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作り手のことば「毎日使う器だから、作るときは”作業”ではなく心をこめる」白鷺木工・戸田勝利さん

2024年01月26日

by 煎茶堂東京編集部

石川県を代表する漆器の産地・山中で、木工所として開業し、3代にわたって器を作り続ける白鷺木工(しらさぎもっこう)。美しい木目と滑らかな曲線の器は、原木を熟知した長年の経験と、繊細な職人技の賜物です。

今回は、煎茶堂東京でのお取り扱いに伴い、代表の戸田勝利さんにお話を伺いしました。

戸田さん、今日はよろしくお願いします。早速ですが、器を作ることになったきっかけを教えてください。

100年ほど前に山中温泉では、木材を削り出す木地挽きの技術を習って職人になる人が福井県から多く訪れました。若かりし祖父が同じように習ったのが始まりで、3代目である私まで受け継がれて現在に至ります。

作品を作る工程の中で、好きな工程と理由を教えてください。

木地を挽くなかで一番重要なのが刃物を作ること。よく切れる刃物と、そうじゃない刃物では、木地の表面の滑らかさが全く違うんです。よく切れる刃物を自分で作り、それで木地が滑らかに仕上がっていくのを見るときには充実感があります。

逆に、苦手な工程や苦労されている作業はあるのでしょうか。

嫌い…ではないけど、まだまだだなと感じるのは原木の見極めです。今は2代目である父が原木の買い付けをメインにやっていますが、父の原木を見極める目はすごい。原木の切り口の色や年輪の間隔、木の皮のめくれ方など、細かいところを見て、よい木を買い付けていています。

ときどき私も行きますが見極めが難しく、判断に時間もかかってしまう。これは教わって分かる事ではなく、経験を積んで、勘や感覚を研ぎ澄ますしかないと思っています。

山中漆器を中心とする丸物木地がルーツである白鷺木工さんは、原木の木取りから加工や削り出し、仕上げまで一貫して行っています。その過程で大切にしていることは何ですか?

原木から仕上げ、挽きまで一貫するようになったこと、また自社製品を開発し、販売を始めたことで、これまで以上の注文を頂くようになりました。

製造数が増え、急かされるような事も多いですが、単なる作業にならないように手を動かす事は大切に思います。手仕事で作るものだから、機械的に数を作ればよいということではなく、忙しくても、ひとつひとつに心を込めることは続けていきたいです。

今回取り扱う「木のコップ」は、軽やかな使い心地と存在感が印象的です。表面を薄く仕上げるために、どのような技術が施されているのでしょうか。

山中漆器の特徴のひとつに薄挽きがあり、ろくろ研修で技術を学ぶ時に、みんな言われるのが「見ためより軽く」ということです。手に持った時に「軽い」と言われるのが山中漆器の特徴。「木のコップ」はそんな山中漆器の特徴を活かした商品です。

さらに、薄くしても丈夫なコップに仕上がっているのは、縦木と言われる木取方法で製造しているから。薄くても変形や割れに強いコップです。

作品を作るときのインプットはありますか?

自分でも毎日使うものなので、食事の時に、もっと使いやすく美しくならないか考えます。また、若い職人も多くのアイデアを出してくれます。

メーカーとしての仕事だけをしていた頃にはなかったことですが、最終的に使っていただくお客様から感想をもらう機会があることも大きいです。自分たちの作っているものが、実際に使われているという実感が、職人たちの刺激になっているのかなと。そしてそれはとてもよいことであると思っています。

器を作る上で一番大事なことを教えてください。

メーカーとして長年製造して分かったことは、毎日使う道具だから、デザインより使いやすさ。スタイリッシュで人気が出そうな器の注文があっても、使いやすい形の注文が圧倒的に多いんです。私たちの商品も奇をてらったデザインではなく、使いやすさを考慮しています。

また、毎日使うものだから、作り手の想いが手を通じて伝わると信じ、心を込めて作っています。量産できる工業品との違いは、そういった小さなことかもしれませんが、とても重要であると思っています。

白鷺木工の作品

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