネズイセン」というユリ科の花からインスピレーションを受けて作られた蓋碗。野山で目にとまった鈴のような花の曲線が、作品にそっと息づいています。
「白泥糸切ティーポット」
オブジェのような大胆な造形が目をひくティーポット。「栗」の形状からヒントを得て作られました。ボディのフォルムが、表と裏で異なり、それぞれの印象の違いが面白いです。
ろくろから器を切り離す時に生じる糸の模様を、あえて残すことで、手仕事のあたたかみが感じられます。
「白泥片口」
水切れがよく、あらゆるシーンで使いやすい定番の片口酒器。約2合の容量です。どこか生命感を感じさせるフォルムは、使用するたびに愛着がわいてくるような魅力があります。こちらも小煎茶碗と同様に、指どめの窪みがアクセントになっています。
「白泥牙杯」
左右非対称のゆらぎのある形の杯。牙をモチーフに作られ、野生的で力強い造形が魅力的です。高さ15cmの安定感ある杯は、手にしたときのフィット感も心地よいです。
淡海陶芸研究所のある草津市、丘陵一体では7世紀から8世紀前半まで須恵器が焼かれていました。その遺構からは、水がめなど生活の器たちが出土しているそうです。
そんな歴史ある土地に、草津焼は1985年に開窯し、1997年には市の指定ブランド(第1期)、2019年に「草津ブランド」の指定を受けた新しい焼き物です。
これから草津の伝統文化として、深く土地に根付いていく、さらに後世に残っていくような器を、淡海陶芸研究所は愛着を持って作り続けています。