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作り手のことば「うつわの表情は“窯の神さま”にゆだねて」陶芸家・多田佳豫さん
2024年03月01日
by 煎茶堂東京編集部
パリを拠点に現代美術分野で活躍したのち、帰国して陶芸の道に進まれた多田佳豫(ただ・かしょう)さん。思わず情景が浮かぶような淡い釉薬使いの器に癒やされます。
今回は、煎茶堂東京でのお取り扱いに伴い、多田さんにお話を伺いしました。
多田さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、器を作ることになったきっかけを教えてください。
長い間、フランスを中心に現代アートの作家として活動をしていましたが、2011年に起こった東日本大震災をきっかけに、現代アートより一層身近なものを作りたくなり、陶芸を志しました。家族や親しい人々と共にする食卓に供されるうつわ。人と人をつなぐうつわに心惹かれました。
うつわを見た時に、そんな楽しい時間も一緒に思い起こさせるようなうつわを作りたいと思い、2015年に開窯(かいよう)しました。
作品を作る工程の中で、好きな工程と理由を教えてください。
すべての工程が好きです。出来上がりを想像しながら土を調合し、粘土をこねて、おおらかさを意識して形を作り、削りで余分な部分を削ぎ落とす。
水拭きをしてから素焼きをし、細かく釉薬を調合し、温度帯を気にしながらうつわの置く位置を調整し、祈りながら本焼をする。ドキドキしながら窯を開ける。
この、淡々としながらも気持ちが高まっていく流れ自体が好きなのです。
多田さんの器を手に取ると、ぷっくりとしたフォルムと柔らかな色合いに心なごみます。器を使う人にかける思いを聞かせてください。
ありがとうございます。まさに心なごんでいただきたいです。優しい気持ちになっていただけると嬉しいです。
お気に入りの器があるとお茶を淹れるのが楽しみになりますよね。どんな場面で器を使うのがおすすめですか?
お茶会の時や、おひとりでのお茶時間、お料理を盛るのにも、あらゆる場面でお使いいただければ。
また、片口は一合入るサイズ。茶杯はぐい呑みとしてもちょうどいいので、酒器として使っていただくことも考えて作っています。
今回取り扱う“淡雪”のシリーズは、雪景色のような釉薬使いが印象的です。制作時にイメージした姿はどのようなものだったのでしょうか。
雪が音もなく降りしきるイメージ。清浄で、静謐な景色を意識しています。
このシリーズは一点一点結晶の出方が異なります。結晶が多いもの、プレーンに近いもの、結晶が大きいもの、小さいもの、底に溶けてたまるもの、たまらないもの、土の鉄分がたくさん出たもの、あまり出ないもの…。
1つとして同じものはありません。そこは窯の神さまにゆだねているところが多く、どの表情も愛しく思っています。
作品を作るときのインプットはありますか?
毎日の料理で自分のうつわや、好きな作家のうつわを使って食べています。また、茶道を習って、より良いうつわ作りに活かしています。
器を作る上で一番大事なことは何だと思いますか?
使ってくださる方の幸せを思うこと。
今後挑戦してみたいことはありますか?
陶芸は日々新たな挑戦をしているので、陶芸とは関係ありませんが、犬ぞりで雪原を滑走したいです。また、ピラミッドを見てみたいです!