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作り手のことば「出来上がるものには答え合わせのように完成までのプロセスが現れてしまう」陶芸家・田中大輝さん

2024年02月02日

by 煎茶堂東京編集部

確かな技術が生み出す素朴で力強い器と、絵付けによる新しい表情が目に楽しい器。ともに京都市京北に工房を構えるタナカ製陶で生まれた作品で、その振り幅の広さこそが真骨頂です。

今回は、煎茶堂東京でのお取り扱いに伴い、代表の田中大輝(たなか・だいき)さんにお話を伺いしました。

田中さん、今日はよろしくお願いします。田中さんの作品を見ていると、新しい表現に対する探究心を人一倍感じますが、絵付けが施された器は田辺桂(たなべ・かつら)さんとのコラボレーションによるものですよね。どうして一緒に作品を作り始めたのですか?

始まりはお酒の席での軽いノリでした。大学を卒業して5年後、陶芸コースの同級生で集まったときに、老舗の窯元で絵付け師として働いていた田辺が「絵付けしたい!」と言い出して。その場にあった皿に慣れた筆捌きでサラサラッと一対の獅子を描き、みんなで盛り上がったことがありました。

田辺の普段の仕事では尾形乾山(おがた・けんざん)の写しのような絵を描いていて、細かい染付や今の作品のようなかわいい絵を描くことはありませんでした。私自身も無地の作品が多かったのですが、絵が入ると完成度が高くなり新鮮だと感じて、コラボでの作品作りを持ちかけました。

その後、共同で参加したイベントや展示が評判を呼び、少しずつ仕事にもつながるように。現在は、私は素地と焼き、桂は絵で、試行錯誤しながら意識を作品に向け、日々新しいことに挑戦しています。

作品を作る工程の中で、好きな工程と理由を教えてください。

作品が焼き上がった後の窯出しです。

陶芸は1300℃もの高温にさらされます。作品の焼成時には、自分の力ではどうにもならない領域に放り込むことになりますが、出来上がってくるものには、答え合わせのように完成までのプロセスが現れてしまうのです。

ときには思ってもない表情を見せたり、コントロールしきれない要素の大きい工程で、焼いてみないとどうなるかわからないところが好きな理由です。

今回取り扱う「粉引カップ」「絵付扇花紋カップ」は、用途は同じながら印象が全く違いますよね。粉引と絵付けの器、それぞれの魅力を教えてください。

粉引は15世紀ごろから朝鮮半島で多く作られていたものです。今の時代もオーソドックスな器ですが、それだけ何にでも合う汎用性の高いシンプルな良い品だと思います。

絵付のカップソーサーは、煎茶堂東京の神さんから見せてもらったフィンランドのヴィンテージのカップの写真を元に制作しました。余白を際立たせながら散りばめられた花紋様がバランスの取れた贅沢な逸品です。

以前、田中さんは他媒体で「アートは自己表現や素材から魅力を引き出すことで、デザインはお客さんの要望に合わせてものを作ったり提案すること」と発言されていました。今回取り扱う作品では、それらは具体的にどの部分に現れていますか?

今回の粉引のアイテムは使い続けると経年変化が生まれる器です。使う度にその価値を問いながら長く愛用して、アートのように楽しんでいただけたらと思います。

絵付けのカップソーサーは元々フィンランドのブランドが大量生産でこしらえたもので、先ほど話したように依頼があって今回制作しました。サイズや内容量にこだわり、図案もオリジナルとは少し変化を加え、私たちの作品らしく仕上げました。

器のルーツを大切にしながら、時代に沿う利便性や自分たちの色を加えているんですね。作品を作るときのインプットはありますか?

デザインや古い美術品の図録や図鑑をヒントに成形したり、図案を展開することがあります。

器を作る上で一番大事なことは何だと思いますか?

誠実さだと思います。

今後挑戦してみたいことはありますか?

未だ見たことがない、新しくて使いやすいものを作り出したいです。

田中大輝さんの作品

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